2019/07/12
華々しいデビュー40周年イヤーに【WOWOW presentsサザンオールスターズLIVE TOUR 2019「“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!」supported by 三ツ矢サイダー】を開催し、日本中に愛と感謝の音楽大エンターテインメントショーを届けてきたサザンオールスターズ。その千秋楽公演が6月16日 東京ドームにて開催された。
<序盤から日本の音楽史そのものとも言えるキラーチューンの畳み掛け>
プレミアムアルバム『海のOh, Yeah!!』大ヒットをはじめ、13年ぶりの野外フェス出演となった【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018】での名アクト、第69回NHK紅白歌合戦での北島三郎や松任谷由実をも巻き込んだパフォーマンス等々、デビュー40周年イヤーに相応しい大活躍ぶりを見せてきたサザン。そのすべてにファンサービスが溢れており、これぞ日本を代表する国民的バンド!と感じさせる矜持を見せ続けてくれていたが、今回の全国ツアーでもその姿勢は一貫されていた。
昭和、平成、令和と三つの時代をぶち抜いて日本人の日常に寄り添ってきたバンドらしく、日本史上最大級の祭典になるであろう東京オリンピックを翌年に控えたタイミングで「東京VICTORY」からライブをスタートし、現時点での最新曲で40周年イヤーの夏を彩った「壮年JUMP」、原由子のピアノイントロが鳴った瞬間に50000人の感涙を誘うほどの日本人のアンセムとなった「希望の轍」と、序盤から日本の音楽史そのものとも言えるキラーチューンの畳み掛けで東京ドームを揺らし続ける。
<刺激的な音楽コミュニケーションを交わしていかんとする姿勢>
また、そんな誰もが知る名曲オンパレードの一方、ライブ中盤では「Moon Light Lover」(1996年『Young Love』収録)「赤い炎の女」(1983年『綺麗』収録)「古戦場で濡れん坊は昭和のHero」(1985年『KAMAKURA』収録)「JAPANEGGAE」(1984年『人気者で行こう』収録)等々知る人ぞ知るサザンのアルバム曲ばかりを連発。さすがに「ゆけ!! 力道山」(1993年『クリスマス・ラブ(涙のあとには白い雪が降る)』カップリング曲)を力道山の映像バックに披露したときは「今、このカード切る?」と思わず興奮してしまったが、イチ音楽ファンとしてとても有意義な時間帯となった。
もちろん、40周年イヤーの最後を飾る公演ということで、全編知っている曲ばかりのセットリストを想定していたオーディエンスにとっては「あれ?」となるマニアックな時間帯もあったかもしれないが(詳しくは文末のセットリストをご覧下さい)、カオティックだったりプログレッシヴだったりする楽曲群の畳み掛けは、テレビから流れてくる楽曲だけが音楽じゃないというアンチテーゼ的なメッセージとも受け取れたし、サザンがどれだけ多種多様な音楽を体現してきたバンドであるかの証明とも受け取れたし、その多種多様な音楽の楽しみ方をレクチャーする啓蒙とも受け取れたし、シンプルに彼らが演奏していて胸躍るナンバーの詰め合わせとも受け取れたが、いずれにしても国民的と称されるバンドが一切守りに入らず攻めの一手で押し切った中盤戦にこそ、ファンと40周年を超えてもなお刺激的な音楽コミュニケーションを交わしていかんとする、サザンの音楽家としてのアティチュード及びファンサービスを強く実感した。
<深く沁み込む哀愁と郷愁……新曲「愛はスローにちょっとずつ(仮)」>
そして、本編クライマックスからアンコールにかけては「思い過ごしも恋のうち」「シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA」「ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)」「マンピーのG★SPOT」「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」「勝手にシンドバット」等々もはや説明不要のヒットナンバーを再び連発。大勢のビキニギャルたちやブリーフを頭にかぶった変態集団(!?)もステージに飛び出し、万人が「これぞサザン!」と大歓喜するエンターテインメントショーを展開していた。
そんなサザンの裏表ぜんぶを体感させてくれた同公演において、最後に改めて特筆したいと思ったポイントがある。それは年齢を重ねれば重ねるほど聴き手の心に深く沁みこんでくる哀愁と郷愁、それを実感させた上で「それでも明日へ向かおう」「それでも生きていこう」と思わせる歌詞と歌の力である。今回のセットリストの中から例を挙げると、アンコールで披露した「栄光の男」における「老いてゆく肉体(からだ)は愛も知らずに満足かい?」と問い掛けながら「終わりなき旅路よ 明日天気にしておくれ」と中年の嘆願を代弁する流れ。オーラスで披露した「旅姿四十周年」における「喜びや夢ばかりじゃない つらい思いさえ ひとりきりじゃ出来ぬことさ」と自らの人生を歌いながら「また逢えるまでは この時を 忘れないでいて」と再会できる未来を示唆する流れ。こうした人間味に溢れ過ぎた歌たちがこの日も幾度となく我々の涙を誘った。
そんなサザンの人間味溢れる楽曲群にひとつ新曲が加わった。今回のツアーで「お客さんと共に熟成させていく曲」として披露された「愛はスローにちょっとずつ(仮)」。この腕を枕に眠る君はもういない。そんな今は隣にいない愛する人を想いながらひとり「もう愛なんていらないさ ぬくもり消せないんだ」と生きていく者の哀愁と郷愁。それを包容力溢れるミディアムバラードに乗せながら、リスナーひとりひとりの人生に寄り添わせていく。サザンに泣けるバラードは数あれど、これほど独り身を切なくもやさしく包み込んでくれる歌には、初めて出逢ったかもしれない。桑田佳祐いわく「今後レコーディングして、何等かの形で発表することになります」とのことなので、このツアーで同曲に泣かされた人も、まだ耳に出来ていないリスナーも、公開された際にはぜひ聴いてもらいたい。
取材&テキスト:平賀哲雄
◎サザンオールスターズ【サザンオールスターズLIVE TOUR 2019「”キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!」】
2019年06月16日(日)東京ドーム セットリスト:
01.東京VICTORY
02.壮年JUMP
03.希望の轍
04.闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて
05.SAUDADE~真冬の蜃気楼~
06.彩~Aja~
07.神の島遥か国
08.青春番外地
09.欲しくて欲しくてたまらない
10.Moon Light Lover
11.赤い炎の女
12.北鎌倉の思い出
13.古戦場で濡れん坊は昭和のHero
14.JAPANEGGE(ジャパネゲエ)
15.女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)
16.慕情
17.愛はスローにちょっとずつ(仮)
18.ゆけ!!力道山
19.CRY 哀 CRY
20.HAIR
21.当って砕けろ
22.東京シャッフル
23.DJ・コービーの伝説
24.わすれじのレイド・バック
25.思い過ごしも恋のうち
26.はっぴいえんど
27.シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA
28.マチルダBABY
29.ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)
30.イエローマン~星の王子様~
31.マンピーのG★SPOT
EN1.I AM YOUR SINGER
EN2.LOVE AFFAIR~秘密のデート~
EN3.栄光の男
EN4.勝手にシンドバッド
EN5.旅姿四十周年
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像