2018/10/22
フィーチャリング・アーティストとして参加した 、D.R.A.M.(ドラム)の「ブロッコリー」(2016年)が、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”最高5位、R&B/ヒップホップ・チャート、ラップ・チャートでは首位に輝き、脚光を浴びた、米アトランタ出身の若手ラッパー=リル・ヨッティ。同年には、Hot 100チャート4位、ラップ・チャート1位をマークした、カイルとのコラボ・ソング「iSpy」も続けて大ヒットし、カラフルなビジュアル含め、絶大なインパクトを全世界に与えた。
翌2017年5月にリリースしたデビュー・アルバム『ティーンエイジ・エモーションズ』は、米ビルボード・アルバム・チャート“Billboard 200”で5位(ラップ・チャート2位)に初登場し、今年の3月に発売された2ndアルバム『リル・ボート2』では、全米チャート自己最高位となる2位(ラップ・チャート2位)を記録。昨今を代表するラッパーの1人として、目覚ましい活躍をみせている。
本作『Nuthin' 2 Prove』は、その前作から1年経たずしてリリースされた、自身3作目となるスタジオ・アルバム。先行シングルとして7月にリリースされた「Who Want the Smoke」は、何かと世間を騒がせているミーゴスのオフセットとカーディ・B夫妻を招いた、彼ら“らしい”トラック。この曲は、ドレイクをフィーチャーしたブロックボーイ・JBの「Look Alive」(2018年)で注目された、テイ・キースがプロデュースを手掛けている。アルバムの紅一点ということもあるが、カーディのラップはやはり(色んな意味で)強い。
オープニング ・ナンバー「Gimmie My Respect」と、リル・ベイビーとのコラボ・アルバム『ドリップ・ハーダー』が大ヒット中のガンナをフィーチャーした「Fallin in Luv」の2曲は、人気アーティストに起用されまくっている売れっ子プロデューサー=30ロックが担当。ミックステープ含む、これまで発表した全てのアルバムに参加しているDigital Nasは、かなりキワどいことを歌っている「I'm the Mac」と、ケビン・ゲーツがゲスト参加した「Nolia」の2曲にプロデューサとしてクレジットされた。どちらも華やかではないが、男子ウケしそうなクールな感じがいい。
ドレイクの「Summer Sixteen」(2017年)や、ミーゴス、カーディ・B&ニッキー・ミナージュによる「MotorSport」(2017年)などのヒットを手掛けるドイツのプロダクション・デュオ=キュービーツによる「SaintLaurentYSL」は、まさに両曲の続編的なナンバー。この曲には、前述のリル・ベイビーがゲストとして参加している。その他、ゲーム・ミュージックのようなバックサウンドを従えた「Get Dripped」には、同ジョージア州の若手ラッパー=プレイボーイ・カルティが、オルタナティブR&Bっぽい仕上がりの「Forever World」には、こちらも赤髪ドレッドがインパクト絶大のトリッピー・レッドがフィーチャーされている。
「Riley from the Boondocks」のようなラップ・スタイルの曲もあるが、前述の2大ヒットにも通ずるユル~い感じの「Worth It」や、エフェクトをかけた「Everything Good, Everything Right」、早口で駆け抜ける「Next Up」など、基は歌モノのアルバム。とはいえ、この(ほとんどが)歌っているようなラップ・スタイルが、彼の持ち味でもあり、ヒップホップ・シーンで問題視(?)されていることでもあるのだが。それでも、自身のスタイルを貫く姿勢は、ある意味オリジナリティにあふれている。同じような曲がひたすら続く……ような気がしないでもないが、このテの曲が好みのリスナーにとっては、ハマる作品。また、ゲスト陣が豪華なので、曲調は似ていてもマンネリ化はある程度緩和できている。
ところで、アルバムを〆る「Stoney」が、同名アルバムを大ヒットさせたポスト・マローンに激似しているのだが……歌詞には登場していないが、彼を意識したタイトルなのだろうか?ラップやヒップホップ・サウンドにこだわらないスタイルも、彼に多少なりともインスパイア……されているのかもしれない。「iSpy」以降、シングルヒットから遠ざかっているリル・ヨッティだが、前作『リル・ボート2』の最高位を超える、自身初の全米1位を獲得できるか、チャート・アクションにも注目したい。
Text: 本家 一成
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