2018/09/25
yahyelが行ったアジア・ツアー最終公演のオフィシャル・レポートが到着した。
最新アルバム『Human』を携えて、今年春の月恵比寿リキッドルームからスタートした、yahyelのツアー。9月には韓国、台湾などのアジアを廻り大きな話題を呼んだ彼らが、長い旅路の締めくくりを飾るワンマン公演を、渋谷・TSUTAYA O-EASTで敢行した。
立錐の余地もないほどの観客に埋め尽くされたなかでのパフォーマンス。最新作の冒頭を飾る「Hypnosis」から幕を開く。衣装や映像なども含め、モノトーンな世界に、会場にいる誰もが釘づけになっている様子だった。その後アップリフトな「Rude」、15分に及ぶ壮大かつ宗教的なミステリアスな雰囲気もまとった構成に、そこにいる人々は釘付けになりながらも、心を解放させてダンスしていた姿が印象的だった「The Flare」から「Black Satin」へと続いていく流れで、徐々に会場の興奮が高まっていくなか、新曲でコムアイ(水曜日のカンパネラ)をゲストに迎えてパフォーマンス。これまで英語詞で、感覚に訴えかける音楽を発信してきた彼らだったが、強烈なメッセージ性やエネルギーをここで放出。パフォーマンス後コムアイは「うまくいったらこの楽曲を発表すると思うので、お楽しみに」という言葉を残して、ステージを去った。
その後も、先日発表されたばかりの新曲「TAO」では、ベースの重低音から徐々に音を重ねていき、終盤にはエモーショナルなバンド・セッションへと変化していくスリリングな構成に、熱狂が巻き起こる。そこからは半年にわたって世界各所を魅了させてきた成果、つまりライヴ・バンドとしてさらに磨きをかけた姿が伝わってきたのだ。
さらに楽曲にあわせて変化していく映像世界も、彼らの音楽世界に奥行きを与える圧倒的なものだった。「Give it up」という文字が映し出されるなかで観る者に強烈なメッセージを感じさせる物語を展開させた「Pale」など、さまざまな風景や感情を折り込みながら、アルバム(音)だけでは体感できない感情を、丁寧かつ鮮烈に描き出していた気がする。これが、彼らならではのライヴの魅力と言えるのではないだろうか。
興奮と陶酔を繰り返しながら進んだステージ。途中ではフロントマンである池貝が「今後の我々が、表現者としての覚悟の決まったあとの我々になると思います」と発言。その言葉とおり、ツアーを通じてさまざまな経験を積んで、新たなインスピレーションを得て、次のフェーズに向けて走り出そうとしている、彼らの抑えきれない“衝動”が随所に感じ取れ、しまいにはその思いが炸裂したのか、池貝がフロアに降りる場面も。ここでもアルバムでは感じ取れなかった“熱”や、彼らの“息づかい”をダイレクトに感じ取れ、結果ラストには特別な一体感が会場を包んだのだった。
ゆえに、アンコールを欲する声が響きやまなかったが「これは自分たちにとって大切なショー。(アンコールをすることでライヴのクオリティに対して)責任が持てないから」という挨拶を残してステージを去った彼ら。約90分、全16曲というボリュームであったが、その長さを感じさせないほど、瞬間的に時は過ぎて、“その次”を早く体感したい。また彼らはこれからさらに心に何かを残す楽曲を発表していくはず。そんな期待を膨らませた、圧巻のパフォーマンスであった。
Text by Takahisa Matsunaga
Photo by Shohei Maekawa
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