2013/02/05
ホステス・エンタテインメントが仕掛ける新たな音楽イベント【Hostess Club Weekender】が2月2日、3日の2日間、東京・台場Zepp DiverCityで開催された。4回目となる今回も様々なアーティストがラインナップされ、会場は熱心な音楽ファンで埋め尽くされた。
2日目のトップバッターは、デビュー作が、マーキュリー賞を筆頭に数々の音楽賞にノミネートされ、一気に世界的な注目を浴びたアイルランド出身の新進バンド、ヴィレジャーズ。先日ヨーロッパでリリースされた待望のセカンド・アルバム『アウェイランド』も各方面から大絶賛を受け、本国アイルランド・チャートでは初登場第一位を記録し、勢いにノリまくっている。しかし、ステージに現れたメンバーはそんな前評判をスカすようにのんびりとしたパフォーマンスを披露。引き締まったサウンドからバンドの中枢であるコナー・J・オブライアンはじめ各メンバーのセンスの良さ、才能を感じさせてくれた。
2010年の『ジ・オーチャード』でインディーながらスマッシュヒットを記録し、先日2年半振りのサードアルバム『ベータ・ラヴ』をリリースしたばかりラ・ラ・ライオットが本日2組目として登場。チェロ担当のアリーのグループ脱退後、初期からのコア・メンバー4人編成になって
は初めての日本公演となった今回。新作からも出し惜しむことなく、軽快でポップな魅力たっぷりの楽曲たちを次々と披露。ひたすら陽気にテンションを上げさせ、躍らせておきながら突然呼び止めてメロディーを楽しませたりと緩急の付け方も絶妙。何よりウェスリーの突き抜けるような歌声が秀逸。頭痛を芯から取り払ってくれるような爽やかで深みのある声とファンキーなエレクトロ・ポップが一体となって会場を包んだ。
続いて登場したのはレディオヘッドのプロデューサーとして、トム・ヨークによる脅威のウルトラ・バンド、アトムス・フォー・ピースのメンバーとしても大活躍中であるナイジェル・ゴドリッチの新プロジェクト、ウルトライスタ。来日直前にメンバー変更が発表され、ヴォーカリストのローラ・ベッティンソンと2人で出演となった。ドラマー不在の為、トラックを使用したパフォーマンスとなったが、ループしたベースとバックトラックの低音の重なりあったグルーヴは身体の芯をズンズンと刺激し、そこに想像していたよりもはるかに美人だったローラが歌声で侵入してくる。無機質で中毒性のあるトラックにキュートな生身の歌声は観客をちょっとしたトリップ状態へ連れ去った。
そして、4組目のベスト・コーストはローファイ・サーフ・ブームの火付け役となった2010年デビューの男女デュオ。今回はサポートメンバーを合わせて4ピースのバンド編成で登場。ベサニーがギターをジャラーンと鳴らした自己紹介から「なんてロックバンドっぽいんだ!」とゾクゾクさせてくれる。ローファイなパワーポップとキュートな女子目線の歌詞にオーディエンスはメロメロ状態。初日のバンド・オブ・ホーセズもそうだが、4組目の安定感が素晴らしい。デビューしてさほど時は経っていないのに堂々としたパフォーマンスにしっかりした出音に感心してしまう。メロディーもギターリフもキャッチーで最高。
2日目の大トリを飾ったのは、ダーティー・プロジェクターズ。圧倒的なコーラス・ワークと
ドロッとした独特のグルーヴで聴く者を虜にしてきた彼ら。昨年10月の渋谷・O-EAST公演はソールドアウトになるなど、その人気は日本国内でも右肩上がり。早速披露されたのは新作『スウィング・ロー・マゼラン』のオープニングでもある「Offspring Are Blank」から。イントロのコーラスにフロアから歓声が巻き起こる。これから始まる素晴らしい体験に喜びを隠せないようだ。メロデイーとリズムが緻密に重なり驚異的な音像が生まれる中でベタっとしたドラムの生音感が強く、バンドとの感覚的な距離感が近い。静寂と狂乱をひとつの空間の中で完成させてしまう圧巻のパフォーマンスは“冷静と情熱の間”と言ってしまいたくなるほど。各メンバーが放つサウンドは決して予定調和でなく、生み出す音楽の設計図がしっかりと同期しているのだ。彼らの構築する音楽世界に会場は幸福で満ち溢れていた。
前回はダイナソーJr.とサーストン・ムーアがヘッドライナーでオルタナ界のレジェンドを生で体感できたが、今回は現在進行形のトップ・アーティストが未来を見せつけた。次回は6月8日(土)、9日の日程で開催が決定。会場は第1回と第2回の舞台となった恵比寿ガーデンホール。ラインナップは発表されていないが、これからの続報を待ちたい。
Photo:古溪 一道(コケイ カズミチ)
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