Special
Billboard JAPAN × bmr連動企画 Ms. Lauryn Hill -Past & Present-
Billboard JAPANとbmrがタッグを組み、来日を直前に控えたアーティストたちの過去と現在を結ぶ新・連動企画。第二弾は、世代、シーンを超えて音楽界に衝撃を与え、絶大な人気を誇ったをMs.ローリン・ヒル。bmrウェブサイトでは、雑誌時代の『bmr』1998年8月号に掲載された岩間慎一氏による「ローリン・ヒル、ソウルを継ぐ者」を再掲載、そしてBillboard JAPANでは出田圭氏による「ローリン・ヒルの軌跡:デビューから今まで」を新たに掲載する。2015年最も注目集めているローリンの来日公演を前に、今一度彼女の軌跡を振り返ってみよう。
Ms. Lauryn Hill -Past & Presents- 「ローリン・ヒル、ソウルを継ぐ者」(『bmr』1998年8月号)>
<Billboard JAPAN×bmr連動企画第一弾>
COMMON -Past & Presents- 「コモンの歩み:シカゴから銀幕まで」 (Billboard JAPAN)>
COMMON -Past & Presents- 「コモン:リリシストとしての軌跡」 (『bmr』2007年9月号)>
Ms.ローリン・ヒルは復活したか?
▲『ニーナ・リビジテッド…ア・トリビュート・トゥ・ニーナ・シモン』
……もしも努めて辛口な態度をとったとしても、この問いに否定的な答えを返すのはむずかしいだろう。数年前から活発化した彼女のライヴ活動が昨今さらに勢いを増していることは、さまざまなwebメディアからも伝わってきている。つい先日には、久々のオフィシャル・レコーディングによる6曲が、ニーナ・シモンのトリビュート・アルバム『ニーナ・リビジテッド』で披露された(国内盤はソニーミュージックより9月16日リリース)。Ms.ローリン・ヒル自身のプロデュースで濃密に仕上げられたそれらの録音は、当初2曲の予定だったものが、制作中に彼女のモチベーションが上がってさらに4曲が追加されたというもの。フージーズ時代の名曲「レディ・オア・ノット/Ready Or Not」でもニーナの名をラップしていたローリンは、最終的にはアルバム『ニーナ・リビジテッド』のエグゼクティブ・プロデューサーも務めている。
ローリンは先日、アメリカNBCの人気TV番組『ザ・トゥナイト・ショー』に出演し、スタジオ・ライヴを披露した。その模様は一時期、彼女のサイトwww.lauryn-hill.comをはじめ、NBCほかさまざまなメディアのサイトにアップされていたから、ご覧になった方も多いだろうか。ストリングスを含む生バンドを従えて登場した彼女が歌った曲は「フィーリング・グッド/Feeling Good」。前記『ニーナ・リビジテッド』で歌ったニーナ・シモンの人気曲カヴァーをライヴでみせたわけだが、そのときのローリンの熱唱は凄かった。画面を揺らさんばかりにほとばしるエネルギーと濃密なフィーリングには、番組司会者のジミー・ファロンも大興奮。映像をアップした各サイトもこぞって絶賛したそのライヴ・パフォーマンスは、ローリンの復活を証明するものだった。1998年の『ザ・ミスエデュケーション・オブ・ローリン・ヒル』以来となるスタジオ新作アルバムの実現も、ここへきて急速に現実味を帯びてきた。
▲ローリン・ヒル『ザ・ミスエデュケーション・オブ・ローリン・ヒル』
全世界で1900万枚のセールスを記録した『ザ・ミスエデュケーション・オブ・ローリン・ヒル』は、1990年代の音楽シーンを代表するアルバムといってよい。「ドゥー・ワップ(ザット・シング)/Doo Wop (That Thing)」、「エックスファクター/Ex-Factor」、「ロスト・ワンズ/Lost Ones」、「エヴリシング・イズ・エヴリシング/Everything Is Everything」といった収録曲は、ヒップホップ、R&Bのどちらからみても、まぎれもないクラシックだし、ディアンジェロとデュエットした「ナッシング・イーヴン・マターズ/Nothing Even Matters」も忘れられない。アーティストとしてのローリン・ヒルは『ミスエデュケーション~』でその名を不動のものとした。同アルバムは、リリースから約17年後の今年2015年、”文化的・歴史的・美学的に意義深い作品”としてアメリカ議会図書館に登録されもしている。
公演情報
BBL 8th Anniversary Premium Stage
Ms.ローリン・ヒル
ビルボードライブ東京:2015年9月25日(金) & 27日(日)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2015年9月29日(火)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
MTV presents SOUL CAMP 2015
日程:2015年9月22日(火・祝)~9月23日(水・祝)
時間:12:00-OPEN / 13:00-START (20:00 END予定)
会場:
<LIVE AREA> TOYOSU PIT
<DJ & FOOD AREA> MAGIC BEACH
<BBQ AREA> LOVE KINGDOM
<FAMILY & KIDS AREA> MIFA Football Park
出演アーティスト:
2015年9月22日(火・祝日)
COMMON / BIZ MARKIE / TALIB KWELI /YASIIN BEY (MOS DEF) / DJ JAZZY JEFF and more
2015年9月23日(水・祝日)
Ms. LAURYN HILL / THE BEATNUTS / BLACK STAR / BIZ MARKIE and more
オフィシャルWEBサイト:http://soul-camp.jp
関連リンク
フージーズからソロ活動へ
ローリン・ヒルが世界の音楽ファンに広くその名を知らしめたのは、『ミスエデュケーション~』の約2年前。ヒップホップ・トリオ、フージーズ(Fugees)のメンバーとしてのことだった。1996年のセカンド・アルバム『ザ・スコア』から生まれた「フー・ジー・ラ/Fu-Gee-La」や「レディ・オア・ノット」といったヒット曲は即刻ヒップホップ・クラシックとなり、紅一点のローリン・ヒルの存在も大きくクローズアップされた。彼女が以前出演していた映画『天使にラヴソングを2』が再度注目されるといったこともあった。
『ザ・スコア』でとくに反響を呼んだのは、彼女がフロントに出た「やさしく歌って/Killing Me Softly」だろう。ロバータ・フラックで有名なその曲を、ヒップホップ・ビートにのせてクールかつエモーショナルに歌ったローリンは、新時代のラヴソング・シンガーとしても注目された。しかし彼女は、そうした狭いくくりに安住することはなかった。
『ザ・スコア』の翌年にローリンは、フージーズのワイクリフのソロ・アルバムに、同じくメンバーのプラズとともに参加したのち、自身のソロ作品にとりかかった。その作業はフージーズと距離をおいたものとなり、ワイクリフとプラズは参加していない。彼女は、ジェイムズ・ポイザー(ザ・ルーツなど)や、彼女自身ファンだったというカルロス・サンタナらの力を得て、初のソロ・アルバム『ミスエデュケーション~』を完成させた。そこには、フージーズのとき以上にすばらしい歌を聴かせるだけでなく、フージーズのとき以上に激しく熱く主張するソロMCの彼女がいた。
▲ローリン・ヒル
『MTV・アンプラグド 2.0』
リリース直後から絶賛を浴びるなか、『ミスエデュケーション~』のワールド・ツアーが日本を皮切りにスタートした。凝った仕掛けなどもある充実したコンサートで好評を博すいっぽう、ローリンにとっては初のソロ・ツアーであり、大きなプレッシャーを感じてもいたようだ。99年にツアーが終了するころには、不安定な精神状態になりかかっていたといわれる。ローハン・マーリー(あのボブ・マーリーの息子のひとり)という伴侶を得て、5人の子に恵まれつつも、彼女はむずかしい数年間を過ごすことになった。彼女のセカンド・ソロ作は、全編が自作の新曲からなるギター弾き語りでのスタジオ・ライヴ『MTV・アンプラグド 2.0』(2002年リリース)で、好曲を多く含む秀作だったが、そこに聴けた彼女のモノローグに複雑な心情がかいま見えたことも否定できなかった。
それでも、2004~05年にはいくつかのイベントでフージーズの再結成ライヴの機会があり、ローリンも元気な姿を見せた。その時期には8年ぶりとなるシングル“Take It Easy”もリリースされたのである。しかし、本格的な再結成が実現することはなかった。
公演情報
BBL 8th Anniversary Premium Stage
Ms.ローリン・ヒル
ビルボードライブ東京:2015年9月25日(金) & 27日(日)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2015年9月29日(火)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
MTV presents SOUL CAMP 2015
日程:2015年9月22日(火・祝)~9月23日(水・祝)
時間:12:00-OPEN / 13:00-START (20:00 END予定)
会場:
<LIVE AREA> TOYOSU PIT
<DJ & FOOD AREA> MAGIC BEACH
<BBQ AREA> LOVE KINGDOM
<FAMILY & KIDS AREA> MIFA Football Park
出演アーティスト:
2015年9月22日(火・祝日)
COMMON / BIZ MARKIE / TALIB KWELI /YASIIN BEY (MOS DEF) / DJ JAZZY JEFF and more
2015年9月23日(水・祝日)
Ms. LAURYN HILL / THE BEATNUTS / BLACK STAR / BIZ MARKIE and more
オフィシャルWEBサイト:http://soul-camp.jp
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本番モードに入ったMs.ローリン・ヒル
やがて散発的ながらツアーを再開したローリンは、徐々に調子を上げていき(2007年には来日やMs. Lauryn Hill名義の新曲リリースも)、ローハンとの別離を経た2010年前後にはさらに活動を本格化。アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパの音楽フェスにも複数参加を果たしていく。以前にも聴けた生バンドによる演奏はよりスケールアップし、「ドゥー・ワップ(ザット・シング)」、「ロスト・ワンズ」、「エヴリシング・イズ・エヴリシング」や、フージーズ時代の「フー・ジー・ラ」、「レディ・オア・ノット」、「やさしく歌って」といった定番を、レゲエやロックなども吸収した新たなアレンジで聴かせる彼女のライヴは、かつてなく刺激的なものになりつつあった。同じ曲でも、そのときどきによってアレンジを変えてもいるようだ。2012年にフィラデルフィアで見せたザ・ルーツらとのジョイント・ライヴでは、気鋭ギタリスト、エリック・ゲイルズもすでに参戦。ジミ・ヘンドリクスの後継者ともいえるだろう彼は、その後もしばしばローリンに帯同し、前記の『ニーナ・リビジテッド』や『トゥナイト・ショー』の演奏にも参加している。
近年の彼女のライヴは、イベントなどによっても異なるが、『ミスエデュケーション~』の曲、『MTV・アンプラグド 2.0』の曲、フージーズの曲、ボブ・マーリーのカヴァー……というように、コンセプト別にコーナー分けした構成を組むこともあるようだ。また、この2015年前半には『スモール・アックス』と名づけたアコースティック・ツアーも敢行し、『MTV・アンプラグド 2.0』だけでなく『ミスエデュケーション~』やフージーズ時代の曲もアコースティック・バンドで聴かせたという。
活動の場はライヴだけにとどまらない。彼女は散発的ながらwebに新曲をアップして話題を呼んできた。近年でいえば、2013年の「ニューロティック・ソサエティ/Neurotic Society」と「コンシューマーリズム/Consumerism」は、いずれも強いメッセージをもつラップ曲だ(後者は国税局の摘発による収監をのりこえて発表)。かたや、日本でも大きく報道されたミズーリ州ファーガソンの事件に関しては、プライベートなデモ録音「ブラック・レイジ/Black Rage」をアップして同地に捧げている。また、音楽以外でも、アフリカの人権運動を描いたスウェーデン制作のドキュメンタリーでナレーターを務めるなど、きわめて活発な彼女である。
数年来にわたるこうした活動ぶりが、冒頭で触れた作品『ニーナ・リビジテッド』で一気にモチベーションが上がり本番モードに入ったといえるのが、現在のMs.ローリン・ヒルなのではないか。このタイミングでの来日はおそらくベストということになるだろう。
これまでの多彩なチャレンジの成果を、Ms.ローリン・ヒルは今回のライヴでどう見せてくれるだろうか。ステージと客席が近い親密な空間だけに、あらゆる可能性が脳裏を駆け巡ってしまう。もしかすると、それらすべての集積のような、濃密な時間を創りだしてくれるかもしれない。いずれにしても、彼女は間違いなく、新鮮なサウンドと新鮮な驚きで会場を揺さぶってくれることだろう。
Text: 出田 圭
Ms. Lauryn Hill -Past & Presents- 「ローリン・ヒル、ソウルを継ぐ者」(『bmr』1998年8月号)>
公演情報
BBL 8th Anniversary Premium Stage
Ms.ローリン・ヒル
ビルボードライブ東京:2015年9月25日(金) & 27日(日)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2015年9月29日(火)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
MTV presents SOUL CAMP 2015
日程:2015年9月22日(火・祝)~9月23日(水・祝)
時間:12:00-OPEN / 13:00-START (20:00 END予定)
会場:
<LIVE AREA> TOYOSU PIT
<DJ & FOOD AREA> MAGIC BEACH
<BBQ AREA> LOVE KINGDOM
<FAMILY & KIDS AREA> MIFA Football Park
出演アーティスト:
2015年9月22日(火・祝日)
COMMON / BIZ MARKIE / TALIB KWELI /YASIIN BEY (MOS DEF) / DJ JAZZY JEFF and more
2015年9月23日(水・祝日)
Ms. LAURYN HILL / THE BEATNUTS / BLACK STAR / BIZ MARKIE and more
オフィシャルWEBサイト:http://soul-camp.jp
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ニーナ・リビジテッド…ア・トリビュート・トゥ・ニーナ・シモン
2015/09/16 RELEASE
SICP-4519 ¥ 2,640(税込)
Disc01
- 01.マイ・ママ・クッド・シング (イントロ)
- 02.フィーリング・グッド
- 03.アイヴ・ガット・ライフ (ヴァージョン)
- 04.行かないで
- 05.ボルチモア
- 06.ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー
- 07.マイ・ベイビー・ジャスト・ケアズ・フォー・ミー
- 08.悲しき願い
- 09.シナーマン
- 10.ウィ・アー・ヤング・ギフテッド・アンド・ブラック
- 11.アイ・プット・ア・スペル・オン・ユー
- 12.アイ・ウォント・ア・リトル・シュガー
- 13.ブラック・イズ・ザ・カラー・オブ・マイ・トゥルー・ラヴズ・ヘアー
- 14.ワイルド・イズ・ザ・ウィンド
- 15.アフリカン・メールマン (インストゥルメンタル)
- 16.自由になりたい
- 17.ミシシッピ・ガッダム <ボーナス・トラック>
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