2018/07/21
70年代から豪腕アレンジャーとして活躍してきた“音の魔術師”ことデヴィッド・マシューズが、NYの一流ジャズ・ミュージシャンたちを率いて明快にして多彩なビッグ・バンド・ジャズを繰り広げるマンハッタン・ジャズ・オーケストラ。定番的なスタンダード曲から、ロック、ファンク、クラシックの名曲にマシューズのオリジナルまで。結成から30周年の節目を来年に控えての今回の公演は、ジャズの楽しさとスリルを幅広い聴き手に伝え続けてきたMJOの魅力を再確認させるとともに、ジャズだけにとどまらないマシューズの音楽的歩みを凝縮したような痛快なセットとなった。
チューバや2台のフレンチ・ホルンを含む大所帯のメンバーが登場し、続いてトレードマークのマドロス帽を被ったマシューズが現れると大きな歓声が飛び、ライブは練り込まれたアンサンブルをアップテンポで駆け抜けるオリジナル曲「Wheel Of Fortune」でスタート。流ちょうな日本語で客席に語りかけ、“アレンジはとても難しかったです。でも、メロディはとても有名”と前置きすると続いてはシュトラウスの壮大な交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」を豪快なビッグ・バンド・ジャズ仕様で聴かせ、各パートのソロも効果的に配しながら名アレンジャーぶりを発揮。サックス奏者のクリス・ハンター、トランペット奏者のマイケル・ロドリゲスらを筆頭に、どのメンバーもソロ奏者としても優れているのがMJOの魅力であり、序盤から鉄壁のサウンドで圧倒した。
中盤には、70年代前半のキャリア初期にジェイムス・ブラウンのアレンジャーを務めたことに触れた後にJBファンクの名曲「I Got You(I Feel Good)」、その後にCTIレーベルで数多くのヒット作を手がけていた時期にジョージ・ベンソンに提供した「Theme From Good King Bad」と、関わりが深いファンク~フュージョンの名曲も披露。“MJOは29周年になりました。来年は30周年です。アッという間でした”と再び日本語で語ると、メンバー紹介を挟んだ後に長年の盟友的存在で15年に惜しまれつつ亡くなったトランペット奏者のルー・ソロフについて言及し、彼がジャズ・プレイヤーとして活躍する前に在籍していたブラス・ロック・バンドであるブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ「Spinnig Wheel」も取り上げた。そんな懐の広いレパートリーでジャズの多様性を示すと、本編のラストはショパンのエチュードから、デューク・エリントンによるビッグ・バンド・ジャズの大定番曲「スウィングしなけりゃ意味ないね」へ。誰もが知る曲だからこそマシューズの手腕が映える巧みなアレンジの妙と、終盤には重厚な4トロンボーン、チューバと2ホルン、3サックス、4トランペットがセクションごとにソロを取る大団円でしっかりと沸かせてくれた。
さらに、豪快なドラム・ソロから幕を開けたアンコール曲ではソロを取ったトランペット奏者が演奏しながら客席フロアを練り歩き、祝祭的なビッグ・バンドならではのフィナーレへ。真夏のジャズ・シーズンの幕開けにふさわしいNYの精鋭集団によるステージは、22日(日)&23日(月)にビルボードライブ東京、25日(水)に再びビルボードライブ大阪と続く。
Text by 吉本秀純
Photo by Kenju Uyama
◎公演情報
【マンハッタン・ジャズ・オーケストラ】
Japan Tour 2018
2018年7月20日(金)<終了>
ビルボードライブ大阪
1st Stage Open 17:30 Start 18:30
2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
2018年7月22(日)
ビルボードライブ東京
1st Stage Open 15:30 Start 16:30
2nd Stage Open 18:30 Start 19:30
2018年7月23日(月)
ビルボードライブ東京
1st Stage Open 17:30 Start 19:00
2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
2018年7月25日(水)
ビルボードライブ大阪
1st Stage Open 17:30 Start 18:30
2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
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