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「音楽界の隅々から才能溢れるアーティストを招こうという試み」― アウル・シティー 最新インタビュー
米ミネソタ州出身のシンガーソングライター、アダム・ヤングによるソロ・プロジェクト=アウル・シティー。2009年に世界23か国のチャートで1位に輝き、1200万枚のセールスを記録した「ファイアーフライズ」で一躍大ブレイク。その後もカーリー・レイ・ジェプセンをフィーチャーした「グッド・タイム」などビッグ・ヒットを放ち、先日発表したSEKAI NO OWARIとのコラボ・トラック「TOKYO」も大きな話題となっている。そんなアウル・シティーの最新アルバム『モバイル・オーケストラ』は、アロー・ブラック、ジェイク・オーウェンやハンソンなど個性豊かなゲスト・ヴォーカルをフィーチャーした意欲作。先週末開催された【FUJI ROCK FESTIVAL '15】に出演するために来日する直前に、アダムが新作や自身が手掛けたオレオのCMソングなどについて話してくれた。
完成した作品には本当に満足してる
音楽界の隅々から才能溢れるアーティストを招こうという試みだった
??最新作『モバイル・オーケストラ』がリリースされて、どんな気持ちですか?
アウル・シティー:このアルバムは、これまでの作品に比べ、完成させるのに時間がかかったから、やっとリリースできてとてもいい気分。ヴォーカル・コラボレーションやヴォーカル・ゲストが今までで一番多くて、そうなると、参加ゲストの予定やツアーのスケジュールなんかをスタジオに入るための時間と調整するのが大がかりになってくる。だからその分時間がかかる。ビジネス面においてもね。アルバムを最初から最後まで完成させるのに1年から1年半かかったんだ。僕はソロ・アーティストで、気ままに1人でアルバムを作るから、通常は数か月しかからない。今振り返ってみても、リリースされてすごくエキサイトしてる。みんな素晴らしい仕事をしてくれたし、作品をとても誇りに思っているから。
??タイトルを『モバイル・オーケストラ』にしたのは?
アウル・シティー:自分のクリエイティヴな面をシャットダウンするのが難しい、ということからきてるしゃれみたいなものなんだ。僕はいつだって、何らかの詞やライムやメロディーを頭の中で作っていて、それが頭から離れることがないんだ。現代のテクノロジーが、恵みであり呪いでもあるのは、小さな箱=ノートパソコンに収まってしまい、どこでも作業できてしまうということ。多分、この後、飛行機の中でも作業するだろうね。おそらく飛行機に乗って、ヘッドフォンを付けて、無駄に何か作業するんじゃないかな。バスや電車の中でも同じ。パソコンの前に座れば、たった一人の人間でも80人ほどのシンフォニー・オーケストラと同じようなサウンドを作れてしまう。心を動かされるような壮大なパートから小さなベルや笛の音まで。僕がやっていることをカッコよく表現してる言葉だね。
??アルバムに参加した様々な年代やジャンルのアーティストは、あなたが創り上げようとしていた作品にどのように貢献してくれましたか?
アウル・シティー:完成した作品には本当に満足してる。音楽界の隅々から才能溢れるアーティストを招こうという試みだった。僕のヴィジョンとしては、彼らを招いて、「方向性を与えることはしたくない。いつも通りに、自分らしくやってほしい。」と言うだけ。そうすることで、あらゆるジャンルに通ずる作品になる。そして、願わくは多様性のあるものに仕上がればと思った。アロー・ブラックと仕事をするのは快感だった。それにカントリー界のジェイク・オーウェンとの曲は、僕にとって本当に素晴らしい経験になった。イギリス人の女性ヴォーカリストで、EDM界で活躍しているサラ・ラッセルも参加している。ジャンルにおいては多彩だ。今作のことは、とても誇りに思ってる。
??ジェイク・オーウェンとのカントリー・ソング「Back Home」は、何にインスパイアされた曲ですか?
アウル・シティー:みんなが、僕についてあまり知らないことだと思うけど、僕はカントリー・ミュージックの大ファンで、よく聴いているんだ。これまで僕の音楽からカントリー・ミュージックへの愛を感じることはなかったと思う。もしかしたら示唆したことはあるかもしれないけど、この「Back Home」という曲まで本格的に取り組んだことはなかった。カントリー・ミュージック好きということもあって、長年ジェイクの大ファンだった。僕にとって彼はレジェンドで、才能に溢れている。僕の知る中で、彼以上の人はいない。「Back Home」をなんとなく書いていた時、ジェイクが作る音楽や彼の雰囲気に無意識の内に影響されていたんじゃないかな。曲作りのプロセス終盤で、突如ベッドから起き上がって、このデモをジェイクに送ってみたらどうだろう、ってひらめいた。とくに失うものは無いと思って。もしかしたらやってくれるかもしれないし、って。そしたら実現したんだ。彼は本当に寛大で、親切にも時間をとってくれて、僕の曲を数倍優れたものにしてくれた。
??ずっとカントリー・ソングを作ってみたかったのですか?それともこのアルバムの制作する際に、実験してみたいと思ったのですか?
アウル・シティー:思いがけない出来事という感じだね。でも、いずれは起こることだったんじゃないか、っていうことに気づいた。もっと昔にやれば良かったよ。ラップ・スティールやスライド・ギターだったり王道のカントリー・サウンドで実験することを。これまでとは違うカントリー・ミュージックのフィルターを通してアコースティック・ギターを見ることが可能になって、ホントもっと前にやってればって思ったよ。今回実験できて最高だったし、今後もっとやっていきたいと思っているよ。
??いくつかのアルバム・レビューには、90年代のノスタルジアを感じると書いてありましたが、これらの批評には同感ですか?
アウル・シティー:うん。それは僕がこのアルバムの中に組み込みたかった影響の一つだから。特にハンソンとの「Unbelievable」という曲で。彼らとは同世代で、子供の頃の思い出で、当時スゴイと思ったテクノロジーとか流行ってたものとか、共感できる部分が多いんだ。物によって、今はもう無いものとかもあって。だから、「こんなのがあったの忘れてたよ。君たちはこれとか、これって覚えてる?」って具合にすごく盛り上がった。曲にノスタルジアを注入する様々な方法を見い出しながら。だからあの曲ではちょっと昔を懐かしんでる感じだね。
??あなたの曲がオレオのCMに起用されたきっかけは?
アウル・シティー:あのプロジェクトはすごく楽しかったね。それまで、CMとかTVや映画音楽はあまりやったことがなかった。アルバムを作るのとは、また少し違うからね。あのコラボは急に決まったんだ。オレオは、CMのために「Wonder Filled」という曲のアイディアを思いついた他のソングライターとデモを作っていて、そのソングライターは僕のことが頭にあったみたいで、繋いでくれたんだ。オレオには、「こういう雰囲気で、これらのテーマに合うものを求めてるけど、後は自由にやっていいよ。スタジオに入って、リラックスして、どうなるかやってみて。」言われた。そして言われたとおりに進めたら、すっごく楽しかった。CMの世界で仕事をするのは初めてだったけど、とても気に入ったよ。
??あなたには熱心なファンベースがいますが、逆にネガティヴな批評にはどのように対応しますか?
アウル・シティー:コツがあるのは確かだよ。自分が何をしようと、たとえそれが誰のためであれ、それを好く人もいれば嫌う人もいる、そして何とも思わない人もいる。昔「何かをリリースした時に、それを5%の人々は気に入り、5%は嫌い、残りの90%は聴いてみて、そのまま次に進む。」っていう統計を見たけど、やっぱりコツは良いことであれ、悪いことであれ、あまり気にしないこと。ネット上でレビューを読むことに関しても、健全なアプローチを見い出すことができたと思ってる。多少は読むけど、すごく気になりはじめて、考えすぎてしまうようになったら、少し距離を置いて、自分がやるべきことは出来る限りベストを尽くし、誠実で正直になり、正しい事をするということ。人が色々言うのは仕方がないこと、自分はそれを乗り越えていくのみだよ。
Q&A by Paley Martin / 2015年7月22日 Billboard.com掲載
"Tokyo ft. SEKAI NO OWARI" (Official Visualizer)
リリース情報
関連リンク
モバイル・オーケストラ
2015/07/10 RELEASE
UICU-1263 ¥ 2,420(税込)
Disc01
- 01.モバイル・オーケストラ (日本盤ボーナス・トラック)
- 02.ヴァージ feat.アロー・ブラック
- 03.アップ・オール・ナイト (日本盤ボーナス・トラック)
- 04.トーキョー feat.SEKAI NO OWARI (日本盤ボーナス・トラック)
- 05.アイ・ファウンド・ラヴ
- 06.アンビリーバブル feat.ハンソン
- 07.マイ・エヴリシング
- 08.バック・ホーム feat.ジェイク・オーウェン
- 09.バード・ウィズ・ア・ブロークン・ウィング
- 10.サンダーストラック feat.サラ・ラッセル
- 11.ディス・イズント・ジ・エンド
- 12.ユーアー・ノット・アローン feat.ブリット・ニコル
- 13.キャント・リヴ・ウィズアウト・ユー
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