2020/01/12 12:00
シカゴを拠点に活動するサイケデリック・ロック・バンド=ポスト・アニマル。2015年にスタジオ・アルバム『Post Animal Perform the Most Curious Water Activities』でデビューした彼らは、サイケロックにハードロックの要素を取り入れたパワフルでエネルギッシュな作品で注目を集める。レコードレーベルは、アメリカン・フットボール、オブ・モントリオール、ヴィヴィアン・ガールズ、オールウェイズなどを抱える<ポリヴァイナル・レコーズ>だ。2018年にリリースしたセカンド・アルバム『When I Think of You in a Castle』は、ポスト・ロック、ドリーミー、ガレージ・サイケ、ファズ・ポップなどを取り入れ、サイケデリックという一つのジャンルにとらわれない魅力満載な作品となっている。
自由多彩な音を操る才能溢れた彼らのライブは、変則的で痺れるようなヘヴィーなギターリフとシャウトが繰り広げられたかと思うと、次はグルーヴィーで美しいメロディとボーカルで観客をうっとりさせる。その次は縦横無尽なベースラインとダイナミックなドラムがサウンドの核となり、彩度の高い即興を交えたジャムセッションでフロアを盛大に盛り上げる。
バンドメンバーはマット(G, Vo)、ダルトン(Vo, B)、ジェイク(G, Key, Vo)、ハヴィ(G, Vo)、ウェズリー(Dr)。アメリカの人気ドラマ『ストレンジャー・シングス』に出演しているジョー・キーリーが在籍していたが、俳優業の契約によりしばらくの間バンド活動に参加していない。ジョー抜きで活動を続ける彼らは、全米&ヨーロッパで数多くのライブをこなし、アメリカの主要フェスにも出演する飛ぶ鳥を落とす勢いのバンドである(ミュージックビデオ「Ralphie」ではジョーがフィーチャーされているので要チェック)。2019年秋に米ロサンゼルスで行われた公演には、ラストソングでジョーがサプライズで参加し、同じく飛び入りで参加してツアーメイトのツイン・ピークス(シカゴ出身のインディ・ロック・バンド)のケイジャンと共に「Dirtpicker」を演奏し会場を大いに沸かせた。そんな彼らのインタビューをお届けする。
――バンド結成に至るまでの経緯を簡単に教えてもらえますか?
ポスト・アニマル:ダルトンとマットはイリノイ州のダンビルで音楽を一緒にプレイして育ったんだ。ウェスはナッシュビル、ハヴィはミネアポリス、ジェイクはマディソン、ジョーはニューベリーポートの出身で、僕らは学校や仕事やバンド、共通の友人を介して色んな繋がりで知り合ったんだけど、みんな音楽の好みが共通するものがあったり、一緒にプレイしたり、作詞作曲をしたりしているうちに、いつしかそれが僕らを結びつけたんだと思う。そんな僕らは特に、エレクトリック・ライト・オーケストラ、ブラック・サバス、スティーヴィー・ワンダー、ピンク・フロイドらの音楽に影響を受けたんだ。
――ビートルズのようにメンバーのほとんどがボーカルをやりますね。結成時からそうだったのでしょうか? また、曲によって誰が歌うかはどう決めていますか?
ポスト・アニマル:始めの頃はダルトンがほとんどを歌ってたんだけど、時間が経つにつれ、音も進化するにつれてみんなのボーカルを取り入れ始めたんだ。普通は曲を書いた人がその曲を歌ったりするけど、僕らは作曲者以外がパートを歌ったり、インストゥルメンタルの曲を歌ったりするんだ。曲によって使い分けるというか、その曲ごとに合った人が歌ってる。
――ステージでのジャムセッションは毎回とても最高にカッコいいと思います。ある程度決まったジャムはありますか? それともその場の雰囲気でアレンジしていますか?
ポスト・アニマル:ありがとう! 基本的には前もってかなり決めてあるんだけど、僕らはライブで個々のパートのソロを常に改善したり、即興で演奏したりする。自分自身にとっても、また互いにも刺激的でワクワクするのが好きなんだ。
――参考にしてるジャム・バンドはありますか?
ポスト・アニマル:最近は、特にジャム・バンドが好きになってきてる。グレイトフル・デッドは昔から尊敬してる。最近では全く新しいコンテンポラリー・ジャム・バンドを聴いてる。魅力的でハイレベルの演奏のライブ・アルバムを聴くことを楽しんでるよ。そして僕らも個人的にもバンドとしても腕を上げて、その世界に踏み入れたいと思ってる。
――世間の多くの人がポスト・アニマルをサイケデリック・ロック・バンドとして認識していることについてどう思いますか?
ポスト・アニマル:他のサイケデリック・バンドがそうであるように、僕らもジャンルにとらわれず色々なタイプの音楽や映画音楽の世界を好むバンドだったんだけど、成長するにつれてもっと音楽の幅を拡大して探究したいと思うようになった。何はともあれ、僕らは常にポップ・バンドもしくはプログレッシブ・バンドとして自然に新しいことを取り入れてると思う。サイケデリックという型にとらわれず、その時その時で最高な音を作り出すことに誇りを持っているんだ。とは言え、現代のサイケデリック・ロック・バンドの音楽を楽しんでるよ! 僕らのお気に入りのバンドのひとつにポンド(オーストラリア発サイケデリック・ロック・バンド)がいるんだけど、彼らが過去の音を(ステージなどで)実験的な感じでどのように変化していくかをオープンにしてるところが好きな理由でもあるんだ。
――ファースト・アルバムを出してから、アメリカ&ヨーロッパ・ツアーを廻ったり、【ボナルー・フェスティバル】や【Desert Daze】のようなアメリカのメジャー・フェスに出演したりと、めまぐるしい数年間だったと思いますが、バンドとして成長したことや、変わったことなどはありますか? また印象に残る出来事もあったら教えてください。
ポスト・アニマル:とても充実してるよ! ヨーロッパは素晴らしかったし、アメリカ・ツアーも特にね。出演したフェスはどのフェスもプレイすることが夢だった。劇的に変わったことはないけど、今後に繋がる色々な機会も得てるんだ。バンドとしての結束も更に強くなったし野望も大きくなったよね。ここ数年での成果は色々あって、一つはセカンド・アルバムを作ることだったんだけど、時間と能力を可能な限り費やして今までで最高のものを作ることが出来たんだ。そのことを誇りに思う。
――シカゴのミュージックシーンについて、教えてもらえますか?
ポスト・アニマル:僕らはシカゴで生まれ育ったわけじゃないから、シカゴについて明確には語れないけど、20代の初めにシカゴに移り住んだ僕らが言えるのは、シカゴという街はミュージシャンを目指す人にとって、とても協力的で刺激的な場所だってことだよ。多くのミュージシャンがプレイするハウスショウに出ることはとても簡単だし、そこでより多くの音楽関係者に出会うことができる。これって最適な方法なんじゃないかな。それに、シカゴでは大きなバンドが小さなバンドをサポートして大きな会場でプレイする機会を与えてくれるんだ。ツイン・ピークスが良い例なんだけど、彼らはいつも僕らを含めシカゴの若手のバンドをツアーの前座として連れてってくれるんだ。彼らのサポートがあったからこそ、今の僕らがあるんだ。
――あなた達は全員、これからもシカゴを拠点に活動を続けていきますか? 誰か違う都市に移住、もしくはその予定がありますか?
ポスト・アニマル:マットだけシカゴに住んでいないんだけど、今の時点では僕らはシカゴから離れる予定はないよ。
――先ほど、お話にも出てきたツイン・ピークスとは、とても仲が良いですよね。特にケイジャンとは一緒にコラムというバンドとして「II」という曲も発表していますね。
ポスト・アニマル:僕らはこの1年ほど実験的に共作することに専念してきたんだ。彼らは僕らに影響を与えてくれてミュージシャンとしても向上させてくれた。そしてお互いのパフォーマンスが可能な限りエネルギッシュであることがわかったんだ。僕ら両バンドはライブでジャムセッションをすることでも知られてるけど、無意識のうちに互いにそれを激励しあってるように思う。どちらもバンドとして成熟し始めていて、より思慮深く時代を越えたアプローチを試して、僕らが発信する音楽の全てを共鳴することを確実にしようとしてるんだ。
――シカゴのオススメのバンドはいますか?
ポスト・アニマル:OHMME(女性インディー・フォーク・デュオ)とNnamdi Ogbonnaya(マルチ・インストゥルメンタル・シンガーソングライター)はおススメ。
――ツイン・ピークスとOHMMEと行ったUSツアーはどうでしたか?
ポスト・アニマル:僕らの周りにいる素晴らしい人たちのグループとのツアーは最高に楽しかったよ。それにOHMMEとツイン・ピークスは長年お互いを知ってるから、彼らと一緒にやれてとてもハッピーだった。
――そのツアーの終盤のロサンゼルス公演で、ジョー・キーリーがツイン・ピークスのケイジャンとサプライズで登場して、「Dirtpicker」を一緒にプレイしましたね。かねてから予定していたのですか?
ポスト・アニマル:前日にやることにしたんだ。サウンドチェックで少しだけやったけど、(入念なことはしなくとも)僕らには長い歴史があるからね!
――2020年2月にリリース予定のニュー・アルバム『Forward Motion Godyssey』について聞かせてください。
ポスト・アニマル:“Godyssey”というワードについては、みんなそれぞれに解釈してもらえたらと思ってる。世界中の誰もが個々にGodysseyを経験してるよ。アルバムの曲については、全ての曲はメンバー全員の集合意識から作られたような、バンド全体の物語の一部を表現するものだと思う。音楽的にどの曲も多様性で広いジャンルで同じ曲は2つとない、メンバー全員がアルバムのためにそうしたんじゃなくて、潜在意識的に作曲したんだ。そこには確かにスペクトルが存在する。それは僕らが同じような体験をして、人生の新しい段階において様々な物事を対処することを一緒に学んでるし、体験してるから、個々に作ったものが集合体のような統一された構造に繋がるんだ。これまで僕らが共に経験してきたことは冒険みたいで、その道中で気づいたことや、バンドとして進むに連れて成長することへの不安的な感情や混乱を、互いに励まし合うことでその経験がさらに僕らを成長させるってことがテーマになってる。アルバムのアートワークを手がけてくれたのは、長年の友人のオリビア・オヤマダで、彼女は今までのアルバムやEP全てのアートワークを担当してくれてる。彼女のような素晴らしいアーティストと仕事ができて光栄に思う。
――最後に、2020年の抱負を教えてください。
ポスト・アニマル:出来るだけたくさんの場所へ行って多くの人の前で演奏したい。そして日本に行くことを実現できたらな。そしたらまさに夢が叶うよ!
Text & photos by ERINA UEMURA
Translation by Alan Rice
◎リリース情報
ニュー・アルバム『Forward Motion Godyssey』(輸入盤)
2020/2/29 RELEASE(予定)
※2月14日より各音楽配信サービスで配信開始
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