2019/12/23
徳永英明が2019年12月14日と15日にビルボードライブ東京、21日と22日にビルボードライブ大阪に、ともに初出演。本稿ではその15日東京公演の1stステージをレポートする。
【徳永英明ジャズライブ】。2019年7月に発売された、ジャズアレンジのアルバム『太陽がいっぱい Plein Soleil ~セルフカヴァー・ベストⅡ~』を経て開催された本公演のタイトルは潔いまでにシンプルだが、そのライブもまた、率直に歌の魅力が伝わってくるシンプルなものだった。
一足先にステージに上がったバンドが演奏する映画『タクシードライバー』のテーマをバックに、会場の特徴である客席を縫うように配置された階段を、徳永が下ってきた時、客席からは思わず「近い!」という歓声が上がる。だが、そんな一瞬のふためきも直ぐに落ち着き、エレガントなムードが場内を包む。この日、徳永が身を包むのは、上下揃いのブラックのスーツだ。
ライブ一曲目は、『太陽がいっぱい』のオープニング曲でもあった「夢の続き」。一気にテンポを上げたバンドの演奏とミラーボールの煌きとともに、徳永の歌もしだいに熱量を上げていく。そして、歌のラストでソウルフルなシャウトを、まずは聴かせ、歌い手としての唯一無二の器量で観客のハートをぐっととらえる。続く2曲目は、こちらもアルバム2曲目から「FRIENDS」。 “静けさ”とも形容したくなる、演奏のダイナミクスが絶妙にコントロールされた独特の緊張感の中で、ドラムのリムショットやギターのリフなど、ちょっとした変化が非常にドラマチックに響く。
この日のバンドの様子は、ある意味で“小さなオーケストラ”とも言えたかも知れない。続く最初のMCを、まずはメンバーの紹介から始めたことからも、徳永自身がこのメンバーで演奏できることを楽しんでいることが伝わってくるようだった。その後のMCで、キーボード奏者で、今回のアレンジを一手に担ったという坂本昌之を、「坂本先生」と冗談交じりに紹介し、賞賛した場面も、どこか心温まるものだった。
MCの後、演奏は、徳永のとろけるようなファルセットと、グルーヴィーな演奏が魅力の「MYKONOS」から再開。この曲の演奏から、徳永自身も音楽に身を委ねるように体を揺らす場面が増えていく。スウィングジャズ調のアレンジが施された「輝きながら・・・」では、ウォーキング・ベースのラインに合わせて、ピアノの低音部を弾くように左手を動かす徳永。そんな一挙手一投足に影響されて、観客の心もまたほぐれていくようだった。
中盤に披露された「風のエオリア」は、この日のハイライトの一曲。歌唱後、徳永は同曲の制作後に、その名前の由来であるギリシャに旅行に行った時のエピソードを披露。同地の遺跡である“ポセイドン神殿”に行った時のことを振り返った。
徳永の囁くような決め台詞に黄色い歓声の上がった「Wednesday Moon」や、ピアノやホーン隊が一体となって、ゆったりと大きなメロディとグルーヴを奏でる「夢を信じて」の夢見心地な感触も、クラブ空間で彼の演奏を愉しむ贅沢さを再確認させてくれた。また「いつか、ザ・ビートルズのジャズ・カヴァー・アルバムを作りたい」という野望とともに披露されたザ・ビートルズ「MICHELLE」のカヴァーも、潤いを湛えた徳永の歌声にぴったりの選曲。あっという間に、時間が過ぎていく。
終盤、代表曲の「レイニー ブルー」で、体を折り曲げて、この日一番の力強いフェイクを聴かせた彼。その後のMCでは、「3年くらい前に、『Nostalgia』の頃のDVDを観直して、〈あの頃は本当に力いっぱい歌っていたな、こういう所に戻りたいな〉と思って活動してきました。今回、ようやくその辺りに戻れた気がします」と、自身の体調が回復している実感をコメント。さらに「来年のツアーに、ぜひ期待してください」と語り、会場から大きな歓声が上がった。
アンコールで最後に披露したのはエディット・ピアフの「愛の讃歌」。ステージバックのカーテンが開き、窓の外に浮かび上がった六本木の夜景とイルミネーションをバックに、燃え上がるようなブラス・ロック風のアレンジに乗せて、絶唱と呼ぶに相応しい力強い歌声を聴かせた徳永。その歌の力を改めて体感する、初のビルボードライブのステージに相応しい、力強い幕引きとなった。
Photo:奥本昭久(Akihisa Okumoto)
◎公演情報
【徳永英明ジャズライブ】※いずれも終了
ビルボードライブ東京
2019年12月14日(土)~12月15日(日)
ビルボードライブ大阪
2019年12月21日(土)~12月22日(日)
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