2012/11/07
ここ数年、先の見えないCD不況の最中にあって、今なお好調なセールスを叩き出しているカバーアルバム。様々なミュージシャンがヒットを飛ばす中、今年の11月に女性シンガーによるカバー作品が一挙にリリースされることになる。
昭和の時代から定期的な周期でブームが訪れているカバーソングだが、近年はシリーズ累計では実に500万枚をも突破した徳永英明の『VOCALIST』に始まり、2009年に大ヒットした「また君に恋してる」を収録した坂本冬美のカバーアルバム。翌10年は稲垣潤一やASKA、倖田來未にコブクロと名立たるミュージシャンが次々にカバーアルバムを発表した。
<ファンの願いを形にしたJUJUのダブルミリオン超え>
また、何といっても同年はJUJU『Request』の存在が大きいだろう。タイトル通りファンからのリクエストを基にJ-POPの名曲が選出されたこのカバーアルバムで、彼女は自身初のオリコン1位に。女性シンガーのカバーアルバムとしては史上初の2週連続1位も獲得し、累計ではダブルミリオンを突破した。
このヒットが決定打となり、シーンで確たる存在感を示し始めた彼女は、翌11年にジャズの名曲をカバーしたアルバム『DELICIOUS』をリリース。セールスこそ前述の『Request』に及ばなかったが、自身のルーツを紹介する作風は音楽ファンから絶賛を集め、彼女は名実共にトップアーティストとなっていった。
そんなJUJUのブレイクを機に、カバーアルバムブームはさらに加速する。2011年には由紀さおりや小田和正にMISIAとトップミュージシャンらが相次いでカバーアルバムを発表。スピッツが既存のカップリング曲と合わせたアルバムをリリースすれば、鈴木雅之は震災の影響もあってか“2011年に歌うべきうた”をセレクトしたカバーにチャレンジした。
<男性曲を英語詞でカバー BENIのロングヒット>
そして今年もアンジェラ・アキ、一青窈らが自らのルーツを辿るカバーアルバムをとブームは続いていくが、中でも特筆すべきは春に発表されたBENI『COVERS』だろう。配信シーンではヒット作を連発し、オリジナルアルバムも堅調なセールスを記録していた彼女。男性ボーカルの楽曲をカバーした同作では、全曲英語詞に翻訳して歌唱することに挑戦しているのだ。
アメリカ人の父を持ち、幼少期より両国を股にかけてきた彼女にとって、英語は大きなルーツの1つとなる。名立たる男性ボーカルの名曲を、女性ボーカルが英語詞で歌うというアプローチはリスナーから好評価を獲得し、同作は通算8週もの間TOP10にランクインするロングヒットに。累計売上は30万枚超え、やはり自身の記録を更新するセールスとなった。
<JUJU、BENIに続け? カバーで勝負する歌姫たち>
駆け足ながら近年のカバーブームを紹介してきたが、2012年秋は女性シンガーによるカバーアルバムが目白押しだ。10月末に柴田淳が70年代の日本の名曲を歌う『COVER 70's』をリリースしたが、その翌週に当たる11月7日には前述のBENIがカバーアルバム第2弾を。さらに同日、実力派として売り出し中の歌姫 Ms.OOJAも初のカバー作をリリースする。
今年の春にドラマ『恋愛ニート~忘れた恋のはじめ方~』主題歌に起用された「Be...」で、レコチョク上半期ダウンロードランキングの1位を獲得した彼女。今回の『WOMAN -Love Song Covers-』ではJUJUがカバーした椎名林檎「ギブス」などにもトライしており、90年代後半から2000年代の女性ボーカル曲をセレクトする直球スタイルで、折り紙付きの歌声を響かせることになる。
他にも、ファッションモデルとして活躍するAHN MIKAのデビューを飾るアコースティック形式のカバーアルバム『Bittersweet Memories』。かつて配信シーンを席巻した青山テルマが洋楽カバーに挑戦する『MY COVERS』。抜群のポテンシャルを持つアイドル 吉川友の『ボカリスト?』などなど、今年の秋は正にカバーづくしだ。JUJU、BENIの大ヒットに続き、カバー歌姫による“新御三家”は誕生となるのか。今後の動向に注目しよう。
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