2019/05/09 12:40
近年ロンドンを中心新たな盛り上がりを見せているUKジャズ・シーンの立役者の一人、カマール・ウィリアムスが現在初来日している。シャバカ・ハッチングス、モーゼス・ボイドといったプレイヤーと共に世界中から注目を集め、アフロビート、ハウス・ミュージック、ヒップホップといった多種多様なジャンルとクロス・オーヴァーしながら、ロンドンを基点に新たなムーブメントを生み出している鬼才マルチ・プレイヤーだ。
「ヘンリー・ウー」という名義でハウス・ミュージック、ブロークン・ビーツなどをプロデュースするビートメイカーとしてクラブ・シーンを中心にキャリアを重ねつつ、2016年には盟友ユセフ・デイズ(Drums)とのジャズ・ユニット「ユセフ・カマール」でアルバム『Black Focus』をリリースし、この作品はイギリスにおける音楽賞「Jazz FM Award 2017」で「Breakthrough Act of the Year」を受賞。昨年にはカマール・ウィリアムス名義では初のアルバム『The Return』をリリースしている。
クラシカルなジャズから、ブロークン・ビーツ、ハウス・ミュージック、ヒップホップまでを包括して昇華したそのサウンドは、早耳のリスナー、モダン・ジャズのファンを中心に日本でも既に注目を集めている。
実はカマールは「ユセフ・カマール」として活動していた2017年4月にビルボードライブにて来日公演を行う予定であったが、諸事情により彼自身の来日はキャンセルとなり、今回が待望の初来日となる。
今ツアーは、アメリカ西海岸を中心に活動する音楽集団「Katalyst」のメンバーでもあるマーロン・スピアーズ(Bass)、グレッグ・ポール(Drums)、さらにJazztronik SOIL&"PIMP"SESSIONSなどにも参加する栗原健(Sax)が参加。しかも今回の大阪公演が日本における初めてのステージとあり、開演前からフロアは期待を帯びた空気が満ちていた。
拍手と歓声の中、にこやかな笑みを浮かべながら、グランドピアノの前に座るカマール。繊細かつ叙情的に奏でられる旋律に、リズムが、サックスの音色が重なっていく。序盤は穏やかに満ち引きを繰り返しながら、次第に大きなうねりを帯び始めるサウンド。グルーヴの波を軽やかに、巧みに操りながら、表情豊かに発展していくアンサンブルに、一気に引き込まれていくオーディエンス。それぞれの音に身を委ねながら、自在に音を繰り出すメンバーの合間にも時折笑みがこぼれる。
MCでメンバーを紹介しながら、何度も「FANTASTIC!」と繰り返したカマール。ルーツも育った土壌も違うメンバーだからこそ生み出し得たグルーヴ、バイヴスに何より彼ら自身が魅了されたのだろう。
あるインタビューでカマールは「俺たちの音楽には、ジャズという言葉だけでは片付けられない様々な要素が詰まっている」と話していた。ジャズを基盤にしつつも、異なるルーツやバックボーンだからこそ生み出し得る音楽の化学変化をぜひ体感して欲しい。
今宵はビルボードライブ東京で公演が行われる。初来日となるこの貴重なタイミング、また東京公演ではSTAX GROOVE (Jazzy Sport)の出演が決定している。お見逃しなく!
Text by 杉本ゆかり
Photo by Kenju Uyama
◎公演情報
【カマール・ウィリアムス】
〈大阪公演〉
2019年5月7日(火)
ビルボードライブ大阪<終了>
〈東京公演〉
2019年5月9日(木)
ビルボードライブ東京
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像