2020/04/24
2020年2月にリリースされた、ベトナム人アーティストKhac HungとMin & Erikによる新型コロナウイルスの啓発ソング「Ghen Co Vy」が、国境を超えて文字どおり“ヴァイラル”・ヒットとなりつつあることをご存知だろうか?
“Washing Hand Song”とも呼ばれているこの楽曲は、2017年に国内でヒットした彼らの「Ghen」という楽曲をベースに、手洗いの推奨や人との距離を保つというような感染予防に役立つ正しい情報が盛り込まれた歌詞に書き換えられ、ベトナム保健当局と協力してミュージック・ビデオも制作された。また、人気振付師Quang Dangが考えたダンスもTikTokなどの動画プラットフォームで火がついたことから、この楽曲は現時点でベトナムで今年最も売れているポップ・ソングとなっている。
ベトナム国外でこの楽曲が注目されるようになったのは、米人気コメディアンで司会者のジョン・オリヴァーが自身の番組『ラスト・ウィーク・トゥナイト』で取り上げ、絶賛したことがきっかけだった。英語圏での人気の高まりを受け、2020年4月9日には英語版ミュージック・ビデオも公開された。
「Ghen Co Vy」のソングライターであるKhac Hungは、ハノイのベトナム国立音楽院を卒業し、ベトナムの【グラミー賞】とも言われる【Dedication Music Awards】で5回ノミネートされ、<最優秀プロデューサー賞>と<最優秀ミュージシャン賞>を受賞したことがあるベテラン・アーティストだ。
母国ではヒットメイカーと呼ばれる彼だが、その呼び方は好まないと2019年のビルボード・ベトナムとのインタビューで語っている。「人々が僕の音楽を愛してくれるのは嬉しいし幸運だと思うけれど、それを意図して音楽制作をしているわけではない。“ヒットメイカーになりたい”とか“トレンドを追いたい”という理由で音楽を作っていると、アーティストは自分の音楽的アイデンティティーを失ってしまうと思う」と彼は述べていた。
とはいえ、彼は世界的ヒットメイカーであるマックス・マーティンを尊敬しているとも発言している。何故かと聞かれると彼は、「90年代の音楽で育ったなら、マックス・マーティンの名と彼の楽曲を必ず聞いたことがあるはずだ。僕は最高のポップ・ソングを届けることに集中して専念したいだけなんだけれど、マックスはそれがとても上手くて、現在もやり続けている」と説明している。
「Ghen Co Vy」の大ブレイクは予想外だったものの、Khac Hungは以前から自分の楽曲がベトナム以外でも聴かれることを夢見ていたという。「自分の音楽に関しては、偽りのない、自分を表現したものを作りたいと思っている。僕にとって音楽とは単なる情熱だけでなく、人生への情熱をシェアし、自分を自由に表現する場なんだ。曲を書いていなければ後悔していただろうし、自分を表現する方法がなかっただろう」と彼は語っている。
そんな彼は、今回の「Ghen Co Vy」について、「僕たちは、この新しいヴァージョンを通じて、社会に安全意識を高めてもらいたかったと同時に、COVID-19と戦うためにみんなに希望を与えたかった。この重要な時期にこの曲を出した意図とは、みんなでこのウイルスの感染拡大を抑制できるというメッセージを送ること、そして特に最前線にいる兵士や医療従事者、公務員、不可欠なサービスを提供してくれている人たち、そしてこのパンデミックを克服するために身をささげている人たちに対し、音楽を通じて前向きな力と癒しを届けたかったんだ」と語っている。
世界から注目されていることに驚きを隠せないという彼だが、楽曲が受け入れられていること、そして感染予防のレッスンとして良い影響を母国と視聴者に及ぼしていることを誇りに思うと話している。音楽を使い、「Ghen Co Vy」を書くことにより、多くの人々がウィルスと戦えるように手助けをすることがKhac Hungの主な目的だったが、癒しである音楽はウイルスの感染拡大阻止に一役買うことだってできるというポジティブなメッセージも、この楽曲には込められている。
Text: Billboard Vietnam / Photo: Bee Hiroshi & Minh Dat
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