2019/11/07
Eveが新曲「レーゾンデートル」の配信を記念し、10月30日に無料招待ライブ【CANDY】を東京・WWW Xで開催した。
今回は全部で約1時間というあっという間の公演。それもあってかEveは矢継ぎ早にどんどんと楽曲を投下していく。早速「レーゾンデートル」からスタートすると、「ナンセンス文学」「アウトサイダー」とテンポの速いアッパーな楽曲を披露。会場のムードを序盤からどんどん上げていくが、そんな気持ちの盛り上がりの中、特別な演出がない今回の公演で、シンプルにバンド編成で楽曲を披露するEveのアーティストとしての力強さも同時に感じられた。それは、2019年の3月から4月にかけて行われたツアー【2019 春Tour『おとぎ』】とは違う角度で届けられたEveの魅力だろう。ちなみに、本公演は【2019 春Tour『おとぎ』】以降、初のワンマンライブである。
しかし、「闇夜」や「君に世界」ではアッパーな雰囲気から一転し、Eveの歌が穏やかさと共に少し暗さを持って響いていく。特にライブ初披露の「闇夜」では、「ああいつだって 愚かさに苛まれているの」や「ああ君だって 寂しさと哀を抱いて眠るの」の一節が印象的な響きを持っていた。名前のない漠然とした不安や、気づかぬうちに何かを失ってしまったような喪失感を胸の内に持ち、それに対して何とか折り合いをつけたり拒絶反応を示したりする、そのような人たちのことを考えずにはいられなかった。ハロウィン前日、渋谷のWWW Xに来た人たちの中には、日常の生活でふとこのような気持ちになる人がいたかもしれない。最後の一節である「取り戻すの」が満員のWWW Xに向けて投げかけられたとき、Eveの声はどのように彼らの心の内でこだましたのだろうか。
「トーキョーゲットー」以降は、序盤のような盛り上がりが再び沸き起こり、「ドラマツルギー」では最後のサビ前で、「ずっと僕は 何者にもなれないで」の一節をオーディエンスが歌い上げた。文章としてはネガティブなこの言葉を、テンポが速く軽やかな音色が鳴り響く中で歌い上げると、決してネガティブな言葉のように聴こえないから不思議だ。本編最後の「バウムクーヘンエンド」を披露する前に、「すごい楽しい時間が作れているような感じがします」とEveは言ったが、その楽しい時間は、表と裏、有と無を混ぜ込んだ、その上に成り立つ高揚であり、それは「バウムクーヘンエンド」が終わるまで続いた。
規則正しいリズムの手拍子と掛け声によるアンコールによって再登場したEve。「こんなにお客さんが近くて、みんなの顔が見れちゃうぐらいの近さは久しぶりで、変な緊張をしてました。本当にうれしいです、こういう機会。ありがとうございます」と、今回の公演に対する感謝の言葉を述べた。そして、2020年2月12日にニューアルバム『Smile』をリリースすることを初めて発表すると、大きな拍手が起こった。そして「もう1曲やっていいですか」と言って披露したのは、「お気に召すまま」。ダンサブルな曲調に軽やかなギター、そしてオーディエンスの手拍子も合わさって、約1時間のあっという間の公演の最後に決定的なクライマックスを演出し、【CANDY】は終了した。
Text by Akihiro Ota
Photo by ヤオタケシ
◎公演情報
【CANDY】
2019年10月30日(水)
東京・WWW X
<セットリスト>
1. レーゾンデートル
2. ナンセンス文学
3. アウトサイダー
4. sister
5. 闇夜
6. 君に世界
7. トーキョーゲットー
8. ドラマツルギー
9. ラストダンス
10. バウムクーヘンエンド
-ENCORE-
1. お気に召すまま
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