2020/09/04 18:32
1980年~1990年前半に台頭したL.A.メタルムーヴメントを代表する重要バンドであり、今もなお絶大な人気を誇るドッケン(DOKKEN)。現在もバンドを動かすシンガーのドン・ドッケン主導によるアルバムと、その黄金期を支えたギタリストのジョージ・リンチ率いるバンドのアルバムが、奇しくも同時にリリースされた。
ドッケン名義でリリースされた『THE LOST SONGS: 1978-1981』は未発表音源を収録したレアトラック集だ。同作はバンドの中心人物であるドン・ドッケンが、70年代末期に西ドイツ(当時)とL.A.を拠点に活動していた時期にレコーディングされた音源を、自身監修により公式リリースしたもの。当時のデモやシングル収録曲、その後にレコーディングされる曲のライブテイクなど、貴重な音源を聴くことができる。
音質面では当然ながら、後に放出される名曲の数々に比べて“ブラッシュアップ前”の音楽性ではあるものの、サウンド的にN.W.O.B.H.M.からの影響が色濃く見られる点は非常に興味深い。やはり繊細な声質だがエネルギッシュさもあるドンの当時の歌唱も確認できるなど、コアなファン向けのコレクターズアイテムでありつつ、その後のL.A.メタル・ムーヴメントへと流れる過程をつかめる貴重なアーカイブとしても機能する作品になっている。
そしてもう一作品は、ドッケン解散後にジョージ・リンチがドラマーのミック・ブラウンと組んだリンチ・モブによる、1990年リリースの1stアルバム『ウィキッド・センセーション』をリメイクしたアルバム『ウィキッド・センセーション・リイマジンド』だ。
当時のメンバーでもあるオーニィ・ローガン(Vo)と、現メンバーであるブライアン・ティッシー(Ds)、ロビー・クレイン(B)とともに、リリース30周年を記念し制作された本作だが、その内容は単なる“リレコーディング”にあらず。全曲を全く新しい解釈で再構築した新たな作品に仕上げている。
ジョージ・リンチによるギター(ストラトの枯れたサウンドが心地良い)がリードするそのサウンドは、オリジナル盤とは異なり“一見すると大人なプレイ”で再構築したもの。ただ、それは決して落ち着いたものではなく、各メンバーの現役ミュージシャンぶりが見事にパフォーマンスに投影された、情熱に溢れた意欲作となっているのだ。
よりブルージーな歌唱のオーニィ・ローガンの声も当時にも増して輝きを放っているが、何よりジョージ・リンチのギターが活力に満ち溢れて、生き生きとしているのが一番の特徴だ。ドッケン~リンチ・モブとしての活動を経た後、音楽/ギタープレイ両面において斬新なアプローチにも果敢に挑戦してきたジョージだが、それを見守ってきたファンは今作におけるプレイに心躍らせることだろう。オリジナルリリース当時同様、躍動感のあるそのパフォーマンスからはバンドを、そしてリンチ・モブの音楽をリードすることを楽しんでいることが明確に伝わってくる。
そんなジョージは、バンド名が人種差別を誘発する可能性もあることから本作にてリンチ・モブとしての活動に終止符を打つ。“この作品で終わりにして次に進む”とも語っているようだ。
レガシーへのきっかけを創出したドン・ドッケン、今なお自らを高みへ上げるべくチャレンジを止めないジョージ・リンチ。この2人が再びタッグを組む日が来るかは分からないが、歴史的ケミストリーを生んだ2人のミュージシャンによる対照的な2作品は、それぞれ違った観点で楽しめるアルバムとなっている。ジョージ・リンチの今後の活動、そしてもちろんジョン・レヴィン(Gt)との現ドッケンにも期待したい。
◎リリース情報
アルバム「ザ・ロスト・ソングス: 1978-1981」ドッケン
2020/8/26 RELEASE
MICP-11573 2,970円(tax in.)
◎リリース情報
2020/08/26
アルバム『ウィキッド・センセーション・リイマジンド』リンチ・モブ
MICP-11565 2,970円(tax in.)
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