2018/11/13
約1年前の2017年11月15日、オーバードーズにより21歳の若さで急死した、米ニューヨーク・ロングアイランド出身のラッパー、リル・ピープ。今年に入ってからは、銃で射殺されたエクスエクスエクステンタシオンや、同じ薬物の複合過剰摂取により死去したマック・ミラーなど、今後のヒップホップ・シーンを担う若手たちが、この世を去っている。
リル・ピープは、その才能のみならず、奇抜なファッションセンスや、自身がバイセクシュアルであることを明かした、数少ないラッパーとしても注目され、多くのファンを獲得。いわるゆ“エモ・ラップ”とされるリリックのクオリティも高く、アーティストらしいアーティストだったといえる。彼の死を惜しむ声は、1年経った今も絶えない。
本作『Come Over When You’re Sober, Pt. 2』は、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で38位、R&B/ヒップホップ・チャート16位、ラップ・チャートでは13位まで上昇したデビュー・アルバム『Come Over When You’re Sober, Pt. 1』(2017年)の続編として制作された、2枚目となるスタジオ・アルバム。
アルバムのトータル・プロデュースは、前作に続きスモーカサックが担当。その他、イギー・アゼリアの「ファンシー」(2014年)や、ゼイン・マリクのデビュー作『マインド・オブ・マイン』(2016年)のプロデュースで知られる、英ロンドンの音楽プロデューサー=ジ・インビジブル・マンの名前もクレジットされている。そのスモーカサックは、リル・ピープの死後、様々な思いが交錯し、なかなか制作が進まなかったと話しているが、「ファンのためにも完成させなければいけない」と決意し、ようやく本作のリリースに至ったとのこと。
レトロ感漂う静かなイントロから壮大なサビへ繋げる、ドラマティックな展開のオープニング・ソング「Broken Smile (My All)」から、オルタナティブ・ロック風の「Runaway」~「Sex With My Ex」が続き、4曲目の「Cry Alone」では、ポスト・マローンそっくりのアプローチをみせる。アルバムのラストを飾る「Fingers」も同路線。
そのポスト・マローン同様、本作はロックやパンク、ニュー・メタルなど多様のジャンルが入り混じったアルバムで、ヒップホップ・フォロワーのみならず、ロック~ミクスチャー・リスナーもたのしめる内容になっている。「Leanin'」や「IDGAF」なんかは、まさにその代表格。グッド・シャーロットやスリー・デイズ・グレイスといった、ロック畑のアーティストたちが追悼したのも納得できる。
ヒップホップらしさを強調した「Hate Me」や、しゃがれたボーカルが刹那を感じさせる「16 Lines」、ミキシングされた不気味なラップを披露する「Life Is Beautiful」など、ラップ・シーンの“今っぽい”サウンドもいくつかみられるが、基本的にはヒップホップというジャンルに囚われていない。Hot 100チャート最高13位、R&B/ヒップホップ・チャート7位、ラップ・チャート5位を記録した、前述の故エクスエクスエクステンタシオンとコラボ曲「Falling Down」なんかも、まさにそう。同曲と、アイラヴマコーネンとの「Sunlight On Your Skin」の2曲は、ストリーミング・アルバム限定で収録されている。
Text: 本家 一成
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