2018/11/12
2014年末から、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”においてストリーミング・ポイント(視聴回数)が加算されるようになり、昨今のチャートはラップ勢が上位を占め、ロックやカントリー系のアーティストはチャートインし辛い傾向にあるが、その中でもイマジン・ドラゴンズの功績は高く評価されている。
全米最高15位、ロック・チャート1位をマークしたデビュー曲「イッツ・タイム」で衝撃のデビューを飾り、同曲収録のデビュー・アルバム『ナイト・ヴィジョンズ』(2012年/2位)からは、2013年の年間チャート3位を記録した「レディオアクティヴ」(最高3位)と、「ディーモンズ」(最高6位)の2曲がTOP10入り。チャート編成後にリリースした前作『エヴォルヴ』(2017年/2位)からは、「ビリーヴァー」と「サンダー」がいずれもHot 100チャート4位を記録し、最高12位をマークした「ホワットエヴァー・イット・テイクス」の3曲が全てロック・チャートで首位獲得を果たしている。
その『エヴォルヴ』に続く4作目のスタジオ・アルバム『オリジンズ』。本作からも、7月にリリースされた先行シングル「ナチュラル」が、Hot 100チャート最高13位、ロック・チャート1位の大ヒットを記録。一度聴いたら耳から離れない、雄たけびのようなサビがインパクト絶大で、ヒットしたのも納得の出来栄え。同曲のプロデュースは、エリー・ゴールディングの「ラブ・ミー・ライク・ユー・ドゥー」や、DNCEの「ケーキ・バイ・ザ・オーシャン」などのTOP10ヒットを手掛ける、スウェーデンのソングライター・チーム=マットマン&ロビンが担当した。
彼らがプロデュースした、スペイシーなエレクトロ・ロック「クール・アウト」と、80年代のニューウェイヴを彷彿させる「オンリー」も好曲。イマジン・ドラゴンズの魅力、そしてヒットの要因として挙げられるのが、このジャンルを“クロスオーバー”したスタイルだ。「ロック・バンドではなく、ポップ・バンドだから」といえばそれまでだが、彼らやマルーン5のようなバンドが、ロック・シーンを変化させ、衰退させないよう維持している存在であることは、認めざるを得ない。
2ndシングルとしてリリースされる「マシーン」も、まさにクロスオーバー・スタイル。同曲は、エミネム&リアーナによる全米No.1ヒット「モンスター」などを手掛けるアレックス・ダ・キッドによるプロデュース曲で、ヒップホップ的アプローチも節々にみられる。「ブレット・イン・ア・ガン」も、その路線だ。彼らをはじめ、本作の制作陣は前作『エヴォルヴ』に参加したメンバーが大半を占めている。
12月21日に公開されるディズニー映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』のエンド・ソング「ゼロ」は、スピード感溢れるエレポップ・チューン。この曲は、デミ・ロヴァートやシャキーラ、ラッパーのナズなど、ジャンルを超えたアーティストの楽曲を担当してきたジョナサン・ヒルがプロデュースを手掛けた。
旋律のすばらしいポップ・ロック「ブーメラン」、哀愁漂わすミッド・チューン「バッド・ライアー」、ラップを絡ませて歌う「デジタル」、アコースティック・ギターのイントロからはじまるカントリー&ウエスタン調の「ウェスト・コースト」、ロックでもエレクトロな要素もない、ゆっくり諭すように歌う「スタック」のようなメロウもあり、バラエティに富んでいる。だから聴きやすく、幅広い層にも支持されるワケだ。日本盤のボーナス・トラックとして収録される、カイゴとのコラボ・ソング「ボーン・トゥ・ビー・ユアーズ」も、ロック・バンドの枠を超えた傑作。
ライブの後半あたり、もしくはアンコールで盛り上がりそうな「ラヴ」で幕を閉じる本作。この曲のみならず、アルバムには“ライブ映え”しそうなナンバーも目白押し。今年1月に開催された初の来日公演では大絶賛された彼らだが、本作をひっさげてのジャパン・ツアーも、おおいに期待したいところ。
Text: 本家 一成
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