2018/11/30
去る2018年9月2日、新たに始まった自主企画シリーズの第一弾【変数I】を開催し、バンドとしての進化を体現した相対性理論が、約一か月後の10月9日に、国立科学博物館で一夜限りの特別なイベントを実施。46億年に及ぶ地球と生物の歴史を紹介する展示場で、生命と音楽の進化をパフォーマンスに落とし込んでみせた。
このイベント【「わたしは人類」インスタレーション+特別集会「国立科学博物館の相対性理論」】は、9月22日~10月12日まで開催された都市型音楽フェス【RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2018】の一環。会場となった国立科学博物館の地球館 地下2階には、古代生物の骨格標本が並んでおり、この日はスペースの一画がステージとして利用された。
そこで最初に披露されたのは「FLASHBACK」。黒沢清、坂本龍一、ジェフ・ミルズなど、国内外のアーティストや批評家たちからも絶賛された最新アルバム『天声ジングル』の収録曲であり、その中でも一際異彩を放つナンバーだ。いま思えば、ミニマルな曲調の中で壮大な音像を生み出す楽曲構造は、小さな微生物のDNA情報に“人類滅亡後の音楽”を組み込んだ「わたしは人類」への第一歩だったのかもしれない。
一方、さらにその先を行くのが、続く「NEO-FUTURE」である。今年10月にゲリラ配信リリースされた約2年半ぶりの新曲で、オリエンタルでオルタナティブ、ディープでドープなミドル・ナンバーとなっている。従来のユートピア的なポップ精神に、近年のディストピア的な攻撃性を兼ね備えた、相対性理論の真骨頂。幻想的な光が揺らぐ中、蛍光灯に似たオリジナル9次元楽器「dimtakt」(ディムタクト)も煌々と輝き、100名のオーディエンスを深い世界へと誘った。
ステージ上には、やくしまるえつこがバイオテクノロジーを用いて制作し、音源と遺伝子組換え微生物で発表した作品「わたしは人類」が展示されており、来場者にはのちほど観覧時間が与えられるのだが、この展示ケースもひとつの舞台装飾としての役割を担っていた。なお、この作品がどれほど科学的・美術的に評価されているかというと、世界最大の国際科学芸術賞アルスエレクトロニカ・STARTS PRIZEグランプリに輝き、授賞式ではEU(欧州連合)各国の政治家らの前でパフォーマンスを実施。国内外の美術館などで展示されてきた。また、金沢21世紀美術館では、同美術館の展示バージョン「わたしは人類」(ver.金沢)が、ポップミュージック/バイオアート作品として初めてコレクション作品として収蔵されたばかりである。
この作品がただの芸術作品ではなく、歴史的な遺物になり得る理由は、前述した作品構造にある。音楽をDNA情報に持り、自己複製し続けることが可能な遺伝子組み換え微生物は、後世にまで音楽を残す媒体となるのだ。つまり、いま博物館に古代生物の骨格標本が並べられているように、いつか人類が滅んだ地球では「わたしは人類」が展示され、読み解かれた音楽が演奏されているかもしれない、ということである。
やくしまるえつこが、相対性理論が、私たちが存在せずとも、やくしまるえつこが作り、相対性理論が鳴らし、私たちが聴いた音楽が鳴り響く未来。ラストに披露された「わたしは人類」の心地よい轟音を浴びながら、皆がみな、来る“NEO-FUTURE”に想いを馳せたのではないだろうか。パフォーマンス自体は30分弱という短い時間でありながら、もの足りなさを一切感じないどころか、無限の想像力が刺激された一夜であった。
TEXT:佐藤悠香
PHOTO:Tomohiko Tagawa / Kenshu Shintsubo / Taisuke Nakano
(C)MIRAI records
◎セットリスト
【「わたしは人類」インスタレーション+特別集会「国立科学博物館の相対性理論」】
2018年10月09日(火)東京・国立科学博物館
01. FLASHBACK
02. NEO-FUTURE
03. わたしは人類
◎リリース情報
▼相対性理論
配信シングル「NEO-FUTURE」
2018/10/02 RELEASE
▼やくしまるえつこ
配信シングル「あたりまえつこのうた」
2018/08/22 RELEASE
シングル『放課後ディストラクション』
2018/08/22 RELEASE
<CD>QAMR-99999 / 1,200円(tax out.)
<7インチアナログレコード>QAMR-99998 / 1,500円(tax out.)
配信シングル「Ballet Mecanique」
アーティスト名:やくしまるえつこ+砂原良徳
2018/11/16 RELEASE
・iTunes:https://apple.co/2PD2qY3
・Apple Music:https://apple.co/2zbQJNR
・Google Play Music:https://bit.ly/2PAGRHu
・レコチョク:https://bit.ly/2RZG53B
・ototoy:https://bit.ly/2QW34MU
ほか、DL・サブスク・ハイレゾなど各音楽配信サイトにて配信
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