2020/10/03
2020年、YOASOBIやヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。などを筆頭に大きな活況を見せるインターネット上の音楽シーン。2018年からカバー動画の投稿を中心に音楽活動を始めたシンガー、yamaもその一角であり、4月にリリースした1stシングル「春を告げる」はバイラルヒットを経て、Billboard JAPANの総合ソング・チャート“HOT 100”では5月から現在まで、根強く上位にチャートインし続けている。
そのyamaが10月2日、初の配信ライブ【Versus the night】を開催。コロナ禍以降増えた「孤独に夜を迎える人々」に向けてメッセージを込めたものだそうで、開演時刻は21時、いよいよ夜が深まり始めるという時間帯に設定された。
定刻を迎えて画面が切り替わり、けたたましいサイレンや車の走行音が鳴り響く中、yamaがどこか建物の扉を開け、中に入っていく様子が映される。すると先ほどまでの騒音は一切消え、yamaがおもむろにマイクを手に取れば、淡いキーボードの音色とともに1曲目「クリーム」でショーがスタート。オリジナルの音源ではネオソウル風味の洒脱なサウンドを鳴らすのに対し、今回はサポートに井上仁(ALI)を迎えた、ヴォーカル+キーボードの超ミニマム編成によるスローバラード・アレンジで“孤独な夜”を表現していく。厚ぼったいSupremeのアノラックに身を包み、どこか覚束ない足取りで彷徨いながら歌うその姿を、カメラもゆったりとしたスピードで捉え続けた。
その「クリーム」が大サビを迎えた瞬間、映像はモノクロからフルカラーへと鮮やかに転調。こうした配信ライブならではの映像美を巧みに生かした演出も見どころだった本公演、監督は【岩壁音楽祭】の主催者としても知られる映像ディレクター、ウエダマサキが務めたことが本人のTwitterで明かされている。
2曲目はボカロP、コメダワラの楽曲「優しい人」を瑠璃色のライトに照らされながらカバー。続けて「春を告げる」でもタッグを組んだボカロP、くじら提供の3rdシングル「Down town」を披露し終えると、セットを変えて披露したのは、ソニーミュージックレーベルズからのデビュー・シングルとして10月21日にリリースを控える新曲「真っ白」だ。ソファに腰掛けながらパフォーマンスする二人越しに見えるのは、暖かな色を放つランプ、天井から注がれる照明によって鮮やかに彩られる樹木、そして楽曲の歌詞を映し出すブラウン管のテレビで、視覚的にも独特な世界観を作り上げ、ショーを演出する。
ライブの折り返し地点を飾ったのは、くじら節全開の疾走感溢れる「a.m.3:21」、yama自身がフィーチャリング参加した「ねむるまち」と、yamaとくじらが織りなす“夜の音楽”を体現した2曲。同時に、残響の少ないリズミカルなピアノとアタック感の強い歌声が抜群の存在感を放った2曲でもあり、ヴォーカルとキーボード、その両者を繋ぐ糸がピンと張り詰め続けるようなスリルがあった一方、その行間でもたらされる静寂の美しさも特に際立ったセクションだった。
再びコメダワラの楽曲「bin」をカバーしたあとは、未発表の新曲「ブルーマンデー」を披露。さらに9月7日にリリースされた最新シングル「あるいは映画のような」を経て、ラストの曲「春を告げる」へ。心地いい高揚と虚脱を繰り返してきた本公演の中にあって、明らかにリスナーの心を大きくざわつかせた瞬間であり、1本の長編ミュージック・ビデオのようだった本公演のフィナーレに相応しい、とりわけ熱のこもったパフォーマンス。自身の歌唱パートを歌い切ったのち、アウトロの鳴り止まないうちにソファから立ち上がったyamaは街の喧騒が渦巻く場外へ。「孤独な夜もいつかは終わる」。最後にそんなメッセージが伝えられたようで、胸が熱くなるエンディングだった。
◎公演情報
【yama 1st 配信LIVE『Versus the night』】
2020年10月2日(金)Streaming+
アーカイブ期間:10/9(金)23:59
<セットリスト>
01. クリーム
02. 優しい人
03. Down town
04. 真っ白
05. a.m.3:21
06. ねむるまち
07. bin
08. ブルーマンデー
09. あるいは映画のような
10. 春を告げる
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