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楽園おんがく Vol.22: 「うないぐみ(古謝美佐子)」 インタビュー
旅と音楽をこよなく愛する、沖縄在住ライター 栗本 斉による連載企画。第22回は、初代ネーネーズのメンバーを中心に結成された「うないぐみ」のメンバー、古謝美佐子のインタビューをお届け!
古くから沖縄音楽を聴いているファンにとって、ネーネーズは特別な存在だろう。1990年に結成され、「黄金の花」のヒットで知られるこの女性ヴォーカル・グループは、民謡を歌うだけでなく、ボブ・マーリーのカヴァーやライ・クーダーなどとの共演によって幅広いファン層を得た。
その初代ネーネーズのメンバーを中心に、新たに結成されたのが「うないぐみ」だ。メンバーは、古謝美佐子、宮里奈美子、比屋根幸乃というネーネーズ組に島袋恵美子が加わった4人。2014年から正式に活動を開始し、ついに初のアルバム『うない島』を発表した。プロデュースは、初期ネーネーズのサウンド面を支えただけでなく、古謝の公私に渡るパートナーでもある佐原一哉。オリジナルから民謡までをストリングスを多用したソフトなサウンドに乗せ、4人の唄者の個性を見事にブレンドした作品に仕上がっている。いうまでもなく、ネーネーズの進化形という印象を持ってしまう嬉しい快作だ。
そんな「うないぐみ」の誕生から新作について、古謝美佐子に話を伺った。ソロでも「童神」などの代表曲を持ち、数々のミュージシャンからリスペクトされている彼女が、なぜ今新たなグループをスタートさせたのか。その秘密に迫ってみた。
「とことん付いてくるという覚悟がないとやれないよ」
「半端なやりかたはしたくない」
??そもそも、初代ネーネーズの3人を中心に「うないぐみ」を結成しようと思ったのはどうしてですか。
古謝美佐子:ネーネーズが終わった後も、実は3人で一緒にやってたんですよ。奈美ちゃん(宮里奈美子)と幸乃(比屋根幸乃)と「さんさら」っていうグループ名で。だけどCDを出すまでにはいたらなくて。そのうち、彼女たちが独り立ちしたいってことになって解散したんです。でも、2年ほど前に、また一緒にやりたいって言い出したもんだから。私もあと10年も20年も歌えるかわからないから、「とことん付いてくるという覚悟がないとやれないよ」って言ったわけ。「半端なやりかたはしたくない」って。
??お二人の反応はどうだったんですか。
古謝美佐子:それでも「また一緒にやりたい」って言ってくれたから、佐原(一哉)とも相談して「やろう!」って話になったんです、恵美ちゃん(島袋恵美子)は奈美ちゃんと兄弟弟子なんですよ。そういうつながりもあったし、若い頃から仲良くしていたから。あと、ネーネーズを辞めてから、この4人でツアーを回ったこともあるんです。だからそのときのメンバーが復活したというかね。
??3人よりも4人が必要だったってことですか。
古謝美佐子:4人ということには、とくにこだわってないんです。やっぱり一緒にやってた仲間と、また声をかけて楽しく年を重ねていきたいって思っただけで。
??「うないぐみ」というグループ名は、結成した2012年からですか。
古謝美佐子:いや、去年です。CDを作るにあたって決めました。
??それまではどういう名前だったんですか。
古謝美佐子:「ゐなぐどぅし(女友)」という名前で呼んでいたんですけど、本土の方では発音が難しいっていうので替えました。「うない」は姉妹という意味。私たちは本当に血のつながった姉妹ではないけれど、歌の中では姉妹っていうのもいいかなと。「くみ」は、「組む」という意味でもあるけれど、沖縄では思いを込めるのに「くむ」という言葉を使うんです。だから、歌の中の姉妹たちが沖縄の心を込めて、たくさんの人に歌を発信したいという気持ちもあって、「うないぐみ」にしました。
??古謝さんはソロで実績もあるのに、あえてグループを結成したんですよね。
古謝美佐子:そうですね。やっぱり楽しいし、刺激もあるからね、ネーネーズをやる前っていうのは、坂本龍一さんとも長いこと一緒にツアーを回っていたし、ネーネーズの頃に佐原と巡り会って、「自分たちの沖縄の歌がこんなにもアレンジで変わるのか」って思いました。
??「うないぐみ」になって大きく違うことはなんですか。
古謝美佐子:やっぱり声が違いますよね。声質もそうだけど、いろんなところで場数を踏んできた経験も表れているんです。年を重ねて、いろんな人たちと出会って、いろんなことをやってきたなかで出来上がったものだと思うんですよ、「うないぐみ」っていうのは。私もメンバーも孫が何人か出来たし、世界観が変わっていくから自分の歌も大きく変わっていく。そういうことを大切にしながら、歌を届けているんです。
??実際、4人でやり始めたら新鮮でしたか。
古謝美佐子:新鮮ですね。楽しいです。あとはとても楽ですよ(笑)。ソロだと調子が悪いときは大変だけど、他の3人がフォローするから助け合いもできますし。それと4人でステージに立つから稽古もする。ひとりだとしないからね(笑)。毎月2回は稽古をしようと決めたんです。「歌って」って言われたら、いつでも歌えるようにしておいたほうがいいかなと思って。
??レパートリーはどのくらいあるんですか。
古謝美佐子:数えたことはないけれど、昔から歌っている民謡を合わせるとたくさんありますよ。オリジナルはレコーディングする前に必ず人前で歌うんです。歌い込んでもいないのにレコーディングはしたくないから。だからお客さんから「この曲はCDに入ってないんですか」なんていわれることも多くて(笑)。今って、ひとつアルバムを作ったらすぐ次っていうことが多いじゃないですか。私はネーネーズを辞めてから、ソロ・アルバムはまだ2枚しか出してないんですよ。やっぱり、ネーネーズの時に毎年のように出してたもんだから、常に追われていたんですよ。それらを消化しないうちに次の曲、次の曲ってなってたから。やっぱり一枚のアルバムを大切にライヴで歌ってから、次に行こうという気持ちが大きいですね。
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Interviewer: 栗本 斉
沖縄の音楽っていうのは、
とても素晴らしいんだなあってことが、
外に出て初めてわかった
??じゃあ、今回のアルバム『うない島』のコンセプトは、じっくりと聴いてもらえるということでしょうか。
古謝美佐子:まさにそうですね。
??選曲の基準はあったんですか。
古謝美佐子:自分たちが歌いたい歌や、昔から歌っていたものをまたもう一度ちゃんと形として世に出すというか。ひとりで歌っていたものを4人でやったりとかね。新曲はだいたい佐原が作るんですけど、私が詞を思いついたら書いたりして。
??アルバムの制作期間はどれくらいだったんですか。
古謝美佐子:2013年の11月にレコーディングを始めて何度か中断したりしましたけど、5月には録り終わっていましたかね。一通りレコーディングを終えたんですけど、「もう一曲あったほうがいい」って佐原が言い出して。以前、五木寛之先生が「二見情話」にインスパイアされて書かれた歌詞を佐原がもらっていたので、曲をつけたんです。それで、五木先生に相談して「島に吹く風~二見情歌~」というタイトルにしてレコーディングしました。それが去年の5月くらいですね。去年の12月に4都市のツアーをすることが決まってたんで、急ぎ急ぎで(笑)。
??曲ずつコメントや思い入れをお聞きしたいのですが、まずは「女友(ゐなぐどぅし)」。これはテーマ曲みたいなものですよね。
古謝美佐子:そうですね。これは、12,3年くらい前に4人で一緒にやってた頃から歌っていたんです。落胆したりとか死にたいとか思うことがあっても、お互いに助け合って歌で生きていこうよ、っていう意味で作りました。
??「島ぬ言ぬ葉」も古い歌なんですか。
古謝美佐子:そうですね、3人で「さんさら」をやってた頃に作った歌です。だからかなり歌い込んではいますけど、レコーディングは初めて。30代の頃に坂本龍一さんと海外ツアーに行ったんですけど、まわりのミュージシャンは外国人なんですよ。それで、みんな「オキナワ・ミュージックはビューティフルだ」なんて言ってくれる。で、あるライターの方から「古謝さんたちはとてもすごいですよ。手拍子だけでも歌が歌えるから、その力は大きいですよ」って言われたんですよ。たしかにそうだなあと思って。自分が小さいときから歌ってきたこの沖縄の音楽っていうのは、とても素晴らしいんだなあってことが、外に出て初めてわかったんですよ。この曲は、そんな県外に行って歌っているっていう目線です。
??たしかに沖縄らしさがでていますね。
古謝美佐子:最初は3番までしかなかったんですけど、恵美ちゃんのパートの歌詞を今回のためにひとつ増やしました。
??次の「ウナイ島」は4人で歌いまわすのが特徴ですが、グループの中で役割分担はあるんですか。
古謝美佐子:とくに決まり事はないんですけどね。ネーネーズのときは「ハーモニーがすごいですね」って言われていたんです。別にそんなにハモってはいないんですけど。私以外の3人の声が若くて似ていたから、ひとつになってハーモニーに聞こえたのかもしれない。だけど「うないぐみ」は、ひとりひとりの声が聴き取れるんですよ。年を重ねた味わいというのが全部出ている。この曲はそんなひとりひとりの個性を出していますね。でもこの曲も3番までしかなかったので、恵美ちゃんのパートを急遽作ったんです(笑)。
??それで、“うないぐみバージョン”なんですね。これはいつ頃の曲なんですか。
古謝美佐子:これはりーみ(夏川りみ)にプレゼントした曲なんです。彼女とツアーを回っているときのアンコール曲。この歌が出来たのは、大阪にあるりーみの親戚の中華料理店にご飯を食べに行って、彼女の姿を見ていたら言葉が出てきたんですよ。で、割り箸の袋を裂いて書いて「りーみ、あげる」っていって出来た歌なんです。
??ほんとにインスピレーションなんですね。
古謝美佐子:そうそう。りーみが親戚のところで喜んでいる顔を見てたらね。“島よ”とか“海よ”という歌詞が入っているんだけど、これも離れたところから見た沖縄のイメージです。
??古謝さんはやっぱりそういう視点にならざるを得ないんでしょうね。次の「昨日今日明日」は、ショーロ・クラブの笹子重治さんと秋岡欧さんが参加されていますね。少し変わった雰囲気の曲です。
古謝美佐子:ふわふわとした感じの曲ですね。これも「さんさら」のときに出来た歌。作詞の上原直彦さんは“歩く百科事典”といわれるほどの民謡の大家の人。素晴らしい作詞家で、私が小さい頃から活躍されている大先生。方言とヤマトグチと混ざって、さらっと聴けるかなっていう感じがします。
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Interviewer: 栗本 斉
自分のアルバムってほとんど聴かないんですど、
この『うない島』はよく聴きますね
??5曲目は民謡の「南洋浜千鳥節」。
古謝美佐子:これは、みんなよく歌ってるんですよ。ノンマイクで歌ったりとか。そういうのも入れた方がいいかなと思ってね。ずっと自分たちが歌っていて、いつでもすぐ歌える曲を入れてみました。
??ネーネーズ時代から歌ってたんですか。
古謝美佐子:よく歌っていましたね。
??ちょっとアレンジが変わっていて面白いですね。でも、「うないぐみ」ならではの民謡という感じがします。次はさっき話に出た「島に吹く風~二見情歌~」ですが、ラジオ仕立てになっていて、ユニークな作りですね。こういったラジオで民謡を聴いていた想い出はありますか。
古謝美佐子:母の話を聞いただけなんですけど、昔の沖縄には「親子ラジオ」っていうのがあって、散髪屋さんとかそういうところでラジオが流れていたんです。そういのから民謡が流れてくると、急いでそこに行って踊ってたらしいんですよ。民謡があったら踊らないと気が済まなかったみたい。記憶にはないんですけど、たぶん2歳くらいじゃないかな。
??7曲目は戦争をテーマにした民謡「南洋数え唄」ですが、これも4人で交互に歌っていますね。
古謝美佐子:ひとりで歌うと大変なのでね、長い歌だから(笑)。それこそ4人だから歌えるし、良さが出ますね。
??これも昔から歌ってるんですか。
古謝美佐子:歌ってましたね。でも、ソロでアルバムに入れるっていうことはまずないですね。だけど、4人で歌えるし、彼女たちも歌い込んでいて大切にしたいっていう歌だから入れました。とても長いんだけど(笑)。
??こういうのを聴くと「うないぐみ」の醍醐味という感じがします。みんなで歌う迫力もいいんですけど、声の切り替わりがゾクッとときたりして気持ちいいですね。続く「1945の春」も重い曲ですね。
古謝美佐子:「南洋数え唄」とはまた違うパターンのもので、直接戦争のことを歌ってないんです。アメリカ軍が海から来て上陸したっていうのを風や波にたとえてる。そういう優しい表現でありながら、心にグサッとくるっていう歌ですね。戦争に対して拳を上げて反対するのではなくて、その前にもっと考えるべきものがあるんじゃないかって。女として年を重ねて、孫のことを考えたりしながら、優しくたくさんの人に広く届けられたらなあって思います。だからあえてウチナーグチにはせず、わかりやすい言葉で幼ない子どもにも届くような形で、「戦争というのは怖いもんだよ、命は尊いんだよ」という唄になってるんじゃないかなと思います。
??今聴くべき歌という気がします。
古謝美佐子:まさにそうですね。
??9曲目はがらっと変わってにぎやかな雰囲気の民謡「新港節」です。
古謝美佐子:ずっと重い歌が続いているので、アップテンポのものを入れて巻き返す感じで。この曲もまた普段から歌っているんで、それで決めたんですよ。
??アップテンポの唄もレパートリーにたくさんあるんですか。ネーネーズ時代から、しっとりしたイメージがありますが。
古謝美佐子:どちらかというと、しっとりの方が多いんですけどね。ちょっと変化を付けてみました。
??こういうのも楽しいですね。続いては「恋ぬ花咲かしぶさ」。
古謝美佐子:これは奈美ちゃんのソロですね。これも「さんさら」の頃に彼女にプレゼントした歌なんですよ。その次の「島ぬ姿」は幸乃のソロ。これも東京の銀座のよく行く沖縄料理店で一緒に食事をしたときに、ふと思いついて歌詞を紙に書いて渡しました。今回のアルバムで、ソロはまずは奈美ちゃんと幸乃。彼女たちを前に出した曲をたくさんの人に聴いて欲しいと思ったんです。次のアルバムを出すときは、恵美ちゃんと私のソロを入れるんじゃないかな。
??12曲目は民謡の「サイヨー節」。これはアルバムの終盤を飾るにはいい感じですね。
古謝美佐子:これもひとりで歌うより、4人で歌った方が楽しいし、歌い甲斐があるんです。時々自分もソロで歌っていた曲ですね。民謡を何曲か入れるためにピックアップした中の一曲です。
??そして「女友」をもう一度歌って終わります。
古謝美佐子:アカペラで何気なく歌ってみました。
??アカペラはステージでもよくやるんですか。
古謝美佐子:あんまりはないですけど、野外でライヴをやるときは「今日はちょっとアカペラでやろうかなあ」ってときはあります。
??このアルバムは、長い経験を積まれた4人とはいえ、デビュー作ですよね。長年の4人が蓄積したものが寄り集まったという感じですか。
古謝美佐子:そうですね、それが一番大きいかな。自分のアルバムってほとんど聴かないんですど、この『うない島』はよく聴きますね。
??その違いはなんでしょうか。
古謝美佐子:なんでしょうね。それが不思議なんですよ。それまでは歌詞を覚えるために聴くことはあったけど、今回のはもう全部覚えているから聴かなくてもいいわけですよ。それでも聴いてしまいますね。
??それはやっぱり気持ちいいからですか。
古謝美佐子:彼女たちの成長ぶりが、このCDから聞こえてくるんですよね。ひとりひとりのソロのパートを聴いていると、頭の中に想い出が浮かんでくるので、そういう楽しみ方なのかもしれない。
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Interviewer: 栗本 斉
私が死んでも、私の孫たちが
「おばあちゃんの歌だよ」と聴けるんだなあと思うと、
歌をやってきてよかったなと思います
??ネーネーズからのファンも、このアルバムの出来栄えには納得するでしょうね。
古謝美佐子:初代ネーネーズのファンって根強いんですよ。ライヴも初代から見てますっていう人も多くてね。だから「うないぐみ」でアルバムを出すっていうととっても喜んでくれる。この間、福岡の女性の方からメールが来たんです。連絡が途絶えていた弟がいて、「そういえば彼はネーネーズが大好きだったなあ」と思って、彼の分もこのCDを買って送ったそうなんです。そしたらすごく喜んでくれたらしく、彼の方からお姉さんに電話がかかってきて「ありがとう」って。「今度ライヴがあるときは一緒に行こう」って。そういう話もありました。
??すごくいい話ですね。
古謝美佐子:嬉しいです。それくらい根強いファンがいてくれるんです。
??古謝さんご自身の活動歴の中でも、このアルバムは大切な存在ですよね。
古謝美佐子:9歳からレコードを出しているけど、その後も10代、20代、30代、40代、50代って節目節目の声が全部録音されているんですよ。私が死んでも、私の孫たちが「おばあちゃんの歌だよ」と聴けるんだなあと思うと、歌をやってきてよかったなと思います。民謡の世界とは関係のないポップな若い子たちが私の曲をカヴァーしてくれたり、ラップをやってる人に声をかけれらて参加したり、かと思えば文楽人形の人と一緒にやったり。ジャンルを超えて歌ってこれらたというのは幸せですね。
??本当に素晴らしいことだと思います。そんなにも長い間歌い続けているということは。
古謝美佐子:好きこそものの上手なれという言葉があるけど、自分のことだね(笑)。よっぽど好きなんでしょうね。歌うことは全然飽きないんですよ。
??「うないぐみ」としての目標はありますか。新作も含めて。
古謝美佐子:新作はまだ考えてないです。『うない島』をじっくり歌いこんでからですね。そんな中で新しい曲が生まれたとしても、それもじっくり歌い込まないといけないからね。あんまり気長に出来ない年ではあるけど(笑)。あと、「うないぐみ」を始めたからには、他の3人も私が引っ張っていかないと、と思っています。身体が元気でいることが大切なので。健康のための食べ物のことなんかも教えているんですよ。
??自然食品とかそういうことですか。
古謝美佐子:そうです。添加物が嫌いなんですよ。だから髪も染めないんです。あと、私は10年単位で考えてきたんですよ。40代になったら50代に向けて、50代になったら60代に向けての身体の作り方をやってきたから、今の自分がある。今は60代になったから、70代に向けての身体作りをやっている。
??なんだか、先生みたいですね。
古謝美佐子:だから私はそういうことも含めて、彼女たちに付いてきてもらっているんですよ。じゃないといい音楽は作れない。自分の音楽だから、いい細胞を作らないと、出て行くオーラもよくならない。歌っていると、トンビが来るんですよ。
??えっ?何の話ですか。
古謝美佐子:トンビが来るんですよ。動物に反応するんです。鈴木松美先生っていう音声の専門家が、私の声を調べたんですよ。私の声には 超高周波のとても高い部分が他の人より多くあるらしくて。周波数が高くて、そのなかにゆらぎが出るわけ。普通、ゆらぎは、歌い始めやサビ等にしかないことが多いんですけど、私の声にはゆらぎがずっと出ているらしいんです。人間の耳では聞こえないけど脳で反応する音声が。だから動物が近寄ってくるんでしょうかね。神奈川県の海辺で「海さくらコンサート」というイベントがあって、これまでに3回出たんですけど3回ともトンビが来たんです。「童神」を歌っているとトンビが来て、歌が終わったら帰っていったんですよ。そういうこともありました。
??面白い話ですね。
古謝美佐子:30代初めの頃から、寝たきりの方がいる施設に行って歌っているんですけど、そこでこう言うんです。「私がこうやって歌っているのは、あなたたちからエネルギーを吸い取っているからだよ。たくさん吸い取られているから、またエネルギーを蓄えておいてね」って。でも本当にそうなんですよ。こういうことを重ねてきた結果が、高周波に表れているのかなって。
??たしかに、コンサートもエネルギーの交換がありますからね。
古謝美佐子:だから、「歌ってあげているんではなく、みなさんからエネルギーをもらうんですよ」ってことを口に出して言ってますね。それは一番大切なことだと思うから。CDも売れない時代になっているけど、ただ商売ではやりたくないなって。つながりを大切にしたいし、だから続いているんじゃないかなって思います。
??最後にひとつだけ。“楽園おんがく”と聞いて何を思い浮かべますか。
古謝美佐子:やっぱりハワイアンとかレゲエですかね。
??そういうのって普段聴きますか。
古謝美佐子:うーん、普段聴くのはビヨンセですね。
??えっ?ビヨンセですか。
古謝美佐子:歌がうまいですよ、あの人。踊りもすごいし。デスティニーズ・チャイルドも好きです。あと、アッシャーなんかも。ヒップホップも聴きますよ。ブラックミュージックは好きですね。ティナ・ターナーや、ホイットニー・ヒューストンなんかも。基地の横で生活しているから、洋楽は自然に入ってくるのかもしれない。
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うない島
- うないぐみ
- 2015/01/03 RELEASE
- DM-11
- [定価:¥3,240(tax in.)]
- 詳細・購入はこちらから>>
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ライター
Writer:栗本 斉 Hitoshi Kurimoto
旅と音楽をこよなく愛する旅人/旅&音楽ライター/選曲家。
2005年1月から2007年1月まで、知られざる音楽を求めて中南米へ。2年間で訪れた国は、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、トリニダード・トバゴ、パナマ、メキシコ、キューバの、合計14カ国。
帰国後は旅と音楽にこだわり、ラジオや機内放送の企画構成選曲、音楽&旅ライター、コンピレーションCD企画、ライナーノーツ執筆、講演やトークイベント、ビルボードライブのブッキング・コーディネーターなどで活動中。得意分野はアルゼンチン、ワールドミュージック、和モノ、中南米ラテン旅、世界遺産など。2013年2月より沖縄県糸満市在住。
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