2018/11/19
2011年、英オーディション番組『Xファクター』で番組初のグループ優勝を飾り、同年にリリースしたデビュー・シングル「キャノンボール」がいきなりUKチャート1位を獲得したガールズ・グループ=リトル・ミックス。翌2012年発売のデビュー・アルバム『DNA』は、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で最高4位をマークし、2013年の2ndアルバム『サルート』も6位を記録。2010年代で全米アルバム・チャートTOP10入りを果たしたガールズ・グループは、8年間でフィフス・ハーモニーとリトル・ミックスだけだというから、それはそれで驚かされる。
本国イギリスでは、『DNA』から初のNo.1獲得を果たした前作『グローリー・デイズ』まで、4作連続のアルバム・チャートTOP5入りを果たし、その他、オーストラリアやアイルランドなどでも、同4作がTOP10入りする快挙を達成。息の短さが指摘されるガールズ・グループの中でも、彼女たちの人気は異例といえるだろう。ジャパン・チャートでも、全てのアルバムがTOP50以内にランクインしている。
本作『LM5』は、タイトルが示す通り彼女たちにとって通算5作目となるスタジオ・アルバム。アルバムからは、エレクトロ・トリオ=チート・コーズとコラボしたシングル「オンリー・ユー」が6月にリリースされ、イギリスでは20万枚を超えるヒットを記録した。なお、同曲はデラックス・エディションにのみ収録されている。日本盤には、この曲のアコースティック・バージョンも収録された。
祈りを捧げるようなアカペラのイントロ「ザ・ナショナル・マンセム」から、ニッキー・ミナージュをフィーチャーしたレゲエ調のダンス・トラック「ウーマン・ライク・ミー」で幕を開ける。この曲は、アルバムリリースの1か月前にリリースされた先行シングルで、UKチャートではCNCOとコラボした「レゲトン・レント」以来1年ぶりのTOP5入り、最高2位をマークする大ヒットとなった。ネブワース・ハウスで撮影されたミュージック・ビデオでは、難易度の高いフォーメーション・ダンスを披露していて、音も画も見事。3曲目の「シンク・アバウト・アス」も、同ダンスホール路線の今っぽい曲。
「ウーマン・ライク・ミー」のヒットもそうだが、もう1曲の先行トラック「ストリップ」も、アルバムのプロモーションに大きく貢献しただろう。ストリップと題された通り、自身等に向けられたバッシングやコンプレックスを全て暴露したリリックと、「FAT(デブ)」や「SLUTTY(尻軽)」などのネガティブ・ワードを肌にプリントしたヌード・アートとミュージック・ビデオも話題となった。この曲には、ミッシー・エリオットのレーベル<The Goldmind Inc.>所属の女性ラッパー、シャラヤ・Jがフィーチャーされていて、彼女の個性的(過ぎる)ラップと、ヒップホップとエレクトロ・ポップが融合したようなトラックがアクセントになっている。
「ストリップ」のように、ラップを交えて歌う「ジョーン・オブ・アーク」、リッキー・マーティンの「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」をサンプリングした、2000年代初期(風)のティーン・ポップ「ラヴ・ア・ガール・ライト」、英マンチェスターのダンス・ユニット=デルフィックのメンバーとして活躍したリチャード・ボードマンによるプロデュース曲「アメリカン・ボーイ」などのアップから、映画のエンディング・テーマのような壮大なバラード「モンスター・イン・ミー」、ビヨンセやマドンナといったトップスターを手掛ける、イギリスのソングライターMNEKがペンを取ったアコースティック・メロウ「トールド・ユー・ソウ」など、スロウも完璧で、どの曲にも彼女たちの芯の強さが現れている。
本作では6曲に携わっているヒットメイカー=カミーユは、「モア・ザン・ワーズ 」にゲストとして参加。サウンド面ではアルバムの中で最も重く、これまでのリトル・ミックスのイメージを払拭するような新しい挑戦にも試みた。カミーユは、ジェシー・Jやクリーン・バンディットなど、イギリスで高い人気を誇るアーティストを多数手がけている。デビュー作収録の「ウィングス」を手掛けたTMSプロデュースの「ノーティス」や「ザ・キュアー」もパワフル。なお、10曲目の「ワサビ」は、日本が誇る香辛料“ワサビ”のことで、「私の味わい」として表現されている。
彼女たち、UKでは常にヒットを連発しているが、アメリカではいまいちパっとしないのはナゼだろう。曲はウケそうな感じだけどね……。
Text:本家一成
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