2019/10/07
「ルーツ」となったR&B/ファンク
カリフォルニア北部のベイエリアに位置するオークランドは、港湾施設や工場が立ち並び、対岸のサンフランシスコが白人中心の街であるのと対照的に全米有数の黒人街として発展し続けてきた。ブルースの大御所ジョン・リー・フッカー、スライ・ストーン、トニー・トニー・トニー、アン・ヴォーグといった錚々たる黒人ミュージシャンがこの街の出身である。そんなオークランドが生んだ最高のファンク・バンドが1968年に結成、1970年にレコードデビューしたタワー・オブ・パワーである。
彼らがユニークなのは大半がヒスパニック系白人だったこと。しかし彼らにとってR&B やファンクは憧れの対象ではなく、物心ついた頃から街に流れていた<ルーツ・ミュージック>だった。その証拠にリーダーのエミリオ・カスティーヨ(テナー・サックス)とスティーブン・ドック・クプカ(バリトン・サックス)が中心となって作る自作曲も、デヴィッド・ガリヴァルディ(ドラムス)の叩き出すビートもファンキーそのもの。グループは人種を超えたリスナーに受け入られ、ゴールドディスクに輝いた1973年作『Tower Of Power』から1975年発表の『In The Slot』にかけてその活動はひとつのピークに達したのだった。
「半世紀」を集約した最新アルバム
そんな彼らにとって、70年代後半以降のディスコ・サウンドやドラムマシーンの流行は災難以外の何物でもなかっただろう。しかしほかのファンク・バンドがホーン隊をクビにして音楽性を変えていく中、彼らは同郷の後輩ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースのサポートを務めるなどして、大所帯を守り続けた。この努力が功を奏した。ライブ・パフォーマンスの凄まじさで彼らは再び評価されるようになったのだから。誰でもパソコンで音楽を作れてしまう時代に、生身の人間が紡ぎ出す濃厚なグルーヴが新鮮に受け取られたのだろう、世界中のライブ会場に若いファンが詰めかけるようになったのだ。
活動50周年を迎えた2018年には久しぶりのオリジナル・アルバム『Soul Side Of Town』を発表。15年にわたって書きためられた楽曲から選ばれただけあって、どれも練られたナンバーばかりだ。タイトル曲や「Do You Like That?」や「Stop」はライブセットにも組み入れられている。
それにしても活動50年目のバンドとは思えないフレッシュさはどうだ。驚きを通り越して恐怖すら感じてしまう。そしてそれ以上に彼らが恐ろしいのは、この凄まじい演奏をライブでも聴けてしまうことなのだ。
Text:長谷川町蔵
◎公演情報
【タワー・オブ・パワー】
<ビルボードライブ大阪>
2019年11月20日(水)、11月21日(木)
1stステージ開場17:30/開演18:30
2ndステージ開場20:30/開演21:30
<ビルボードライブ東京>
2019年11月23日(土・祝)、11月24日(日)
1stステージ開場15:30/開演16:30
2ndステージ開場18:30/開演19:30
2019年11月25日(月)、11月26日(火)
1stステージ開場17:30/開演18:30
2ndステージ開場20:30/開演21:30
詳細:http://www.billboard-live.com/
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