2018/06/17
2017年9月2日 日本武道館でのラストライブをもって、10年の歴史に幕を閉じたSuGのフロントマン・武瑠が、2018年1月31日よりソロプロジェクト・sleepyheadをスタート。6月20日に1stフルアルバム『DRIPPING』をリリースするのだが、収録曲「退行的進化」「LAIDBACK」にてTeddyLoidとの共作を実現! この次世代奇才コラボレーションの実現発表と共に2人の対談をここに公開する。音楽シーンの未来を確実に面白くするタッグの話に胸を躍らせてほしい。
◎武瑠(sleepyhead/ex.SuG)×TeddyLoid対談インタビュー
<SuGのライブを観て「すごく格好良いな。いつか一緒に何かやれたらいいな」>
--武瑠(sleepyhead/ex.SuG)×TeddyLoid、この2人が出逢った経緯から教えてもらえますか?
TeddyLoid:2008年に18歳でTeddyLoidのキャリアをスタートさせたんですけど、そのときにMIYAVIさんのワールドツアーでDJやサウンドプロデュースをやらせて頂いて。それがきっかけでSuGさんのライブを観て「この武瑠って人、格好良いな!」と思ったんです。まず外見から(笑)。ビジュアルにすごく惹かれたんですよね。
武瑠:元々所属していた事務所のアニバーサリーイベントが日本武道館であったんですけど、たぶんそれですね。当時、めちゃくちゃ意味不明な格好していたんですよ。自分の歴史の中でいちばんダサい髪型をしていた(笑)。めっちゃ恥ずかしい!
TeddyLoid:でもプロデューサー目線で言うと、いろんなヴィジュアル系アーティストが出てくる中で、武瑠さんはすごく自分を持っていて、今までみんながやっていなかったことをやっているし、その当時のヴィジュアル系アーティストって格好と曲がバラバラな人たちも多かったんですけど、当時から武瑠さんがやっていることには一貫性があって、起承転結もしっかりあって、それで「この人、すごく格好良いな。いつか一緒に何かやれたらいいな」ってそのときから思っていたんです。
武瑠:自分もMIYAVIさんのDJやっている映像を観て、あのMIYAVIという絶対的な肉食系動物と思いっきり張り合っていて「凄いな、この人」と思いました。それで「誰だろう?」と思って調べてみたら「TeddyLoid……え、年下?」って結構衝撃だったことを覚えてます。「すげぇ人が出てきたな」って。ただ、実際にこの2人が逢ったのは……
TeddyLoid:実際にちゃんとご挨拶したのは、SuGさんの曲のアレンジを自分にお願いして頂いたときですかね。
武瑠:「B.A.B.Y.」のときですよね。あと、浮気者(※SuG活休時代に始動させた武瑠ソロプロジェクト)の「HELLYEAH」もお願いしました。
<2人の共通点:上質な闇「そこを感じ取って頂けたのは初めてかも」>
--お互い、知り合った当初からシンパシーは感じていたんですか?
TeddyLoid:僕は全部ひとりでやっていて。曲もひとりで作るし、自分のプロジェクトでは歌も歌うし、ミックスもマスタリングも自分のことに関しては全部自分で決めるんですけど、SuGというバンドを知ったとき「あ、このバンドも武瑠さんが主導を握って、彼がすべて動かしているんだ」って最初から分かったんです。そういうすべてを自分で司る人にはシンパシーを感じるというか「この人、凄いな」と思うことが多くて、武瑠さんに対してもそういう印象を抱いていました。
武瑠:俺は、たぶん1stアルバムだと思うんですけど、PVとかを初めて撮って……
TeddyLoid:あ、そうです!
武瑠:元々いろんな人に提供している音は聴いていたんですけど、それよりも1stアルバムでTeddyくん自身の音と世界観に触れて、そこにいちばんシンパシーを感じました。ベースがダークなんですよ。で、sleepyheadもコンセプトが「上質な闇」なんです。日本の音楽ジャンルでダークサイドとか闇を表現しようとすると、今の流行りもあるんでしょうけど、光と闇の闇じゃなく病気のほうの闇みたいなものを生み出している人があまりにも多くて、そのドロドロしているウェットな感じの闇に対して「なんか違うんだよな」とずっと感じていたんです。その中でTeddyくんからは光と闇のドライな闇、上質な闇を音像とかも含めて感じ取れたので、そういう属性的な意味でのシンパシーを物凄く感じましたね。
TeddyLoid:すごく鋭いですね。まさに僕はそれをイメージしていたんですけど、そこを感じ取って頂けたのは、今までご一緒した人の中でも初めてかもしれない。
武瑠:金属的だったりプラスチック的な、そういう無機質な闇を感じる。それが格好良いし、日本の音楽ではなかなか出来ない感じが良いなって。海外のラッパーだと意外と居るじゃないですか。ASAPとか結構ゴシックな感じがあるし、ケンドリック・ラマーの賞を獲ったMVなんてめっちゃゴシックだし、ああいう質感を俺もずっと模索していたんです。でもバンド時代の5人だと「もうちょっとポップに振らないといけない」とかそういう感覚があった中で、浮気者をきっかけに「自分はこういうダークなほうが得意なんだな」と改めて感じて、sleepyheadでそれを伸ばしたいと思っていたときに、わりと早い段階でTeddyくんに相談した気がします。
TeddyLoid:その頃に武瑠さんのファッションブランドの曲も手掛けさせてもらって、それもガチっとハマって。彼のファッションセンスもすごく良いなと思っていて、とにかく一貫しているんですよ。ブレているところが一切ない。それが凄い。僕もブレなく提供したい人なんですよね。
武瑠:クリスマスのシーズンの音を手掛けてもらったんですよ。だから「音楽で復活しよう」と決意をする前から音を作ってもらっていて、それがめっちゃ良くて「一撃OK」みたいな。「さすが!」と思いましたね。
<DTMで、コンピューターで小学校3年生ぐらいから音楽作ってて……>
--今、ふたりの会話の中にあった「上質な闇」。それを音楽で表現したいと思ったルーツって何だったんですか?
武瑠:それは俺も気になりました。ルーツは何なんだろうなって。
TeddyLoid:DTMで、コンピューターで小学校3年生ぐらいから音楽作ってて……
--え、小3からですか? 早い(笑)!
武瑠:俺、デジモンぐらいしか知らなかった(笑)。小3でDTMはヤバい!
TeddyLoid:それで制作活動を始めたんですけど、やっぱり自分ひとりとの戦いだし、自分ひとりと向き合って、自分ひとりで全部の楽器を演奏するので、そうなると「自分の中」をどう出すか、どう引くか、みたいな。バンドみたいに誰かと一緒に音楽を作っている訳ではないので。そうやって自分自身と見つめ合うことを追求していったら、そういう音像になっていったんです。あと、TeddyLoidを始めた頃はジャスティスが初期衝動で……あとは、ダフト・パンク。そのあたりの影響も受けていますね。
--フレンチ・エレクトロに魅了されていたんですね。
TeddyLoid:まさにフレンチ・エレクトロをやりたくて、TeddyLoidというプロジェクトを始めたんです。
<夜から朝にかけてのフェスがやりたい。「上質な闇」縛りのフェス>
--武瑠くんが「上質な闇」に惹かれたきっかけは何だったんでしょう?
武瑠:元々映画とかから来てると思うんですけど、音楽のアーティストで言うとミューズにソレを感じて。ミューズって今聴くとシューゲイザーっぽい要素も入ってるし、あれに自分の音像的な意味での分岐点を感じますね。あと、日本だとTHE LOWBROWSが好きでよく聴いていたんですけど……
TeddyLoid:僕もTHE LOWBROWSは聴いてました。最高でした!
武瑠:日本の中でブチ抜けていて。8年ぐらい前かな。いちばんクラブに遊びに行っている時期だったんですけど、THE LOWBROWSからもソレは感じていて。それと、クラークの音像をsleepyheadで復活する上で聴き直したときにもめっちゃ「上質な闇」を感じましたね。あと、わりと最近めで言うとホールジーがいちばんグッと来たかな。ビートの音像にソレを凄く感じる。でもいちばんのきっかけはミューズ。
--ジャスティスとミューズは音楽ジャンル的には全く別モノですけど、音像的には共通する部分はありますよね。
TeddyLoid:そうですね。ジャスティスもとにかく人がやっていなかった音をエレクトロショック時代に打ち出したユニットですし。
武瑠:あと、最近の衝撃で言うと、去年の年末にタイの野外フェスに行ったんですけど、ヘッドライナーがフライング・ロータスだったんですよ。で、バカでかい蓮の花みたいなのが出てきて、そこにプロジェクションマッピングでいろいろ映し出すんですけど、それが夜通しやるフェスで「俺、こういうのが好きなんだな」と思って。ダークな……暗黒舞踏会みたいな(笑)。「なんで日本だとテキーラで「うぇーい!」にしかならないんだ?」とずっと疑問を感じていたので、あのフライング・ロータスの、夜のフェス、なんかイケないことをやっている感じ、ストロボがついた瞬間しか人がどれだけいるか分かんない感じがすごく好きだなと思って。なので、日本には向いてないかもしれないんですけど、日本でもやりたいんですよ。次の目標のひとつです。夜から朝にかけてのフェスがやりたい。「上質な闇」縛りのフェス。
<sleepyhead初アルバムで共作「この2人で誰かの曲も作れるんじゃないか」>
TeddyLoid:それを打ち出している人は日本では少ないですよね。でもsleepyheadがその流れを変えると思いました。今回のアルバム『DRIPPING』を全部聴いたんですけど、「これで変わるかもな」って。
武瑠:今回のアルバムで一緒に曲を作らせて頂いたんですけど、簡単なデモを渡したら完全に世界を広げてもらっていて。でもメインフレーズを変えないで来るんですよ。そこはひとつ特徴として凄いなと思ったところなんですけど、メインフレーズとメロを変えずにがっちりブラッシュアップしていく。その仕上がりを聴いて「この2人で誰かの曲も作れるんじゃないか」とも思って。例えば、誰か違うシンガーが来ました。俺がストーリー思いつくんで考えます。それを受けてTeddyくんが曲を作ります。っていう工場みたいな(笑)。なんとなく頭に浮かんだんですよね。ベルトコンベアで変な奴が運ばれてきて、それを2人で無機質ダークな人造人間みたいに作り上げていくイメージ。そういうことが出来たら面白そうだなと思って。Teddyくんはクリエイティブに対する反射速度が凄いから。
TeddyLoid:それは、武瑠さんのデモを聴くとすぐにイメージが広がるからなんですよ。それで「こういうメロを追加したらいいんじゃないか」とか「コードもアプローチをちょっと
変えたらいいんじゃないか」と提案したら受け入れてもらえるし、すごくキャッチボールしやすいんです。ということは、相性が良いんだと思うんですけど。
武瑠:今回のアルバムで「退行的進化」と「LAIDBACK」という曲をTeddyくんと作っているんですけど、めちゃくちゃ面白かったですね。
TeddyLoid:それぞれちゃんと武瑠くんから「こういう風にしたい」という明確なイメージもサウンド感もあったし、僕はそれをさらに良くする。「僕だったらこういうアプローチできますよ、こういうアプローチもできますよ」って継ぎ足していって、それによって良い感じで仕上げられたかなと思いますね。だから逆に僕が「これはこうすべきだ」みたいな感じはなることは全くなくて、お互いに良いモノを持ち寄れば、より良いモノが出来るなと僕はいろんな人とやっていく中でも思っているので、そういう形で今回も作りました。
<武瑠×TeddyLoidでユニット結成!?>
--言葉を交わさなくとも通じる共通言語がふたりにはあるから、お互いにイメージも湧きやすいんだろうし、欲しがっているものも分かるんでしょうね。もうユニット組んだら良いんじゃないですか?
一同:(笑)
武瑠:でもそのイメージは本当に浮かびました。
TeddyLoid:単純に僕は武瑠さんのビジュアル、音楽性、ファッション、全部が好きで共感できるので、やっぱりそういう人と作るのがいちばん良いんじゃないかなと思います。共感できない人と無理やり一緒に作ってもやっぱり難しいし、時間もかかるし。でも武瑠さんの曲が届いたらパッとその場で思いつきますもん。聴いた瞬間に。
武瑠:デモ送って電話したら言ってました、「もう思い浮かんだ」って(笑)。
TeddyLoid:そこは良いですよね。ずっと悩んでやっていても良いモノは出来ないんで。
--この2人なら革新的なこともたくさん打ち出せそうですし、今回のアルバム以降もいろいろやってほしいなとイチ音楽ファンとしても思います。
武瑠:なんとかファクトリーみたいな感じで、人造人間にして返すみたいなこともやりたいですよね。この記事読んだ誰かから依頼来ないかな? この2人に「プロデュースしてください」みたいな話が来たら面白くなりそう。
Interviewer:平賀哲雄
Photo:Jumpei Yamada
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