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矢沢永吉 『Last Song』インタビュー
世界を認めさせた男が歌うLAST SONG
矢沢永吉が、三部作を完結させた。意味深なタイトルの最新作、洋楽との決別という62歳の現役感から、驚嘆の面々が参加する秋のスタジアムギグについてまで。至言名言満載のBillboard JAPAN初インタビューだ。「我、ロック人生、悔い無し」
“Last Song”の真相
--09年のアルバム『ROCK'N'ROLL』から、10年の『TWIST』、そして今作『Last Song』と、僕は勝手に三部作と捉えているのですが、やっぱり今作のタイトルには驚きました。
矢沢永吉:もう40周年ですからね。武道館だって117回、現役最多で走ってる。アルバムだってどれくらい出しただろうっていうくらい、いっぱい出しましたよ。早くから海の向こうへ行って、世界的な連中とも色んなことをやりました。その走りと言っても過言ではないくらい色々とやってきたでしょ? それにぼんぼんレコードを出せばいいってもんではない時代になってきた。それらが全部ひとつになってきた時に、けっこう良い意味で肩の力が抜けてきたんですよ。
それに元々、11番目のバラードに『LAST SONG』っていうタイトルがありましたからね。それでアルバムタイトルどうしようか? って思った時に、「これ最高じゃない! LAST SONG、やっちゃおう!」。そのくらい軽い感じでポンッとタイトルにしちゃいました。
--とはいえ意味深なタイトルではありますよね。
矢沢永吉:もうひとつは事実、「これが最後になるなら、最後になってもいいんじゃない?」ぐらいの気持ちが無かった訳でもない。スタジオワーク、疲れるし(笑)。本当に。
だってボクのやり方というのは『ROCK'N'ROLL』から既に始まっていたことですけど、作るのは1か月あるかないかで出来てるんです、アルバムの録りは。でも、後3か月くらいずっと聴いてるのね。聴いて直して聴いて直して、イジってイジってイジって……。聴くことに飽きるくらい聴いてる。そういうことをひっくるめて、白盤(サンプル盤)、いつ頃にもらいました?
--1か月前くらいですね。
矢沢永吉:1か月前と今は全然音が違いますよ。もっとストーンッとキます。今の最新のヤツを聴いたら、「こんなに直球でくるワケ?」って。もっと分かりやすい! もっと聴きやすい! もっとストーンッと曲に入れる。
「俺は音楽を、ステージを止めるか?」
矢沢永吉:それでさっきの話に戻りますけど、アルバム制作、たぶんボクは止めないだろうね。ボクは貪欲だから、また1年くらい時間が経ったら、「さーてそろそろ作ろうかなー」って思うんじゃないですか? ステージと一緒ですよ。武道館の最終日になったら、「もうやらねえぞライブは!」って言ってるんですよ。
ファイナルの時、アンコールが「ワーーーーーー!」と終わって「サンキュー!」、楽屋に帰ってシャワー浴びて、好きな酒グワァーーーーって、その夜はドライマティーニ呑んでベロンベロンになって、どうやってベッドに入ったのか覚えてない(笑)。
それで年が明けてからは、もう丸っきり音楽家じゃないからね。ただの呑んべぇのオッサンで1月が過ぎて、2月3月4月になってくると……、もうライブがしたいんだよ! そして、またシーズンがきてガーンとやっちゃう。それを繰り返して40年になるんです。
でもね! ひとつだけ違うのは、今までこんな気持ちにはならなかった……、『ROCK'N'ROLL』の後も『TWIST』の後も。こういう心境になったのは何故かと思ったら、……もう40年も経ち、「我、ロック人生、悔い無し」みたいな所もあるんじゃないですか?
--なるほど。
矢沢永吉:俺は音楽を、ステージを止めるか? 40年もやればそんな自問自答もするじゃないですか。でも、たぶん止めない。何故止めないか。ミック・ジャガーも含めた世界の連中たちが止めないように、止めないだろうね。……たぶんね、止めれない。
だって、ライブやってないとボクらって何処か不完全な所があるよね。ライブやってないとダメになっちゃいそうだもん。ステージをやるって目標ができれば、やっぱり身体を鍛えなきゃいけないし、自ずからボイストレーニングをやるし、食べるものも意識する。
ブルース・スプリングスティーンもまた大々的にツアーをやってるみたいだけど、成功はとっくの昔にしてるじゃない? だからそういうのではやってないよね。死ぬ訳にはいかないからやるんじゃない? ボクもこれくらいの歳になって、やっと「分かるよな~」って所にきてますね。そのうち「もう無理だ!」という時がくるんだろうけど、それまでは。その歳、その歳に合うようなスタイルを取り入れながら、やり続けるんだろうなって思いますね。
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