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2020/11/20

<ライブレポート>【Colorful JAZZ vol.2】細川千尋、山下 伶、はたけやま裕~3人の個性が溶け合い色彩豊かな音楽を紡ぎ出す

 「かわさきジャズ」のオリジナル企画となる【Colorful JAZZ vol.2】が11月11日ラゾーナ川崎プラザソルで行われた。ジャズとクラシックのクロスオーバーな活動が注目される細川千尋(ピアノ)、いくつものハーモニカコンテストで1位を受賞し、その魅力を伝え続ける山下 伶(クロマチックハーモニカ)、パーカッションの可能性を多彩に引き出すソロライブが人気のはたけやま裕。3つの才能の競演がどんな新しい世界を見せてくれるのか、期待に胸が高まる。ソーシャルディスタンスを意識した座席配置も早くに満席になっていた。

 はじめに、スティーヴィー・ワンダーの「可愛いアイシャ / Isn't She Lovely?」。繊細なピアノに導かれて始まったクロマチックハーモニカのメロディにうっとり。コンガがスウィングビートを刻みだし、アップテンポになると、ライトブルーやイエローの照明も手伝って、会場は花が咲いたように。演奏後のMCによると、昨年行われた【Colorful JAZZ vol.1】でも同じスティーヴィーの曲で始まったので、プログラムにつながりを持たせたかったとのこと。リピーターにはうれしい、粋なチョイスだ。

 次はリシャール・ガリア―ノの「タンゴ・プア・クロード」。山下が、クロマチックハーモニカが、アコーディオンやバンドネオン等と同じリード楽器であることから、似た響きを出せないかと選んだ曲。情熱的でアグレッシブな演奏に激しく胸を衝かれた。

 次も山下のチョイスでヘンリー・マンシーニの「ひまわり」。山下は、この曲がクロマチックハーモニカとの出会いだったそうで、「人生を変える1曲との出会い」「この曲がなかったらここにはいない」という話に共感した観客も多かった。演奏もそんな山下の思い入れがストレートに伝わってきて、深く静かな感動が会場を包んだ。

 曲前の山下のMCを受けて「出会いで人生が変わる」トークを3人で繰り広げた後、はたけやまチョイスの落語の出囃子「昼まま」のジャズ・アレンジでの演奏。原曲では三味線の旋律を担当するクロマチックハーモニカの音色が絶品で自然にウキウキしてくる。インプロで身を乗り出して生き生きと演奏する細川とはたけやまの体の動きがシンクロし、楽しんで演奏していることがよく伝わってくる。日本の曲のジャズアレンジは珍しくはないが、この曲は、きっと日本らしいジャズの目玉になるのではないか。

 前半最後は、細川チョイスのポール・デスモンドの「テイク・ファイブ」。パーカッションソロから入るイントロ、ホイッスルボイスのような高音で聴かせるクロマチックハーモニカ、ダイナミクスレンジの広いおおらかなピアノのインプロ等、スタンダードジャズながら、3人の色にカラフルに彩られた演奏だった。

 後半は、しっとりとバート・バカラックの「アルフィー」から。哀感を帯びたメロディの余韻に浸りながら、「こういう時期だから、幸せになれるような曲を」という細川のMCが胸に響く。

 続いて、細川オリジナルの「黎明」。「黎明」は、「夜明け」という意味だが、冒頭の美しいピアノとクロマチックハーモニカのメロディから徐々にクールに曲が展開していく場面はまさに「夜明け」をイメージさせた。3人で演奏するシンフォニックジャズを聴いているようで、クロスオーバーに定評のある細川のセンスが光った。

 ここからは、はたけやまのオリジナル曲の演奏へ。「クロスロード」を、カホンをフューチャーして演奏。冒頭のカホンソロから、ピアノとクロマチックハーモニカが入りさらに疾走感を増し、クールに、スリリングに進む。インプロも、カホン一つで多彩な音を出し、息をつかせない。赤みを帯びた照明も、雰囲気を演出する。3人の息のぴったり揃ったキメの部分やダイナミクスの変化の素晴らしさも含めて、終わった時には格別な拍手が送られていた。

 次もはたけやまのオリジナル「よだかの星」。演奏前のはたけやまの物語の解説で、山下が朗々と奏でる切ないメロディに物語の場面を投影させながら聴くことができ、静かな感動に浸ることができた。

 ラストはデューク・エリントンの「キャラバン」。躍動感みなぎるプレイに、大勢の観客の肩も揺れていた。それぞれのインプロの途中でも大きな拍手が起こる。ハイハットの2-3クラーベに導かれて、会場のテンションも最高潮。充実した時間を皆が共有した。
 
アンコールは、バート・ハワードの「フライミートゥザムーン」歌心あふれる抒情的な演奏を楽しむ。名残惜しそうにフェイドアウトしていくそれぞれの楽器の音が素敵な余韻を残し、終了。

 前半途中のはたけやまのMCでの言葉「全然違った経歴で、全然違う人生をたどってきた3人がここで会う」に、重みを感じる。3人がそれぞれの活動の中で培ってきた力、それぞれの個性がこの場でミックスされることで、よりパフォーマンスが鮮やかに彩られ、新しい音楽が伝えられていく。3人の個性の融合により輝いたColorful JAZZ、ぜひ来年以降も見られたらと願う。

文:小町谷 聖(かわさきジャズ公認レポーター) 写真:Tak. Tokiwa

◎公演情報
【かわさきジャズ2020】
「Colorful JAZZ vol. 2」
日時:2020年11月11日(水)
会場:ラゾーナ川崎プラザソル
出演:細川千尋(p)、山下 伶(クロマチック ・ハーモニカ)、はたけやま裕(per)</b>

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