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BOOM BOOM SATELLITES『EASY ACTION』インタビュー
BOOM BOOM SATELLITES、hotexpress約1年ぶり、2度目の登場。今回は、ニューシングル『EASY ACTION』の話はもちろん、初めてお話を伺う中野雅之にそのミュージックライフの歴史とこれからのBOOM BOOM SATELLITESに向けてのモチベーションについて、そして川島道行にBOOM BOOM SATELLITESのライブの在り方やビジョンについて、それぞれ語って頂きました。
自分たちはラッキーだった
--中野さんにこうしてインタビューをさせていただくのは初めてなので、新曲『EASY ACTION』の話を伺う前に中野さんのミュージックヒストリーについてお話を聞かせてください。まず中野さんが音楽に目覚めたキッカケって何だったんでしょう?
中野雅之:家の中で音楽はずっと鳴っていたので、物心付いた頃には、音楽は普通によく聴くモノとしてあって。父親がレコードコレクターというのもあって、特に音楽教育を受けたわけじゃないけど、自分で積極的に音楽を手に入れるっていうのは、小学生ぐらいからやってました。それで、楽器を手にして何か作るようになったのは、12,3才ぐらいで。僕が普通の子たちとちょっと違ったのは、エレクトロミュージックをそこで始めたところで。大体みんなギターを買って、ロックをやろうとするんだけど、当時はリアルにカッコイイバンドがパッと浮かぶような時期ではなかったし、ロックを掘り下げてやってる奴もいなかったから、エレクトロミュージックの方がエッジなモノだったと思うんですよね。で、YMOとかO.M.D.とかヒューマン・リーグとか、そういう初期のエレクトロポップと言われるモノとか、クラフトワークみたいなクラシックなテクノとか、そういうモノを多重録音でもやったしバンドでもやりました。 その後にパンクバンドもやったし、今考えればベン・フォールズ・ファイブみたいなピアノでグランジ的なモノもやったりして、オリジナルのバンドもやったんだけど、大体高校生とかだとコピーバンドじゃないですか。で、そこで何をコピーするかが大事なんだけど、僕が高校二年生のときにやったのがINXSのコピーバンドで。なんでINXSだったかって言うと、ダンサブルなロックっていうのがそんなにない時期なんですよ。その後にストーン・ローゼスとか出てくるんだけど、ファンクネスがあって、ダンスとしての機能もあって、そしてロックのパフォーマンスがある感じってあんまりなくて。だからINXSだったんだけど、そこから多分始まってる。一年生のときとかは、エレクトロポップの延長にあるもうちょっとダンサブルなモノとか、ニューウェイヴ的なユーロビートのバンドもやってて。だから流れがあるんですよね。エレクトロポップ、ダンスミュージック、パンク、INXSのコピーバンドとやって、大学入ってBOOM BOOM SATELLITESやってるから。 で、聴いてる音楽とかもマントロニクスとか、そういう初期のエレクトロニックなヒップホップとか、その後に出てくるア・トライブ・コールド・クエストみたいなジャズサンプルで出来てるヒップホップとか、ありとあらゆるモノを聴いていたから、ボディミュージックのクラブイベントとかがあると行ったりとかしてたし。まだ日本でテクノが流行る前、YELLOWが週末にテクノのイベントでパンパンになっている状態になる何年か前に。で、ボディミュージックとかインダストリアルとか、大体そういうのを川島も聴いてて。川島は学校の側で一人暮らししてて、そこにいろんなCDを持っていったり、川島の家にあるCD聴いたりして、今思い返すとよくまぁ学生がここまで聴いたなって思うぐらい、聴いてて。川島は一日に一枚はCD買ってましたからね(笑)。--ほとんどバイト代がCDに消えていくみたいな(笑)?
中野雅之:そうそう。--それだけいろんな音楽を聴き込んできた中野さんと川島さんがBOOM BOOM SATELLITESを結成した当初に掲げていた、作りたい音楽っていうのはどんなモノだったんですか?
中野雅之:やっぱりロックバンドがやるテクノとかじゃないかな。そこは基本的に今も変わってないのかもしれないけど、ブレイクビーツでギターをがちゃがちゃ弾いたりとかするぐらいのレベルから始めて。で、僕はプログラミングの経験があったし、自分でもちょっとアブストラクトっぽいトラックとかを家で作ったりもしてたから、すぐそういう作業に取りかかれていたんだけど、その頃で言うと、ジーザス・ジョーンズとかビッグ・オーディオ・ダイナマイトとかポップ・ウィル・イート・イットセルフとか、そういう感じの音楽をやりたいと思ってましたね。 今のニューウェイヴとかもそうかもしれないけど、結構雑然としてる、まだ完成された音楽じゃない、現場で起きてしまったような感じの音楽がゴロゴロしてる時期だったから、みんな試行錯誤だったと思うし。で、ハウスとかは完全にインディペンデントなレーベルの下でリリースされるモノで、オーバーグラウンドではなかったから、新しい音楽っていうのはすごく手作りなところから出てくる。今はハウスは言ってみればどこでも手に入る。どんどんどんどん市民権を得ていった結果、そこまでワクワクする音ってなくなってるかなっていう気はちょっとするんですけど。そういう意味では、エキサイティングな時期にバンドを始めることができて、自分たちはラッキーだったなって思う。バンドもやったし打ち込みもやったし、打ち込みのバンドもやったし、宅録もやったしライブもいっぱいやったっていう経験が、BOOM BOOM SATELLITESをやるまでにかなり豊富にあったから、BOOM BOOM SATELLITESを初めたばかりの頃は正直何やってもすごく面白かった。ルールがないところで、学生だから無責任で何でもサンプリングするし、夜な夜なレンタルビデオ屋さんに行って何かの映画を借りてきたらその中から何個かサンプルを拾うっていうのを、学校に行かないで一日中やってたりとか(笑)そういうときもあったし。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
何かが起きるアルバム
--BOOM BOOM SATELLITESでデビューしてから作品もたくさんリリースされて、だんだんBOOM BOOM SATELLITESらしさとかファンの存在とかいろいろ出てくる中で、今っていうのはどんなテンションだったりするんですか?
中野雅之:今も全然攻めっていうか。なんかまだちゃんと時代のための音楽を作れているなっていう感じはしてて。そもそもあんまりこの年齢で現役のバンドっていうのがイメージできなかったから、バンドは若くてフレッシュで勢いがあって格好良いモノってずっと思っていたから、今の自分を想像もしてなかったんだけど、まだ全然格好良いことできるじゃんって思ってて。 ミュージシャンとして歳を取っていく方法っていろいろあるんだなって。ここで怠けたり甘えたり、まぁファンに甘えることもできるんだけど、ファンに甘えるっていうのは、僕的には一番ミュージシャンとして格好悪いこと。今持ってる牌を大事にしてあげることでミュージシャンとしての生活を続けるっていうのが、どうにも格好悪く思えてしまって。だから時に裏切るぐらいの攻めっていうか、自分の音楽的な欲望みたいなモノをぶちまけては、それを共有するっていうか。オーディエンスと共有する接点を持つっていう努力をすることで、いくらでも切り開いていける。それでスキルも身に付いていくし。だから今、結構楽しいです。もちろん人生には波があるから、良いときも悪いときもあるし、これからもそうだろうし。でもこういう方法があるんだなってことを最近知ったこと自体は、結構嬉しいんです。悲観してたから。絶対に30代になったら裏方に回るんだって決めてたぐらいだし。で、裏方になる才能がその時点でなかったら、何か仕事見つけなきゃいけないなとか思ってたから。 僕、ロンドンに行った時期に「元ミュージシャン」って言う人たちにものすごくたくさん会ったから。みんな「ミュージシャンだったんだ」って言う。で、レコードも出してたとか、どこと契約があったとか、そんな話ばっかりなんですよ、会う人会う人。本当にね、タクシーに乗ったら運転手さんがG.I.オレンジだったっていう(笑)。「俺も日本に居たことがある」「え、なんで?」「バンドやってたから」「なんてバンド?」「G.I.オレンジ」「え?本当に!?」みたいな(笑)。そんな感じだから大人に夢を持てなかった。それはわりと最近までそうだった。自分が格好良くミュージシャンとしての存在感を発揮できるかどうか、全くイメージが持ててなかったですね。でも今はまだ全然格好良いことができるってことに気が付いて、いろんなことがクリアーに考えられるようになってきてる。--それは今回の新曲やこの先リリースされるであろうアルバムにも反映されてますか?
中野雅之:それはもちろん。あんまり突出してとにかく新しい音楽、新しいスタイルみたいなモノを打ち出すわけではないと思うんですけど、多分アルバムの内容は。ただ、普遍的に良い楽曲とか、強いビートとか、それを研ぎ澄ませていく、誰もやったことがないレベルで研ぎ澄ませていく。だからもちろん自分たちにしかないモノっていうのは絶対に出てくる。それは間違いないんだけど、でもジャスティスみたいに何もかも新しく感じられるようなことではないかもしれない。それは産み落とされてみないと分かんないけど。でも良い曲を作ろうと。自分たちにしか作れない曲を。--今回の『EASY ACTION』を聴いてなおさら思ったことなんですが、ここ数年のBOOM BOOM SATELLITESの楽曲ってリリックやトラックはもちろんなんですけど、メロディが半端なく耳に残るんですよ。
中野雅之:『EASY ACTION』のあのサビのメロディは僕が作ったんだけど、確かにメロディの動きが大きいんですよね。でもそうすると言葉選びがすごく大変なんですよ。発音にない動きをメロディがするとおかしな歌になるから、その中でリリックの意味とサウンドとかきちんと整合性のあるモノにするのは、すごく難しくて大変だったんだけど、なんていうのかな?リフロックみたいな感じのロックバンドに短いスパンのリフレインっていうモノって、ロックの定番としてあると思うんだけど、それってリリックを乗っけることに苦労しないんですよね。ただ言葉を言っていけば、自然にそれにメロディが付いてしまうっていうスタイルだから。だけど『EASY ACTION』は、長いメロディをキャッチーに歌わなければいけないっていうので、意外とチャレンジし甲斐があったなって。でもやりたかったんですよね、それは。--その仕上がりには、どんな印象、感想を?
中野雅之:作り手としては、追い込みたかったところはまだあったんですけど、でも良い曲に仕上がったんじゃないかな。--ちなみにキャッチーであることっていうのは、ここ数年だんだん意識するようになった部分なんですか?
中野雅之:そうだと思う。ストイックなビートの繰り返しだけで聴ける時代っていうのも10年やってるとあったんだけど、今は展開が早くて、性急感があって、どんどん人を惹き付けていく。ダンスミュージックでもそういうモノの方が主流になっている感じがあって。ひたすらミニマルっていうよりは、ポップなモノを。それが今自分的にも肌にすごく合うし、そういうモードに入ってる感じはある。だからポップっていう言葉とかアイコンとかっていうのは、今は 嫌じゃない。昔はポップであることを嫌うというか、距離を置こうとするというか、そういう美学みたいなモノってあったんだけど、今はむしろポップであることこそが格好良いっていう感じがします。 多分それは文化的なサイクルだと思うんだけど、だから絶対によりもどしってどっかで来るから。それがオルタネイティブなシーンでも何でも。とてつもなくミニマルな音楽っておそらくどっかでまた盛り上がり出すと思うんですね。ここまでポップなダンスミュージックとかが出てくると、それは起きえると思うん。で、それが何かのタイミングでちょっとオーバーグラウンドに肉薄してくるようなこともあるんじゃないかなって。そうしたときに自分の音楽に対してどういうモチベーションを持てるか?っていうと、世にあるモノの流れの中で自分の気持ち良い居場所を見つけたり、あるいはない場所を作ってみたりっていう動きが起きるから、今ポップなモノが心地良いっていうことは、3年後には当てはまらないかもしれないっていうのは、あります。--ただ今最も心地良いモノとして感じているポップというのは、今作っているアルバムのテーマになってるんですかね?
中野雅之:それはあります。実際に今上がってきてる曲もポップなモノが多いと思う。強いモノだけど。ポップってポピュラリティのポップだから、言葉そのものは、大衆に受ける、大衆的だっていう意味で、ポップミュージックっていう風になると、それがヘヴィネスを伴ってないモノとか、なんとなくそういうモノを連想しちゃいがちだけど、今は音楽が幅広く世に浸透していると思うし、ポップの中にダークネスだったりヘヴィネスだったり、それからネガティブなことだったりが含まれていても、受け入れてもらう形としては全然ポップとして成り立つ。だから今僕が「次のアルバムはすごくポップです」って言って、それを言葉だけで捉えられると誤解が生じるかもしれないけど、そういうこのバンドで大切にしてきたモノっていうのはちゃんと入ってるし、だから自信はあります。何かが起きるアルバムじゃないかな。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
今までにない太い一貫性
--あと、また海外でガンガンにライブをやっていきたい気持ちとかもあったりしますか?
川島道行:それはありますね。去年【SONAR/ソナー】に出たりとかっていうのもそれに向けたステップのためのひとつだったりもすると思うし。海外っていうのは、常に視野に入ってる部分です。--かつて海外でアンダーワールドやモービーと同じステージでライブをされたわけですけど、今対バンするとしたら誰とやってみたいですか?
川島道行:やっぱりスタジアム的なモノを一度経験してみたい気持ちもあるし、ニューレイブっていう現場でも、あれは多分アティチュードとしてのジャンルの付け方だと思うんだけど、僕はイギリス本国でそれを体験はしてないので、今どうなっているのかっていうのを、演者として、アクトとして体感してみたいとは思います。一時、フランスでツアーしたりとかドイツでツアーしたりとか、あの辺のフェスティバルをまわったりしたときのような規模のクラブとかベニューで、最近のニューウェイブ以降のアーティストとやるのも面白そうだし、その辺は興味が尽きないところですね。--そんなライブの中でもまたひとつのハイライトになっていきそうな今作『EASY ACTION』なんですが、この新曲に関しては川島さん自身、どんな印象や感想を持たれていますか?
川島道行:非常にメロディック。激しいビートの中にもちょっと色が濃い心情がメロディに反映されているっていう部分で、良い曲が上がったなって思いますね。--また今回のリリックに関してはどんなイメージを膨らませながら構築していったんですか?
川島道行:映画『ベクシル』に使われるっていうことで、シナリオを読ませてもらって、それは一稿目でオチがまだ決まらないみたいなことを聞いていたんだけど「オチが決まらないんじゃなぁ」とか最初は思いつつ(笑)。でも曽利文彦監督の作品には常に社会的メッセージっていうものが織り込まれていて、それは『アップルシード』もそうだったんですけど。で、今回はエンタテインメント性に特化したモノっていうことだったんだけど、シナリオ読んだらそうでもないなと思って。鎖国をした日本がどうなっているか?っていう話の主軸だったりとか、後半に出てくる、かつて人だったモノによる巨大な何かがどうしてこうしてっていうのを読んで、これは一番人の平らな部分、悪をみんな持って生まれてくるという部分に焦点を当ててるなと思って。それをバックボーンに置きながら、あとは歌うだけなんで、グラムチックな王道フレーズをぶつけて、そこからひとつの物語を構築していった感じです。--個人的に『EASY ACTION』には、より歌が耳に響くというか、前に出てきてる印象を受けたんですが、自身ではどう思われますか?
川島道行:例えば、最近のニューウェイブ、エレクトロクラッシュ的なビート感でもって、生ドラムがダンスミュージックを奏でていたりする曲がよくあるけど、それに僕らはロックバンドとしての要素が混ざり合わせてる。それが当初からの属性であって、ここに来て「じゃあ歌を特化させていこうか」みたいなのは、別になかったんですけど、そう聞こえるのは多分『FULL OF ELEVATING PLEASURES』からの流れの中で、楽曲として歌モノが腰を据えてきている、それの行き着いたところが『EASY ACTION』だったりするからかもしれない。 あとは、やっぱり人の気持ちを掴むメロディを追求しているからだと思います。それはミニマルなダンスミュージックを作るのとは全く違う、ロックバンドとしてのアティチュードだと思うし、コミュニケーションの取り方。それはすごく大事なモノですよね。そこの間口が広がっていってる感じは、ライブ、フェスに出ても体感するし、ツアーに出ても感じる部分ですね。--ちなみに今制作中のニューアルバムは、どんな作品になりそうですか?
川島道行:もうちょっと進まないと分からない部分が多いけれども、すごく不思議な感じで。流れで聴くといろんな色を感じれるんだけれども、その芯の太さは今までになく太い一貫性が貫かれている。そんな感じかな?今の段階で言えるのは。これからまたもっと色がハッキリしてきたりとか、見える景色が変わってきたりとかすると思うんですけどね、楽曲楽曲によって。でも良いアルバムになりそうな感じがしてますよ、前作にも増して。リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
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