2019/10/27 12:00
今週のHot100は、圧倒的な強さでヒゲダンことOfficial髭男dismがワンツー・フィニッシュを決めた。首位が5月リリースのシングル「Pretender」、2位が10月9日リリースのアルバム『Traveler』のオープニング・ナンバー「イエスタデイ」となっている。他にも、「宿命」(4位)、「ノーダウト」(17位)、「ビンテージ」(26位)、「115万キロのフィルム」(30位)、「Stand By You」(34位)とトップ50に7曲ランクイン。まさにヒゲダン一色といってもいい盛り上がりを見せている。おそらく日本で彼らの音楽を耳にしていない人はかなりレアな存在だろう。
とりわけ、首位の「Pretender」の強さは圧倒的だ(【表1】)。映画主題歌として発表されたこの曲は、5月のリリース以降20週以上に渡ってトップ10に君臨してきた。Hot100においては、実は今週が初の首位であるが、ストリーミング再生に関しては23週連続1位の記録を更新中。YouTubeのPV再生回数も8千万回を超えており、1億超えも夢ではなくなってきた。また。侮れないのがカラオケのランキングで、こちらも7月以降ずっとベスト3に入り続けている。他にも、ダウンロードやルックアップ(PCによるCD読み取り数)などのポイントも衰える兆しを見せず、まだまだロングセールスは続いていくことが予想される。
まさに無敵といえる「Pretender」だが、弱点がないわけではない。というのも、フィジカルのCDは驚くほどセールスが伸びていないのだ。CDセールスに関しては、最高位はなんと5月リリース時の9位。Hot100で初の首位を取った今週もCDに限っては圏外という状況である。アルバム『Traveler』こそ初週では順調にセールスにおいても首位となったが、それでも実売数は86,159枚と、10万枚に届いていない。以前のようにCD売上の数だけ見ていれば、中ヒットというレベルだろう。それでも、一般的に見れば彼らが大ヒット・アーティストである印象は覆らない。
裏を返せば、ヒゲダンはストリーミングとYouTubeといったフロウ型の聴かれ方がメインであり、コアファンよりも多数のグレーユーザーによって支えられていると言える。これは、あいみょんなどにも通じるが、昨今のヒットアーティストの傾向のひとつでもある。ジャニーズや坂道系のアイドルグループのようにコアファンをコツコツと広げていくやり方とは真逆で、ファンも非常にライトだ。だから、違うアーティストや新鮮なヒット曲が出てくると離れていく可能性も否めないし、そういった意味ではこのタイプのヒットは危うい。ただ、それでもアーティストとしての魅力やライヴパフォーマンスのクオリティを一定に保っていれば、人気は長く続いていく。ヒゲダンはそのあたりも難なくクリアしており、その点に関してはそれほど心配はいらないかもしれない。
ただ、それでも来年の初夏までびっしりと組まれているツアーはとても重要だ。ここで期待以上のパフォーマンスを見せれば、間違いなくヒゲダンの評価はさらに上がるだろうし、その人気はもっと長く継続していくことだろう。実はストリーミング型アーティストほどライヴは重要だ。彼らのようなアーティストにとっては、ライヴこそコアファンをつなぎとめ、広げていくツールといえるのかもしれない。Text:栗本斉
栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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