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2018/11/17

大学ゼミと2人の新進気鋭アーティスト 【世界音楽放浪記 vol.22】

私は、例え偶然のことであっても、何らかの法則性があるのではと思いを巡らす癖がある。

青春とは、決してバラ色の時期ではない。私は、悩み、苦しんでいた。家庭が崩壊し、「才」の限界を感じて音楽家になる道を諦め、付け焼刃のような受験勉強をした。当然だが、「評点2.67」「欠課400」の落ちこぼれに、そんなに甘い結果は待ち構えていない。進んだ大学は、第一志望ではなかった。ただ、当時としては先端の、自分が興味を持つ専攻がそこにあった。レーガンとゴルバチョフのマルタでの握手が、志望動機だった。

少人数の大学であったこともあり、先生方は胸襟を開き、真正面から向き合ってくれた。盃を交わしながら、時には自宅まで招き、私の話を聞いてくれた。厳しく指導し、さまざまなことを教えてくれたあの日々がなければ、もっとダメな人間になっていたと思う。2つの学部で、「国際関係論」と「国際法」のゼミに所属し、学ぶことの喜びを知った。174単位を取得し、大学院に進むか、留学するか、社会に出るか、進路を迷った。卒業時の選択が正解だったのかは分からない。しかし、その時の自分にとっては、最善の道を選んだのだろうと、今になると思う。人生は、そのようなことの繰り返しだ。

2018年度の秋学期、明治大学国際日本学部でゼミを開講した。

このキャンパスでは、「クリエーター・ビジネス論」という講座を、2017年度から春学期に担当している。「クリテイティブ」には「才」が必要だ。また、「プロフェッショナル」になるには、コンスタントに結果を出し続けるという「強さ」も要件となる。だからこそ、自分の「才」と「強さ」を知り、活かし、発揮してほしいと願う。学期の前半では、さまざまなデータや理論を援用した座学を展開した。何人かの学生は脱落したが、それでも50人以上が付いてきてくれた。後半で、「アイデアソン」を導入した。1つの「出題」に、短期間でグループ・プレゼンテーションを行うというものだ。同じ教室にいる学生は、それまでは友人でも知人でもない者がほとんどだ。アットランダムに抽選でグループを作り、自己紹介を行う。それからは、極力、口を出さずに、自主性に任せた。発表時には、音楽業界の友人・知人の力添えを得て、プロの意見を伝えた。

「こんなに楽しい授業はなかったです」。何人かの学生は、そう、私に伝えてくれた。厳しく辛い、基礎的な授業は非常に重要だ。しかし、アカデミックな視座で構成された、脳細胞が活性化されるような講座があっても良いだろう。

ゼミでは、「フォーマルのリテラシーを持つ、カジュアルな発信」をテーマとして、コンテンツの国際発信について教えている。プロの真似事をすることが目的ではない。「1人1メディア」の現代では、誰もが小さな放送局になりえるのだ。私にとっても、新しい挑戦だ。

2人の新進気鋭のアーティストが、力を貸してくれた。ビジュアル系バンドLapLusのsatoshiさんと、SNS動画再生が1億回を超えた新世代のアーティストMiracle Vell Magicさんだ。飛行機に乗ると、上昇の際はシートベルトを装着する。この沈思黙考の時間こそが、クリエイティブには大切な時間帯だと思う。最初からゴールを設定したくはない。2人の「才」を借りて、どこまで高く上がり、遠くまで行けるのか。悩み、苦しみながら、「知の飛行」を続けてほしい。あえて着陸地は学生たちに任せるつもりだ。このゼミのランディングの瞬間を、楽しみに待ち構えている。

◎イベント概要
【明治大学国際日本学部10周年記念イベント トークショー「日本の音楽の世界発信に向けて」】
2018年11月25日(日)11:00~12:30 
登壇者:山内真治(アニプレックス・音楽プロデューサー)、礒崎誠二(阪神コンテンツリンク・ビルボード事業部長)、原田悦志(NHK放送総局チーフ・ディレクター、国際日本学部兼任講師)

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