2020/12/18
米ライブ・ネイションは、今年3月12日に全てのツアーを中断した。株式市場が低迷し、米ライブ・ネイションの最高経営責任者であるマイケル・ラピーノは、自社の株を100万ドル分(約1億300万円)購入し、会社が長期にわたり直面する困難の対応策への自信を示した。その6日後、米ライブ・ネイションの株価は、パンデミック期間の最安値である21.70ドル(約2,240円)にまで下落し、パンデミック以前の74.19ドル(約7,660円)から70.1%減となった。経済は急激に悪化し、米国の国内総生産は第2四半期に32.9%減少し、映画館やテーマパークなどの屋外エンターテインメントの分野の企業は多くの顧客を失った。
現地時間2020年12月17日、米ライブ・ネイションの株価はパンデミック前の水準まで回復した。同日正午、新型コロナウイルスの影響を受ける前の2月21日の価格を20セント上回る73.93ドル(約7,640円)に同社の株価は達した。しかしながら、米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、13人のアナリストによる米ライブ・ネイションの平均評価額は66.10ドル(約6,830円)、最高値85ドル(8,780円)、最低値56ドル(約5,790円)であまり楽観的ではない。
米ライブ・ネイションの株価の回復は、コンサート事業全体の健全性以上のものを維持しようとする同社の努力を物語っている。債権の売却で12億ドル(約1240億円)を調達し、木曜日にはさらに5億ドル(約517億円)の債権を売却する計画を発表し、同社は資本市場を通じて現金を受け取ることが可能となる。コンサートがない状態が半年続き、収益は第2四半期に97.7%減少、第3四半期には95.1%減少したが、9月30日の時点で同社には26億ドル(約2,688億円)に及ぶ現金と現金同等物がある。解雇とコスト削減策により月々の経営コストは1億ドル(約103億円)にまで減少した。財務操作により、来年の夏のコンサート・シーズンまでの米ライブ・ネイションの存続は問題なさそうだ。
コンサートが中断されてから8か月後、 連鎖反応によりコンサートに関わる企業は財政的に不安定な状態となった。タレント・エージェンシーは、クライアントのツアー収入がなくなったために困難に直面し、スタッフの解雇または一時解雇を余儀なくされた。米大手タレント・エージェンシーCAAは、6月に「大規模な解雇」を行った。エンデヴァーは、パンデミックの「影響を緩和するため」に従業員の3分の1を解雇。UTAは、スタッフを一時帰休し、そのうち50人が復職したが、残りは解雇となった。パラダイムは、パンデミックの影響が「6か月前に想像していたよりも長く」拡大したため、180人のスタッフを解雇したと会長兼創設者のサム・ゴアズは述べた。米ビルボードが随時更新している完全に閉鎖された会場リストは、コンサート・ビジネスの脆弱な状態について多くを物語っている。
2021年初めまでにアメリカ人のごく一部にしかワクチン接種が行われないことが、 コンサート業界が回復するための障害として存在する。米ライブ・ネイションの幹部は、コンサート事業が忙しくなる夏までに規模を拡大して実施すると何度も述べているが、消費者が会場に行くことに対して安全であると感じる必要がある。
米モルガン・スタンレーの新しい調査によると、米国のコンサート参加者は、ワクチンが広く利用可能になった後も、イベントへの参加に懸念を抱いていることがわかった。実際に、調査によると年間6回以上のコンサートに参加するヘビーユーザーも懸念を抱いている。今年春に実施されたMRCデータ/ニールセン・ミュージックの調査で、コンサート参加者の約3分の2が、ポッドの座席、マスク、体温の確認などの安全対策を講じたコンサートに参加すると述べた。米ライブ・ネイションの独自の調査によると、世界中のファンの95%が、安全制限が解除されれば、コンサートに参加する予定とのことだ。
コンサートの大部分は中止ではなく延期され、83%のチケットは返金されず、チケットとして保有されている。そのため、すべてのプロモーターと会場所有者のコンサート収益は、来年夏までに通常に戻る可能性がある。米モルガン・スタンレーは、2021年には、2019年の61.7%にあたる71億ドル(約7,344億円)の収益、2022年には116億ドル(約1兆1998億円)の収益に達すると予測している。米ライブ・ネイションの話題には、コンサートよりも収益性の高いビジネスである、同社の傘下にあるチケットマスターについての言及は含まれていないが、Lightshed Partnersの株式アナリストは、チケットマスターにより、調整後の営業利益がさらに1億2500万ドル(約130億円)増える可能性があると指摘する。
米ライブ・ネイションの株価が39.98ドル(約4,134円)だった際に、同社の株式100万ドル(約1億300万円)を購入したマイケル・ラピーノの株式は88.9%増加した。取締役のジェームズ・カーハンは約11万ドル、執行副社長兼相談役のマイケル・ロウルズは約10万ドルの同社の株式を購入している。3月12日の時点では不明だったが、ワクチンの実用化が始まり、米ライブ・ネイションが問題なくこの冬を乗り越えられる状況を考えると、これは良い賭けだった。12月17日の時点でマイケル・ラピーノの含み益は88万9000ドル(約9,200万円)となる。
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