2018/09/18 08:00
ポール・マッカートニーの新作『エジプト・ステーション』が首位デビューを果たした、今週の米ビルボード・アルバム・チャート。
本作『エジプト・ステーション』は、2013年10月にリリースした前作『ニュー』から5年ぶり、ウイングス、リンダ・マッカートニーとのコラボ・アルバムを除く、通算17作目のスタジオ・アルバム。1970年発売のソロ・デビュー作『マッカートニー』、ライブ・アルバム含むウイングス名義のアルバム5作、そして最後に全米1位を獲得した、1982年の4thアルバム『タッグ・オブ・ウォー』(1982年5月29日~6月12日付)から、8作目の全米1位獲得となる。なお、ビートルズ時代の作品は19作が首位を獲得(歴代1位)していて、これらのアルバムを含めると、27枚のアルバムがNo.1に輝いている。
その『タッグ・オブ・ウォー』 から36年3か月ぶりに全米首位を獲得したポール。1位を獲得した前作からの期間としては、2003年9月に死去したジョニー・キャッシュのもつ36年10か月(1969年9月13日付~2006年7月22日付)に次ぐ記録で、生存しているアーティストとしては歴代1位となる。初めて1位を獲得した作品からの期間としては、1970年5月23日~6月6日まで3週をキープした『マッカートニー』から48年3か月に記録を更新。意外にも、ウイングス、ビートルズの作品を除くと、初登場1位としては本作『エジプト・ステーション』が初となる。
『エジプト・ステーション』の初動ユニットは153,000で、そのうちアルバムの純粋な売上枚数が147,000枚、ストリーミングによるみなし売上は6,000枚(SEA、TEA含む)だった。この10年間にリリースしたポールの作品の中では最も高い数字で、2007年6月23日付チャートで3位に初登場した『追憶の彼方に~メモリー・オールモスト・フル 』の161,000枚に迫る初動記録。当初予想されていた初動ユニット以上の売上を記録したのは、公式サイトでの販売とチケットとの連動が挙げられる。また、リリース日の前後に出演したテレビ番組の反響、発売日の9月7日に、米ニューヨークのグランド・セントラル・ステイションでサプライズ・ライブを開催したこと、そして6月に放送されたジェームズ・コーデンによる人気番組『Carpool Karaoke』の出演も、大きなプロモーションとなっただろう。同番組はYouTubeでも公開され、これまで3,200万視聴を記録している。
全米では快挙を達成したが、本国イギリス(UK)では、対抗馬と報じられていたエミネムの『カミカゼ』、『グレイテスト・ショーマン』のサウンドトラックに敗れ、惜しくも3位デビューとなった。そのエミネムの『カミカゼ』は2位にダウンしたが、2週目にして136,000ユニットを獲得し、予想されていた通りポールとのポイントは僅差だった。
今週3位に初登場したのは、米ルイジアナ州出身のクリスチャン系シンガー・ソングライター=ローレン・デイグルの『ルック・アップ・チャイルド』。2016年にリリースしたクリスマス・アルバム『ビホールド』(最高29位)から2年ぶり、3作目のスタジオ・アルバムで、自身初のTOP10入りを果たした。なお、クリスチャン・アルバム・チャートでは、2015年のデビュー・アルバム『ハウ・キャン・イット・ビー』から3作連続の首位獲得を記録している。
『ルック・アップ・チャイルド』 の初動ユニット数は115,000で、アルバム・セールスは103,000枚を獲得した。クリスチャン・アルバムとしては、ストリーミング・ポイントが加算されうようになった2014年12月のチャート編成以降、最大の数字で、これまでの初動最高記録は、クリスチャン・ロック・バンドのキャスティング・クラウンズが『アンティル・ザ・ホール・ワールド・ヒアズ』で獲得した167,000枚(2009年12月5日付)。女性アーティスト(クリスチャン・アルバム)の週間セールスとしては、リアン・ライムスの『ユー・ライト・アップ・マイ・ライフ』(1997年)が獲得した117,000枚に次ぐ記録となった。
続いて4位には、米ニュージャージー州出身の若手ラッパー、ラスの2ndアルバム『ズー(Zoo)』が初登場。2017年5月にリリースしたデビュー・アルバム『ゼアーズ・リアリー・ア・ウルフ』(最高7位)に続き、2作連続のTOP10入り、初のTOP5ランクインをとなった。大々的なプロモーションや先行シングルのヒットはなかったが、前作の初動49,000ユニットを大きく上回る初動79,000ユニットを獲得。そのうち、アルバムの売上枚数は57,000枚で、セールス・ポイントが大半を占めた。その理由として、本作もライブチケットとの連動(償還)が挙げられる。
現地時間9月7日に急逝したマック・ミラーの訃報を受け、最新作『スイミング』が週間67,000ユニットを獲得し、先週の71位から6位に急上昇している。本作は、今年の8月18日チャートで3位にデビューし、1stアルバム『ブルー・スライド・パーク』(2011年)から5作連続のTOP5入りを果たしたばかり。初登場した際の初動ユニットは66,000で、今週は皮肉にもその記録を上回るものとなった。今年6月には、同じラッパーのエクスエクスエクステンタシオンが死去し、翌週にアルバム『?』が再TOP10入りした。また、先月16日に死去したアレサ・フランクリンも、訃報を受けてベスト・アルバム『30 グレイテスト・ヒッツ』が50年ぶりのTOP10入りを果たしている。マック・ミラーには、元恋人のアリアナ・グランデや、親友であるチャーリー・プースなど、ミュージシャンたちから追悼コメントが寄せられた。
9位には、米ニューオーリンズ出身のラップ・デュオ=$uicideboy$(スーサイドボーイズ)の『アイ・ウォント・トゥ・ダイ・イン・ニューオーリンズ』がデビュー。初動ユニットは46,000で、そのうちアルバムの売上が31,000枚、ストリーミングによるセールスは15,000枚だった。2014年からEP盤を20作以上、ミックステープも9作発表してきた彼らだが、スタジオ・アルバムとしては本作が初のリリースとなる。
Text:本家一成
※関連リンク先の米ビルボード・チャートは、9月22日以降掲載予定となります。
◎【Billboard 200】トップ10
1位『エジプト・ステーション』ポール・マッカートニー
2位『カミカゼ』エミネム
3位『ルック・アップ・チャイルド』ローレン・デイグル
4位『ズー』ラス
5位『スコーピオン』ドレイク
6位『スイミング』マック・ミラー
7位『アストロワールド』トラヴィス・スコット
8位『ビアボングス&ベントレーズ』ポスト・マローン
9位『アイ・ウォント・トゥ・ダイ・イン・ニューオーリンズ』スーサイドボーイズ
10位『スウィートナー』アリアナ・グランデ
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