2018/07/09
ジャンゴ・ラインハルトを始祖とするマヌ―シュ・スウィングの現役最高峰ギタリストとして、トニー・ガトリフ監督の名作『僕のスウィング』(03年公開) への出演などでも広く親しまれてきたチャボロ・シュミット。約10年ぶりに実現した来日公演の初日となった4日(水)夜のビルボードライブ大阪でのライブは、シャンソンの名曲も数多く取り上げながら、洒脱にして強靭なプレイの連続で衰えを知らないギター・マエストロぶりを発揮した素晴らしい一夜となった。
タキシードを着たチャボロが女性ボーカリストのマリーと2人だけでステージに登場すると、オープニングに奏でられたのはマルセル・ムルージ「いつの日にか」。哀愁味の強い歌声と、随所に速弾きのアドリブも差し込んで単なる歌伴に収まらない存在感を示すギターでシャンソンの名曲を自分たちのカラー染め上げると、リズム・ギターのマヨとベースのクロディウスが加わった4人編成でシャルル・トレネ「Fidele」をスウィンギーに奏でた。そして、ボーカルのマヨが下がってトリオになると、ここからがギタリストとしての本領発揮。コード・ワークはマヨに任せて縦横無尽に弾きまくる「Coucou」で一気にギア・チェンジして圧倒すると、さらにテンポを速めてソリッドなギターの刻みを伴いながらスタンダード曲「Them Their Eyes」へ。基本はサイドに徹しつつも、ソロが回ってくれば淡々した表情でテクニカルな名手ぶりを発揮してチャボロに戻す巨漢ギタリストのマヨとの連携もまたスリリングで、序盤から火花の散りそうなプレイの応酬で格の違いを示した。
中盤は、最新作『夜のメランコリー』でも取り上げていた馴染み深いメロディの名曲「ブラジルの水彩画」、06年に発表された名作『ル―チャ』に収録された「Le Soir」などのメロウなナンバーも取り上げ、グラスを掲げて"カンパーイ!"と日本語で客席に呼びかけて和ませたところで、洒脱なボサノヴァ調の前奏からアンリ・サルヴァドールの好カバーでも知られるケレン・アンの佳曲「Jardin d'hiver」も披露した。心地よいグルーヴを伴いつつも、ソロに入るとテンションを一気に高めての電光石火なプレイで奔放なチャボロらしさを発揮すると、再びボーカルのマリーが登場。本編のラストは、パリ20区の庶民的な地区の名を冠したシャルル・トレネ「メニルモンタン」、そしてイヴ・モンタンらの名唱で知られ『夜のメランコリー』でも取り上げていた名曲「Bal Petit Bal」をスウィンギーに聴かせ、古き良きパリの雰囲気をも香らせるような緩急の付いたステージで魅了した。
アンコールではチャボロが独りで登場して奔放なソロ・ギターで喝采を集めると、鳴りやまない拍手に応えてサイド・ギタリストとベーシストも再登場し、締めにはジャンゴの名演でも知られる定番チューン「黒い瞳」を。良い意味での円熟味が加わった一方で、凡百のジャンゴ・フォロワーを一蹴するような強靭なギターのストローク、スウィング・ジャズはもちろんのことフラメンコ、クラシック、サーフ・ロックまでをも彷彿せるような多様なニュアンスが溶け込み、あらゆるギター・フリークを熱狂させずにはおかないチャボロの凄みは健在。続く9日(月)ビルボードライブ東京での公演を、ぜひともお見逃しなく!
Text by Hidefumi Yoshimoto
Photo by Kenju Uyama
◎ツアー情報
【チャボロ・シュミット】
ビルボードライブ大阪
2018年7月4日(水)※終了
ビルボードライブ東京
2018年7月9日(月)
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像