2018/06/30
私が今年の5月までプロデューサーを務めていた全世界向け音楽番組「J-MELO」では、2010年以来、世界中の視聴者にアンケート調査を実施してきた。
2013年には95の国と地域から、1305通もの返答が寄せられた。
この数字を見るだけでも、日本の音楽は、皆さんが思うよりはるかに多くの国や人々に聴かれていることを理解してもらえるだろう。
この年の調査の1つに「最初に日本の音楽を聴いた年」という設問がある。
最も多かったのは2008年。
2位以下は1999年から2011年までの間。
00年代とその前後に、たくさんの人々が日本音楽に出会い、ファンとなっていたことが分かる。
毎年、定点観測的な調査も行ってきた。
代表的なものは、協力してくれた年齢層だ。
経年変化を見ると、気になる点が浮かび上がってくる。
2010年には10代が43%、20代が35%、30代が6%。
2013年には10代が37%、20代が50%、30代が7%。
2016年には10代が31%、20代が45%、30代が10%。
だんだんと10代の比率が減り、30代が増えている。
00年代に日本の音楽に初めて接触した層がそのまま歳を重ね、高齢化していると推察される。
このデータは、音楽ファン全般ではなく、あくまでJ-MELO視聴者層に限定したものだ。
音楽だけではなく、テレビに対する変化も、この数値に反映されている。
そうだとしても、最も感性が鋭敏な10代の比率が減っているということは、好ましい状況でないことは確かだ。
リスナーにとって、音楽の「良し悪し」は「好き嫌い」とイコールだ。
いかにして、日本音楽を「初恋相手」にしてもらうか。
そんなことばかり、私は考え続けていた。Text:原田悦志
原田悦志:NHK放送総局ラジオセンター チーフ・ディレクター、明大・武蔵大講師、慶大アートセンター訪問研究員。2018年5月まで日本の音楽を世界に伝える『J-MELO』(NHKワールドJAPAN)のプロデューサーを務めるなど、多数の音楽番組の制作に携わるかたわら、国内外で行われているイベントやフェスを通じ、多種多様な音楽に触れる機会多数。
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