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2012/11/05

オルタナ・ファン狂乱の一日

 初日が大盛況だった【Hostess Club Weekender】の2日目。最初に登場したのは英ロンドン出身の4人組ロック・バンド、クロック・オペラ。キツネからのシングルリリースやエヴリシング・エヴリシング、ファイストなどのリミックスを手掛けたこともあって、観客たちは興味津津な様子。キーボードの繰り返すフレーズ、ベースの生み出すグルーヴ、ドラムの刻む確かなリズムに熱の籠ったギターでしっかりとメロディを支えテンションを上げていく。電子音の音色も良いとし、メンバー全員でカウベルを鳴らすパフォーマンスもセンスあるな思える実力バンドだ。こういう新しいバンドの素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるのもこのイベントの魅力の一つだろう。

 続いて登場したのは、2011年のサマソニで初来日し、話題となったカリフォルニアの3人組、ポップ・エトセトラ。足元から腹にくる太いのになんともゆるいサウンドは会場をじわじわと幸せな空気で包んでいく。改名前のモーニングベンダーズのネオ・サーフっぽさは薄れ、そこに様々なジャンルを取り込んだキラキラした音たちが実にキャッチーで、観客の心を掴む。皆で大合唱するにぴったりなメロディーを持ってくる感じは好かれないはずがない。これが、彼らの映し出すカルフォルニアの空気を感じたパフォーマンスだった。

 そして、エフタークラングのパフォーマンスはカルフォルニアの空気を一気に、湿度の高いデンマークへと連れ去った。メインの3人を中心に、ギターを省いたバンド編成から放たれる“ザ・音響系”サウンドと浮遊感のあるコーラスは湿度が高いというよりも海中を漂っているような感覚にされる。多様に変化する音の達はバラエティに富み、遊び心もたっぷりだ。デュエット的に歌、コーラスが積み重なっていく様子は美しいの一言。キュートな振り付けを教えてくれたりとパフォーマンスでも遊び心も忘れておらず、曲が終わる度にペコリとお辞儀する様は愛おしくすらなった。

 凄まじいパフォーマンスが続く中、ローカル・ネイティヴスもこれまた圧巻。ボーカル、ギター、キーボードとパートをころころ変わり、新旧の楽曲をドラマチックに繰り広げる。「中低域はオレに任せろ!」と言わんばかりにドラムがタムを乱れ打ち、更に、「まだイケる!」とキーボードを担当するメンバーは横にセットしてあるタムを叩きまくる。シンプルでズンズンとカラダを揺らすグルーブは楽曲のリズムを、観客のテンションを加速させる。静から動、冷から熱の緩急のつけかたが秀逸で、ステレオのヴォリュームつまみをグイっと上げるような感覚はアナログで、身体にスムーズに入り込んできて心地よい。明日はアコースティック・セットでのシークレット・ライブがあるんだとか。観たかったな。

 最後はオルタナティヴ・ロックのカリスマ、サーストン・ムーアが登場。今回は新たに結成したチェルシー・ライト・ムーヴィングのメンバーであるサマラ・ルベルスキー(B)、キース・ウッド(G)とジョン・モノリー(Dr)らとオンステージ。噴き出したようなフィードバックにファジーなノイズ応酬のサーストンのギターの音は聴覚から全身を麻痺させ、一気に感覚を最大限まで呼び覚ます。ギターの弦をかき鳴らしている音ではなく、触り、揺らし、肉体と一体化しているようだった。サマラもベースとバイオリンを曲ごとに持ちかえ、胆の据わった演奏を繰り出し、キースもサーストンを支えながらのノイズギターをかき鳴らす。屋台骨となるジョンのドラムはズシンと響く。演奏もやりやすそうで、実にノビノビとした轟音が会場を埋め尽くす。客席にダイブしたサーストンのギター・ストラップが紛失し、客席から救出してもらうハプニングがありながらも、狂乱のステージはダブル・アンコールの後に終了となった。しかし、エフェクターのペダルを踏んだだけで、興奮させてしまうギタリストはレベルが違う。

 3回目にして既に音楽ファンに定着している【Hostess Club Weekender】。毎回これだけクオリティの高いバンドを集めてイベントをやっているのだから当然と言えば当然なのだが、それだけに次回のイベントに求められる期待値のハードルも上がるだろう。そして、今回も期待値の上をいく内容だった。だから来年開催が決定している同イベントも素晴らしい内容になるに違いない。現時点で発表されているのはヴァンパイア・ウイークエンドにラ・ラ・ライオットとウルトライスタの3組。来年2月が待ち遠しい。

Photo:古溪 一道(コケイ カズミチ)

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