2018/05/31
2017年9月2日 日本武道館でのラストライブをもって、10年の歴史に幕を閉じたSuGのフロントマン・武瑠が、2018年1月31日よりソロプロジェクト・sleepyheadをスタート。3月17日に東京SHIBUYA TSUTAYA O-EASTにて初ライブ【透明新月】を開催し、彼の帰りを待っていたファンの前で復活を果たした。
<Heavy Positive Rock(=“無理やり前向き”なロック)を体現したSuG>
ヴィジュアル系シーンよりデビューしたバンドでありながら、楽曲やMVから漂う異質さ、蔓延った概念にしっかり中指を立てられる気概、音楽シーンに革命を起こさんとする覚悟等、異端児的存在として注目を集めていったSuGは、当時リアルロックと称されていた骨太なライブバンドシーンやももクロやBABYMETAL、BiSといったアイドルシーンの猛者たちとも積極的に対バンを繰り広げ、プログレッシヴなコンセプチュアルアルバムをまんま再現するツアーにも挑戦。明らかに難易度の高いチャレンジを連発していたと思えば「次は根こそぎヴィジュアル系バンドという概念から外れたことをやると思うんで。……もう今までで最大の賭けをやろうとしています」と言い出し、その発言通りV系の大手プロダクションから離れ、活動休止に入って「復活できたら復活します」という前代未聞の大博打までやってのけ、実際にV系じゃないバンドとして1年後にシーンに帰還等々、まるで映画やアニメのようなストーリーを現実世界で展開してきた。
自らが求める作品や光景や世界へのアプローチにだけ全身全霊を注ぎ、そんな理想の表現を突き詰めていく戦いの果てに日本武道館で活動終了~解散。どんなに不恰好でもボロボロでも中指を立て続けるアティチュードこそがSuGだったと言えるが、ソレを最後の最後まで貫き通す形で夢の武道館に立った彼らは美しかった。「強がって! 誰も逃げずに! 無謀な! 武道館を! 挑戦したこのメンバー5人を本当に誇りに思います!」「最後までただ格好付けて終われない、ぐちゃぐちゃで、ダサくて、弱くて、それでも前を見て進んできた俺たち」とは同公演の武瑠の言葉だが、Heavy Positive Rock(=“無理やり前向き”なロック)といったコンセプトをそのバンド人生のすべてで体現してみせた。
<放心状態となった武瑠を突き動かしたもの「また逢いたいな」>
そして、この解散後に武瑠は指標を失い、放心状態となる。「もう1回、音楽やろう」とは思えない日々を送ることになった。「しばらく堕落した時期はあったんですよ。バンドが無くなるということのツラさで「何にもしたくないわ」って。気が向いたら対話として曲を作るぐらい。でも解散後にすごくしんどいことがあって「まだこんなことが起こるんだ?」とショック過ぎて。「終わったことでなんでこんなにしんどい想いをしなきゃいけないんだろう?」と思って。(でも)会っていないあいだもファンに助けてもらっていて。会ってないからすごく不思議な感じがしたんですけど、心のどこかでは「また逢いたいな」と思っていたんだろうなって。そこで気付いたんです。何かイヤなことをされたときに「イヤなことをし返す」というフェーズにもう居ちゃいけない。歌詞も書いていても「誰かを傷つけ汚しても 君の傷跡は消えないよ 加害者に生まれ変わることが誰より一番弱いんだ」という言葉が自然と出てきて。だから何かされたから何かするんじゃなくて、もっと上の段階に行きたい。そう思えるフェーズに入ってきたのかなと思いました」
追い詰められたときこそ本領発揮する特性とファンの存在。これらによって表現者としての復活を果たした彼は前に進み始める。「とりあえず答えとか「どうしたい」とか後から決めればいいから動こう」と思って、それでO-EASTを抑えたんです。物凄くツラいことがあったからこそ、とりあえず目標地点だけ決められて。それで「39+1」で40曲書こうと思っていたんですけど、気付いたら通り越して43曲書いてた(笑)」
「俺はなんか……勝手に思っているだけかもしれないけど、ダサくなっちゃいけない義務があると思っているんですよ。あの10年を背負った人として。ビジネスとしてラクな音楽のやり方とか実際に思い付くんですけど、でもこれから発表していくPVとか音楽を聴いたら絶対にそのコースじゃないことは伝わるから。ひとりになってでも、今までよりクオリティを上げていく作業。それがすごくハードなのは分かっているけど、その道を選ばない限り、絶対にミュージシャンとして復活しちゃいけないと思っているし、だから最初は進めなかったんだと思います。簡単にただライブしたりとか、軽く作った音源を出すことはサラッと出来るんですけど、でもそうじゃなくて「過去を越えなくちゃいけない」というのが自分の命題だと思っているので、そういう覚悟が出来ないなら進んじゃいけない。だからこれは今度のライブのテーマでもあるんですけど、「決意があえば人は進める」っていう。具体的なヴィジョンがなくても「ただ進もう」とか「這いつくばってでも前へ行こう」という決意さえあれば、とりあえず進める。それが今の自分に見えているすべてです。それ以外のことは何も見えてないし、やりながら見つけていこうと思っています。」
<sleepyhead、始動「「昔のほうが幸せだったな」と絶対思わせちゃいけない」>
こうして始動することになったソロプロジェクト・sleepyhead。その新たな始まりを体現するTSUTAYA O-EASTでの初ワンマンライブ【sleepyhead 0TH ANNIVERSARY LIVESHOW「透明新月」】は、この日を待ち侘びた者たちの歓喜でパンパン。そこへお届けされるオープニングナンバー、sleepyhead始まりの歌は「闇雲」だった。これはバンド解散後、前述した気持ちの変遷など武瑠のストーリーも感じさせる楽曲で、事前のインタビューでは同曲についてこんな風に語ってくれた。
「「闇雲」という言葉がハマり過ぎて! 黒夢が居なかったらアーティスト名、闇雲にしてたんじゃないかと思うぐらい(笑)。その言葉が思い付いた時点でイラストレーターに連絡して「闇雲」と書いてもらって、芸大出身のレーザーアーティストを探して「どういう照明を作るか」って家まで行ってイチから話し合って、PV制作にもイチから入り込んでロケハンもスタッフチームと一緒に行って、今まで以上にガッツリ関わった作ったので、達成感がまた今までと違う。ミックスエンジニアさんも交渉から自分でしに行きました。結構今までやったことがないこともやったし、音像的にも「無理に変わろう」という訳じゃないですけど、バンドとダンス。ダンスというか踊り狂う。それが自然に混ざった音楽になりましたね。だから他に今書いてる曲の中にはもっとバンドっぽいモノもあるし、逆に一切バンドの音が入っていない曲もある。それの中心線だったんですよね、「闇雲」は。」
同公演は、暗闇に包まれた空間にレーザーが蠢く「闇雲」の世界観が反映されており、そこでキーボード、ドラム、ベース、ダンサーとともに感情剥き出しのアクトを展開していく武瑠。アーティスティックかつクールなイメージも強い一方で、実は感情に日々振り回されっぱなしの人間くさい表現者でもある、実に彼らしいLIVESHOWだった。また、続けざまに披露されていく新曲たちのクオリティに度肝を抜かれた観客も多かったことだろう。
「やっぱりあそこまで苦しんで、アホみたいに勉強しないと、自分本来の音楽スキルでは到底辿り着かなかったクオリティの曲が揃っていて、自分でも「本当にひとりで作ったの?」と思うぐらいの曲がちゃんと出来ているので。もちろんいろんな人に助けてもらっているんですけど、もう挫けていもいいタイミングでも勉強し続けた糧がちゃんと作詞作曲能力に乗っかっている。自分でも「こんな曲作れるんだ? なんで出来るんだろう?」って驚いてます」と事前に語っていたが、その言葉に一切の嘘偽りはなかった。
そこまでの楽曲群が生み出せた背景には、ひとつの使命感がある。SuGを終わらせた以上、武瑠には「SuG時代の曲を超えていかなきゃいけない」といった想いがある。SuG時代を武瑠が覚醒するまでの糧だった、ということにしなきゃいけない。「この先は絶対そうしないといけないですよね。その言い方はファンが傷つくかもしれないけど、でも俺の正解はそれしかないし、みんなと一緒にいて、ファンが「昔のほうが幸せだったな」と絶対思わせちゃいけない。思わせるような気持ちだったらステージに立っちゃいけない。だから余裕で超えていく気でいるし、そういう気持ちでみんなもついてきてほしいなと思います。」
そんな想いを胸に創り上げた初ワンマンライブで武瑠は、「あえて「ただいま」ではなく言わせて下さい。はじめまして、sleepyheadです」と言った。
<「まだ見たことがないドキドキする世界を見せる」ということだけは約束する>
過去を乗り越えて、新しい世界へ僕らを連れていく為に始まったストーリー。そのページはこの初ワンマン以降も次々とめくられており、5月12日のバースデイイベントでは、オリジナル曲はもちろん、斉藤和義「歌うたいバラッド」などの名曲カバーでも表現力の増した歌声を響かせ、多くのファンの涙を誘った。また、その後の公開インタビューでは、6月20日にリリースされる1stフルアルバム『DRIPPING』含む今後のヴィジョンについても言及。「アルバムにはこれからだけじゃなくて、今までも連れて歩んでいく決意が詰まっている。それを聴いたら「応援したい」と思ってもらえる自信があるので、ぜひ聴いてもらって、また新しい夢を見せていきたい。ここから先はさらに誰ともかぶらないスタイルで、荒野をひたすら月明かりだけ頼りに歩いていくけど、そこでもきっと面白いことが出来ると信じているので、みんなと一緒にいろいろ企んでいきたい。良い言葉とか良い音楽とかよく分かんないですけど、「まだ見たことがないドキドキする世界を見せる」ということだけは約束するので、ついてきてほしいなと思います!」
取材&テキスト:平賀哲雄
◎ツアー【sleepyhead LIVE TOUR 2018】
DRIPPING
2018年07月06日(金)東京・下北沢 BasementBar
2018年07月21日(土)大阪・FANJ twice
2018年07月22日(日)愛知・名古屋ライブホールM.I.D
Hole
2018年07月29日(日)東京・WWW X
一般発売日:2018年06月92 (土) 10:00~
イープラス http://eplus.jp/sleepyhead/
◎リリース情報
1stフルアルバム『DRIPPING』
2018/06/20 RELEASE
完全初回限定盤 SACT-0001 13,500円(税抜)
http://shop.million-d-orchestra.com/?tid=13&mode=f3
CD収録内容:
全武瑠作詞作曲による13曲収録予定
Blu-Ray収録内容:
DISC1:【透明新月】ライブ本編映像&バックステージ
ドキュメント映像
DISC2:闇雲/酩酊/HOPELESS
ミュージックビデオ&メイキング映像
別付属アイテム:
武瑠デザイン、million dollar orchestraとのコラボ枕カバー
仕様:2BD+1CD+PILLOW CASE(別付属)
通常流通盤 SACT-0002 3,000円(税抜)
CD収録内容:
全武瑠作詞作曲による13曲収録予定
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