2019/06/21 12:00
【グラミー賞】、【アカデミー賞】、【ゴールデン・グローブ賞】のトリプル受賞を果たした天才プロデューサー/DJ/アーティストのマーク・ロンソンが、4年ぶりの新作『レイト・ナイト・フィーリングス』を2019年6月21日にリリースする。マークの5作目となるニュー・アルバムには、カミラ・カベロやマイリー・サイラス、リッキ・リー、アリシア・キーズなど様々なアーティストが参加している。「僕が今までに作ってきた作品の中で、最も重要な作品」と語るマークが、新作の楽曲制作過程やアーティストとの制作の裏側を語ってくれた。インタビュー前編はこちら
―プロダクションに関しては、あなたのアルバムの中で、最も今のポップ・ミュージックに接近する作品になりましたね。すごくモダンで、メインストリームで鳴っている音に近くて。
マーク・ロンソン(以下マーク):僕もそう思っているよ。シルク・シティでディプロとコラボして、彼に影響された部分も大きいし、今回は若手のプロデューサーたちに大勢参加してもらったからね。中でも、才能豊かなフランス人の兄弟ピカール・ブラザーズは、音をモダンにする上で大きく貢献してくれた。ほかにもJ・ハスとの仕事で知られるJae5や、ジ・エックス・エックスのジェイミーといった人たちだね。僕が思うに、年を取れば取るほどに、僕は古典的なソングライティングに惹かれる傾向にあるんだけど、同時にプロダクションについて学ぶところも多くて、曲が古風になると、最先端のプロダクションを施してバランスをとる必要があると悟ったんだ。じゃないと、1978年に作った曲みたいに聴こえかねないからね(笑)。僕は、今でもクラブやフェスティバルでDJをするのが大好きだし、そういう場所で自分の曲をかけた時に、今っぽく響かせたい。だから今回は間違いなく、今の時代に即した音になるよう最大限に努力したよ。
―その一方で、相変わらず生楽器をふんだんに使っていて、そこはあなたの作品に欠かせない要素ですよね。
マーク:うんうん。僕は、ストリングスや美しいギターのサウンドに耳を撫でられる感覚が大好きなんだ。僕にとって本当に大切なものなんだよ。
―そしてどの曲も、モダンなポップ・ミュージックとして成立していながら、どこかに耳に引っかかる奇妙な要素を含んでいますよね。例えば表題曲「レイト・ナイト・フィーリングス」のアウトロの亡霊みたいな声然り、すごくシネマティックな趣を与えているように感じるんですが、意図的な演出なんでしょうか?
マーク:そういう試みは、恐らく、ヒップホップのトラックを作っていた時代に身に付けたものだと思うんだ。ほら、サンプリング・ネタにするために古いサントラなんかを集めて、70年代の誰も知らないイタリア映画のサントラから、バリー・ホワイトっぽいストリングスの音をピックアップしたり。それに、ケヴィン・パーカー(テーム・インパラ)から学んだことを活かしている部分もある。彼は、サイケデリック・ミュージックの要素をディスコやダンス・ミュージックの世界に持ち込む手腕に長けているよね。僕もあの感覚がすごく好きなんだよ。あと、子供時代にウータン・クランが大好きだったことの影響もありそうだね。ウータンのトラックには、何かしら感覚を逆撫でするような奇妙な要素が含まれていた。それがないと、きっと完璧過ぎて面白みに欠けるんじゃないかな。
―アルバム・タイトルになった“レイト・ナイト・フィーリングス”というフレーズは、表題曲でヴォーカリストを務めるリッキ・リーが思い付いたそうですね。
マーク:うん。リッキがスタジオにやって来た時、表題曲は確か50%くらいできていたんだけど、彼女に手伝ってもらいながらBメロとサビを書いている中で生まれたフレーズなんだよ。どこかドレイクっぽいというか(笑)、今時のエモい響きがあって、すっかり気に入ってしまった。アルバムのフィーリングをすごくうまい具合に総括しているように感じたんだ。それは、独りでベッドで寝ていて、眠りに落ちる20分前くらいのフィーリング。孤独感に苛まれていたり、心の痛みがうずいていたり、或いは欲望に駆られていたり、或いは、すでに半ば夢の世界に入り込んで朦朧としていたりする。リッキがこのフレーズを口にした瞬間に、「ああ、これはアルバム・タイトルになりそうだな」とピンと来たよ。
―そのリッキを始め、今回あなたが選んだヴォーカリストとMCは全員女性です。なぜ女性に限定したんですか?
マーク:女性だけにしようと最初から決めていたわけじゃないんだ。このアルバムを作っている期間中に僕がコラボしていたアーティストが、たまたま女性ばかりでね。男性アーティストがスタジオに出入りしていた記憶がないんだよ(笑)。あと、ソングライターとしてイルシー・ジューバーが多くの曲に貢献してくれたこととも、関係しているんだろうね。イルシーは初期の段階から深く関わっていて、女性である彼女が綴った言葉は、やっぱり女性が歌うべきなんじゃないかと思ったんだ。そして、中には曲を作りながら「こんな感じの人がいいな」と見当を付けることもあるし、ヴォーカリスト選びはケース・バイ・ケースなんだよ。「ナッシング・ブレイクス・ライク・ア・ハート」のマイリー・サイラスの場合は、4年くらい前からコラボを切望していて、彼女に合いそうなアイデアを思い付いた時に、送って打診してみた。そうしたら気に入ってくれて、スタジオでそのアイデアをもとに一緒に曲を仕上げたんだ。「トゥルー・ブルー」のエンジェル・オルセンも然りで、僕は長年のファンだった。それで追い掛け回して、マネージャーをつかまえて説き伏せて、白紙の状態から彼女とあの曲を作り上げたんだよ。
―あなたはこれまでしばしば、「自分の本業はDJであって、ソロ作品を作ることはサイド・プロジェクトでしかない」と発言してきましたよね。このアルバムを作り上げた今、気持ちが変わったのでは?
マーク:そうだね。そう思う。もはやサイド・プロジェクトであるようには感じない。このアルバムは、僕が今までに作ってきた作品の中で、最も重要な作品だという手応えを抱いているよ。これまでとは感覚が違う。何しろここにはエモーショナルな意味で、僕という人間が本当に大きく反映されているからね。過去2年半の僕の人生が、そっくりこのアルバムに凝縮されているように感じるんだ。
訳・新谷洋子
◎リリース情報
アルバム『レイト・ナイト・フィーリングス』
2019/6/21 RELEASE
SICP-6115 2,200円(tax out.)
全13曲+国内盤限定ボーナストラック3曲
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