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EVIL LINE RECORDS主宰 兼 チーフ・プロデューサー 宮本純乃介「CHART insight」インタビュー

 ももいろクローバーZを活動初期から支え、その音楽面を担ってきたキングレコード・プロデューサー、宮本純乃介。 現在はドレスコーズやTeddyLoid等も所属する<EVIL LINE RECORDS>のチーフ・プロデューサーとして活躍する彼は、果たして現代の“ヒット”について、どのように考えているのだろうか。6月より開始したBollboard Japanの新サービス「CHART insight」を片手に、そのヒット観やプロデュースの実践について話を聞いた。

曲がちゃんと動いてる感覚が掴める

――早速ですが「CHART insight」はご覧いただけましたか?

宮本純乃介:(リンクを)送ってもらったものは見ました。面白いですよね。

――ありがとうございます。日本ではチャートを作り始めて5年ほどなのですが、アメリカでは1958年から「HOT100」を作っています。ビルボードには“複数の指標を合算しなければ「HOT」を冠することはできない”というルールがありまして、当時はシングルセールスとラジオの放送回数、あとジュークボックスの再生回数を合算してチャートを作っていました。

宮本純乃介:ジュークボックス!あれの再生回数ってちゃんと集計できるんですね!

――当時はグレーな部分もあったと思います。でも、真面目にそこから始めた。その後、レコードからCD、ラジオからスポティファイ、と時代の流れに合わせつつ。様々な指標を合算して今のUSチャートがあります。日本版のチャートを作るときも「それぐらいやっていく覚悟はあるのか?」と本国から言われました。

宮本純乃介:なるほど。

――日本では当初シングルセールスとラジオの合算から始めました。でも、それだけだと洋楽が上位に来過ぎて、かえって一般の傾向にはそぐわない、というところから色々と加えていった結果、現在は7種類(CDセールス、デジタルのセールス、ラジオの放送回数、ルックアップ=PCへのCDの取り込み回数、Tweet数、Youtubeの国内再生回数、ストリーミングの類推回数)のデータを合算してチャートを作っています。

宮本純乃介:いまって、アニメとかが(売り上げ)枚数としては多いけど、ラジオでは紹介されづらいから目立たない、みたいに、音楽のジャンルや属しているカルチャーによって取り上げられ方が全然違いますもんね。それを、それぞれの得意分野を合算して一つの指標にしたときに、何が一番話題になっていて、パワーを持っているのか、っていうのはやっぱり知りたいですもんね。

――「CHART insight」はそこから改めて指標別に見るなど、複合チャートの中身をより詳しく知って、分析やマーケティングに用いて頂くためのサービスです。ちなみに、2014年の年末にも今回のように色々な方にインタビューを行って、その際に弊社のチャートをヒャダインさんにも見て頂いたのですが…

宮本純乃介:お、ヒャダイン。

――ヒャダインさんが1番反応していた指標はルックアップでした。CDセールスそのものよりも10代のリスナーの動きをフォローしている気がしておもしろい、と仰ってましたね。チャートは一週ごとに発表するので、発売して2週目以降はCDセールスは落ち着くのですが、ユーザーは忘れているわけでは全然ない。ルックアップはそこが拾うことが出来て面白いですね。

宮本純乃介:確かに。ここに自分達が関わった曲が入ってると嬉しいですね。このランキングを見ていると、曲がちゃんと動いている感覚が掴めるなと思いました。

その人がアニメやその作品に対して持っている熱量みたいなものってリスナーには見えるんだと思います

――今回、宮本さんにぜひご覧頂きたかったものの一つが「HOTアニメーション」のチャートです。「HOT100」からアニメのタイアップ曲を抽出したチャートなのですが、率直に、このランキングってアニメの人気ランキングに見えますか?

宮本純乃介:難しいところですね。ポイントはとらえていると思うんですけど、アニメの作品自体のランキングにはなってないような気がします。

――やはり一般のJ-POPアーティストがランキングに入ってくるのが、アニメ・ファンには受け入れづらいという感じでしょうか?

宮本純乃介:そうですね。そこに拒否反応を示す人も居ると思います。

――宮本さんはアニメ作品やその音楽のプロデュースも多く手掛けられていますが、その際アニメ・ファンについては意識しますか?

宮本純乃介:意識しますね。やっぱりある意味特殊な文化だと思います。こういうことをやったら好まれる、好まれないというボーダーが、アイドルと近いようで全く違う位置にあるとも思いました。僕が、いまの<EVIL LINE RECORDS>を始める前、<スターチャイルド>でアニメ作品のプロデュースをしていた頃は、特に新しく何かを試す際には、そこの線引きを間違えないように注意していたつもりでしたが、なかなか難しいです。

――具体的に工夫されたことは何かありますか?

宮本純乃介:僕がアニメを担当し始めた当時、例えば主題歌で、作品とはあまり縁のないJ-POPアーティストをタイアップ起用するやり方か、出演している声優さんをキャラクターとして起用するやり方かのほぼ2通りしかありませんでした。世界観とズレがあると作品ファンからより反発を買いやすいのは前者だと思うんですけど、後者は後者で、結局キャラソンの延長になってしまうので、音楽制作的、宣伝的な面で限界を感じてしまって。そこで何か違う方法が取れないかと考えていました。

 僕が一番はじめに担当したアニメの『さよなら絶望先生』では、主題歌に大槻ケンヂを投入して、バックバンドを、今も<EVIL LINE RECORDS>に所属している特撮が担当しました。ただ、特撮をそのまま持ってきたらファンに拒否反応を示されるだろうと思って、“大槻ケンヂと絶望少女達”という名称で、アニメに出演している女性声優によって構成されたユニットとオーケンを組ませるというやり方を取りました。それが割とうまくいったので、同じように声優さんとアーティストという組み方を、神聖かまってちゃんの“の子”くんをはじめ何回かトライしました。

 ただ、そのやり方も、中心に据える人物に許される人と許されない人がいて(笑)。オーケンの場合は完全にキャラ勝ちしました。大槻ケンヂの影響を受けたアニメーターって結構沢山居るんです。そういった文脈が既にあったのも良かったんだと思います。あと、の子くんの場合、彼自身アニメが全般的に好きなんですよね。やっぱり、その人がアニメやその作品に対して持っている熱量みたいなものってリスナーには見えるんだと思います。

 主題歌を担当するのが誰であっても作品に対して真摯に向きあい、ちゃんと作品の世界観を理解した上で表現していれば、ちゃんと伝わるものだと思います。

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