2020/01/20 14:00
先週、今年の【グラミー賞】授賞式開催まであと約1週間という驚きのタイミングで、同賞を主催するナショナル・アカデミー・オブ・レコーディング・アーツ・アンド・サイエンス(通称レコーディング・アカデミー)のデボラ・デューガン(Deborah Dugan)代表が突然謹慎処分を受け、米音楽界に衝撃が走った。
レコーディング・アカデミーの評議委員会からは、デューガン代表の行動について“重大な懸念”があり、“レコーディング・アカデミー・チームの女性幹部”から“正式な不正行為申し立て”があったという内容の声明が2020年1月16日に発表されたが、その翌日にはデューガン代表が弁護士を通じ、「レコーディング・アカデミー内で“ステップ・アップ”するとどうなるのか暴露する」と、前任者ニール・ポートナウによる2018年の女性蔑視発言の表現を使って真っ向から反論している。彼女は、17年間代表を務めていたポートナウの後任として2019年8月に就任したばかりの初の女性代表で、【グラミー賞】が抱えていた男女や人種の不均衡の是正に取り組んでいた。
こうした中、パブリック・エネミーのチャックDが、デューガン代表を全面的に擁護し、レコーディング・アカデミーを厳しく非難する内容の声明を発表した。「いつもと同じだ、無知で、テストステロンに刺激された、大抵は年寄りの白人たちが進歩を阻止し失敗させる。お決まりのでたらめだ。奴らは現状維持がしたくて、ヒップホップみたいなものは自分たちのでたらめのイメージ・キャラクター程度にしておきたいだけなんだ」と彼は憤っている。
パブリック・エネミーは、4月にレコーディング・アカデミーから<生涯業績賞>を授与される予定だが、創設メンバーであるチャックDは同団体との長年の確執について、1989年の【グラミー賞】をボイコットしたことなどに触れながら臆することなく綴っている。当時ボイコットした理由を、“ヒップホップ/ラップという新しい形の芸術を認めようとしなかった”アカデミーの姿勢に抗議するためだったと説明した彼は、今回<生涯業績賞>を受けようと判断したのは、彼が提示した問題点や改善要求にデューガン代表が真摯に向き合ってくれたからだと明かしている。
当初アカデミー側は、現在のメンバーであるDJ Lordを、全盛期のメンバーではなかったという理由から<生涯業績賞>から除外しようとしていたようで、チャックDはこの点や代表曲の扱いなどについて相当な議論を余儀なくされたようだ。「なぜ22年もメンバーであるDJ Lordがこの賞の一部であるべきなのか、俺らは議論して、教育して、正当化しなければならなかった。俺らの楽曲の中で最もUKでヒットし、世界的な(ロンドン)パラリンピック大会でテーマ曲として使われた“Harder Than You Think”がなぜ除外されたのか、問題提起しなければならなかった。メジャーではなく、俺のインディーズ・レーベルSlamJamzからリリースされたからか?」と彼は明かしている。
デューガン代表について彼は、「彼女自身もアカデミーと闘っていることは明らか」などと、終始称賛している一方で、団体そのものに対しては辛辣で、「デボラ・デューガンが切られたことには驚かない。いつもと同じでたらめの臭いがするから愕然としているだけだ。大衆を“them asses”(あのケツども)としか見なさない“New Whirl Odor”の臭いだ」と綴っている。
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