2018/08/17
ママズ・ガンのフロントマンとして活躍するアンディ・プラッツと、90年代後半以降に鬼才マルチ奏者としてクラブ系のレーベルから多彩な作品を発表してきたショーン・リーが結成し、70年代のAORやウエスト・コースト・サウンドへの敬愛に満ちた音楽性で注目を高めてきたヤング・ガン・シルヴァー・フォックス。今年に入って2枚目となるアルバム『AM Waves』を発表し、ついに実現した初来日公演は、シンプルな4人組のバンド編成で2枚のアルバムに収録されたほぼすべての楽曲を再現し、ライブ・パフォーマーとしても優れた彼らの力量の高さを存分に示すセットとなった。
プラチナ・ブロンドの長髪にアロハ・シャツを着たルックスも目を引くショーンをはじめとする4人のメンバーが登場し、ボーカルのアンディが「今回はヤング・ガン・シルヴァー・フォックスとして初めて日本に来れて嬉しいよ」とMCすると、ライブはデビュー作『West End Coast』収録の軽快なグルーヴを放つ「See Me Slumber」からスタート。曲ごとにピアノとエレピを弾き分けながら、ママズ・ガンとはまた異なったブルー・アイド・ソウル的持ち味を発揮するアンディと、ギターに加えて時にはボンゴも叩きながら存在感のあるコーラスを重ねてハーモニー豊かな楽曲の良さを引き立てるショーン。2人の有能なシンガーソングライター兼プレイヤーが同居している強みは、ライブという場で聴いてよりダイレクトに伝わってきた。続けて、初期のスティーリー・ダン的な「Emilia」、このユニットで最初に録音したという「In My Pocket」などと前半はデビュー作の収録曲を立て続けにプレイして、新旧のライト・メロウ~西海岸サウンド・フリークを魅了していった。
彼らの存在を一躍広く知らしめた「You Can Feel It」なども交えて、デビュー作の主要曲をたっぷりとタイトなバンド・サウンドで堪能させると、中盤以降は新作『AM Waves』の収録曲へとシフト。英国ポップ的なノリも顔を覗かせる「Caroline」、エレピを効かせたジャジーAORなグルーヴが心地よい「Mojo Rising」などでより音楽的な幅広さと自由度を増した新境地を示すと、ライブは尽きることを知らないグッド・ソングの連打状態のまま終盤へ。手拍子を求めて「夢に出てきたレニー・クラヴィッツが経営するバーにインスパイアされて生まれた」という「Lenny」、全盛期のホール&オーツを彷彿とさせる「Take It Or Leave It」などの新作の中でも際立っていた佳曲から、ラストはギターソロなども挟みながらグルーヴィーに高揚する「Lolita」へと流れ込み、トータル18曲を濃密に駆け抜けた。
スティーリー・ダン、ドゥービー・ブラザーズ、ホール&オーツ、ネッド・ドヒニーなど…。往年の大物たちが築いた黄金期のサウンドへの並々ならない愛情の深さを、確かなミュージシャン・シップの高さをもって表現する現代AORの最高峰デュオの初来日公演は、18日(土)のビルボードライブ東京へと続く。ウエスト・コースト・サウンドの良心を今に継承した渾身のステージは、世代を超えて必見だ。
Text by Hidesumi Yoshimoto
Photo by Kenju Uyama
◎公演情報
【ヤング・ガン・シルヴァー・フォックス】
ビルボードライブ大阪
2018年8月16日(木)※終了
ビルボードライブ東京
2018年8月18日(土)
1st Stage Open 15:30 Start 16:30
2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
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