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ミーターズ特集~ニューオーリンズ・ファンク代表格の足跡を辿る
粘っこいリズム・セクションに絡みつく、ファンキーなカッティング・ギターと、ソリッドなハモンド・オルガン。そして、いわゆるファンクの王道を突き進みながらも、ニューオーリンズ特有のセカンドラインを加えた独特のグルーヴ。ニューオーリンズ・ファンクの頂点といえば、真っ先にミーターズの名前が挙がるだろう。彼らは、アラン・トゥーサンやドクター・ジョンのボトムを支え、ネヴィル・ブラザーズを生み出し、ダーティー・ダズン・ブラス・バンドからギャラクティックに至る次世代のニューオーリンズ・サウンドに大きな影響を与えた。また、ソウル、ファンク、R&Bだけでなく、ロックやレゲエ、ヒップホップなどのミュージシャンからも厚い信望を得ている職人たちだ。現在も形を変えながら活動を続けるミーターズの歴史を追ってみよう。
ミーターズの始まりは、60年年代の半ばにまでさかのぼる。ハイスクール時代からバンド活動を行っていたアート・ネヴィル(キーボード)が、ジョージ・ポーターJr.(ベース)、レオ・ノセンテリ(ギター)らとともに組んだグループがミーターズの前身だ。そこにジョー・“ジガブー”・モデリスト(ドラムス)が加入し、第一期ミーターズが結成される。彼らはアラン・トゥーサンのレーベルでハウス・バンドとして活躍し、数々の名曲を吹き込むことになるが、その際に、ソウルやファンク、そしてセカンドラインをガンボ・スープのようにごった煮し、独特のグルーヴィーなサウンドを作り上げていった。
そして、ついに1969年にグループとして独り立ちデビューし、翌年ファースト・アルバム『The Meters』を発表する。冒頭に収められた「Cissy Strut」はインストでありながらシングル・ヒットを記録。スライ&ザ・ファミリー・ストーンの「Sing A Simple Song」のカヴァーも含む本作で、一躍ニューオーリンズ・ファンクの第一人者という評価を得た。1970年にはセカンド・アルバム『Look-Ka Py Py』を発表。4人の笑顔が印象的なジャケットだが、シンプルで無駄のないインスト・ファンク・サウンドは強力だ。続くサード・アルバム『Struttin'』(1970年)では、グレン・キャンベルがヒットさせたジミー・ウェッブ作「Wichita Lineman」や、アラン・トゥーサン(ナオミ・ネヴィル名義)による「Ride Your Pony」といったヴォーカル・ナンバーを数曲加え、新境地を開拓しえいる。
1972年には、これまでのジョーシー・レーベルからリプリーズ・レコードへ移籍。ニール・ヤング「Birds」のカヴァーを収録した4作目『Cabbage Alley』では、アートのヴォーカル・ナンバーがメインとなっただけでなく、ピアノやパーカッション、コーラスなどを加えながら少し洗練された印象がある。この頃、ドクター・ジョンの名盤『In The Right Place』(1973年)で全面バックアップしたこともあり、さらに注目を集めた。そして、彼らの最高傑作とされることも多い1974年の『Rejuvenation』では、ホーン・セクションも大々的に導入。アートの歌声もすっかりバンドの顔となり、「Hey Pocky A-Way」や「People Say」といった代表曲も生み出した。また、クレジットは入っていないが、リトル・フィートのローウェル・ジョージが「Just Kissed My Baby」でスライド・ギターを聴かせてくれるのも、ミーターズの音楽が幅広く受け入れられた証拠のひとつだ。実際、ポール・マッカートニー、ローリング・ストーンズ、ロバート・パーマーといった当時のスターたちは、こぞって彼らを共演相手に指名している。
来日公演情報
THE METERS EXPERIENCE
featuring THE ICONS OF FUNK
LEO NOCENTELLI, BERNIE WORRELL, FRED WESLEY with STANTON MOORE, BILL DICKENS
ビルボードライブ東京:2014/10/27(月)~10/28(火)
>>公演詳細はこちら
ビルボードライブ大阪:2014/10/29(水)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
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Text: 栗本斉
1975年にはシリル・ネヴィルがパーカッションとして正式に参加。その年の『Fire On The Bayou』では、後にネヴィル・ブラザーズにも取り上げられたアグレッシヴなファンク・ビートを叩き出すタイトル曲「Fire On The Bayou」を筆頭に、強力なナンバーがそろい踏み。ジャズやカントリーなどのエッセンスも感じられるバラエティの豊富さもこれまで以上だ。しかし、この頃からバンドにかげりが見えてくる。1976年に発表した『Trick Bag』も、強靱なリズムはそのままに、ジェイムス・テイラーやローリング・ストーンズのカヴァーを加えた力作だったが、ディスコ・ビートに挑戦するなど少し無理を感じさせる。そして1977年の『New Directions』では、ついに長年タッグを組んできたアラン・トゥーサンをプロデューサーから外し、ヴォコーダーを使ってみたり、レゲエのビートを取り入れるなど果敢な挑戦を行っているものの、この年ついにバンドは崩壊し解散する。アートとシリルは、アーロン、チャールズという兄弟たちでネヴィル・ブラザーズを結成。他のメンバーはセッション・ミュージシャンとして活躍することとなった。
▲ 「Hey Pocky A-Way / Cabbage Alley」 / funky METERS
しばらく個別の活動が続いたが、1989年に突如再結成。モデリストの代わりにラッセル・バティストJr.が加入。ロビー・ロバートソンのアルバムに参加するというトピックもあり、第二期ミーターズとしてライヴを中心に活動していくことになる。そして、ついに1994年にはノセンテリも脱退を表明。残ったメンバーは、マイナー・チェンジを重ねながらもファンキー・ミーターズとしてグループを継続させ、今も変わらないサウンドで演奏をし続けている。
▲ 「Fire On The Bayou」MV / The Meters Experience
さて、その脱退したノセンテリだが、現在はミーターズ・エクスペリエンスとして新たなプロジェクトで活動中。10月に来日するそのメンバーはとにかく豪華だ。P-FUNKの頭脳といわれたキーボード奏者バーニー・ウォーレル、ジェームス・ブラウンとともに歩んできたトロンボーン奏者フレッド・ウェズリーという重鎮に加え、現在進行形のニューオーリンズ・サウンドを作り続けているギャラクティックの屋台骨を支えるスタントン・ムーア、超絶技巧のスラップ・ベースで度肝を抜くビル・ディケンズというメンツが勢揃い。50年以上続くニューオーリンズ・ファンクの世界をたっぷりと堪能できるはずだ。ミーターズが今現在の音楽シーンにどのような影響を与えているのかを知りたければ、必見のライヴといえるだろう。
来日公演情報
THE METERS EXPERIENCE
featuring THE ICONS OF FUNK
LEO NOCENTELLI, BERNIE WORRELL, FRED WESLEY with STANTON MOORE, BILL DICKENS
ビルボードライブ東京:2014/10/27(月)~10/28(火)
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ビルボードライブ大阪:2014/10/29(水)
>>公演詳細はこちら
INFO: www.billboard-live.com
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Text: 栗本斉
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