2018/07/19
「力強く魅惑的な歌声。キャロル・キングやアレ サ・フランクリンが頭に浮かんだ。(米Rolling Stone誌)」、「エイミー・ワインハウス、リリー・アレン、アデルなどによるUK流ニュー・ソウルに対するアメリカからの回答(米Paper Magazine誌)」ダイアン・バーチが『バイブル・ベルト』をリリースした2009年当時、海外のメディアは彼女の才能をこう評した。どこか愁いを帯びた深みのある歌声、20代とは思えない洗練された歌唱力と音楽性、そして存在感。2010年にはFUJI ROCK FESTIVALに出演し、第2回CDショップ大賞の洋楽賞にも選出されるなど、日本でも大きな注目と厚い支持を集めた彼女が、2016年5月以来の来日を果たした。デビュー10周年を前に行われる今回の公演は、なんと先述のデビューアルバム『バイブル・ベルト』を中心に披露するというスペシャル・ライブだ。
ローズ・ピアノとグランドピアノ、そしてベースとドラムがセッティングされたステージ。今回はデイヴ・ページ(Ba)、ヤング・ガン・シルヴァー・フォックスのショーン・リー(Dr)を迎えてのトリオ編成。拍手と歓声の中、はにかみながらステージに登場し、ローズ・ピアノの前に座ったダイアン。歌を紡ぎ始め瞬間、会場の空気が変わった。スリー・ピースというシンプルな編成であることで、彼女の歌声がよりダイレクトに心に突き刺さる。
宣教師の父と共に、ジンバブエ、南アフリカ、オーストラリアなどを転々した幼少期。彼女にとって、音楽のルーツは讃美歌やクラシックでもあるという。彼女の歌声に'祈り'にも似た説得力と、穏やかな熱情を感じるのは、それ故かもしれない。スモーキーでソウルフルなその歌声は、力強く突き抜けつつも、聴く者の心に甘やかな棘を残す。
「How are you,Osaka?」オーディエンスに呼びかけるダイアン。チャーミングに微笑み、『バイブル・ベルト』という作品にまつわる話を時折交えながら、ステージは進む。過ぎ去りし想いに揺れ動く心の機微を歌い描きつつ、その眼差しは真っ直ぐ強い。発表当時はこの作品が嫌いだったが、近年になってその価値を受け入れ、愛せるようになってきたと振り返る彼女。この10年足らずの間に培った経験や出会いが、彼女の音楽、そして彼女自身を育てて来たことが、演奏を通じて伝わってきた。
最後に、この『バイブル・ベルト』を愛し、共に歩むファンへの感謝を口にした彼女。10周年という節目の年を前に、この作品を主題とするライブを行った意味。それは'回帰'であり、更なる飛躍を遂げるための大切な'布石'だったのかもしれない。ダイアン・バーチが紡ぐ、新たな物語の序章を予感させる今回の公演。大阪に続く本日の東京公演を、ぜひ見届けていただきたい。
Text by 杉本ゆかり
Photo by Kenju Uyama
◎公演情報
【ダイアン・バーチ】
2018年7月17日(火)<終了>
ビルボードライブ大阪
1st Stage Open 17:30 Start 18:30
2nd Stage Open 20:30 Start 21:30
2018月7月19日(木)
ビルボードライブ東京
1st Stage Open 17:30 Start 19:00
2nd Stage Open 20:45 Start 21:30
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