2019/06/14
90年代の空気をまとう最新R&B
トラップ調などのマシンビートにオートチューンでアクセントを付けたヴォーカルが溶け込むアーバン・ミュージック─ “ トラップ以降” あるいは“ ドレイク以降” となるR&B スタイルが人気となって久しい。人工的な音の響きと抑揚を敢えて抑えた曲調からともするとソウル度を過小評価されそうなスタイルではあるが、近年になってトラックをオーソドックスなコード弾きにでも差し替えてしまえばきっとシンプルなR&Bに聴こえるだろうな、と思わせる曲が増えてきた。90年代のスタイルを取り入れたり、アコースティック楽器のサウンドを持ち込むなど、シーン全体としてサウンドに幅が出て、よりメロディーラインを重視した楽曲やヴォーカルが目立ってきている。
昨年の男性シンガー作品で言うと、たとえばキャッシュ・マネーから発表されたジャクイースのアルバムなどは90年前後の空気を現代的なビートと融合させた好作だった。かたやアンプラグド・アルバムが話題となったPJ モートンのようなオーガニック系のシンガーたちもいるわけで、流行の音は確かにあるものの、一口にR&B と言ってもその表現は実に様々。けれども、それらすべて紛れもない現代のR&Bなのだ。
「歌」で時代を生き抜いてきたJOE
多彩な異なるサウンドやスタイルをまといながらもR&Bとして成立している最大のファクターは、主役である歌そのものにほかならない。このことをキャリアを通じて実践してきたのが、たとえばJOEだ。彼は、90年代初頭にニュー・ジャック・スウィングの残り香漂う『エヴリシング』でデビューし、代名詞となる「オール・ザ・シングス」などの情熱的なバラードはもちろん、ときには「スタッター(リミックス)」のようにアグレッシヴなビートに乗ってミスティカルと共演してみせたり、「サンク・ゴッド・アイ・ファウンド・ユー(メイク・イット・ラスト・リミックス)」で80年代のキース・スウェット・ワールドをマライア・キャリーと濃密にデュエットしたり、あるいはディアンジェロやエリカ・バドゥを育てたキダー・マッセンバーグのサポートを受けてクラシック・ソウル・アルバム『シグネチャー』を発表し、『ブリッジズ』ではブギー・ディスコ趣味を覗かせ、はたまた近作となる『#MYNAMEISJOETHOMAS(マイ・ネーム・イズ・ジョー・トーマス)』ではグッチ・メインをフィーチャーしてトラップ・ビートに挑むといった具合に、この25年あまりの間にヴァラエティー豊かなビートやサウンドをバックに魅力あふれる歌声を響かせてきた。
R&Bの意味と素晴らしさを再確認
こうしていくつかの作品たちを振り返るだけで、彼の間口の広さにあらためて気づかされる。翻ってみれば、時代を超えてJOEが愛されてきた実績は、様々なサウンドにただ彩られるのではなく、それらを着こなすだけの歌力とオリジナリティーを備えていることの証左である。
JOEのステージはそんな彼のシンガーとしての実力が最大限に発揮される。四半世紀を超えてR&Bの最前線で活動する数少ないシンガーである彼のライブは、あらためてR&Bという音楽の意味と素晴らしさを再確認する絶好の機会になりそうだ。もちろん、怒涛のヒットメドレー、名曲のご馳走に舌鼓をうちながら。
Text: 荘治虫
Photo: Masanori Naruse
◎公演情報
【JOE】
ビルボードライブ東京
2019年7月7日(日)
1stステージ 開場15:30 開演16:30
2ndステージ 開場18:30 開演19:30
2019年7月8日(月)- 9日(火)
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30
2019年7月13日(土)
1stステージ 開場15:30 開演16:30
2ndステージ 開場18:30 開演19:30
ビルボードライブ大阪
2019年7月11日(木)
1stステージ 開場17:30 開演18:30
2ndステージ 開場20:30 開演21:30
URL:http://www.billboard-live.com/
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