2012/08/08 14:51
ずっしりとギターが鳴り響く「優しい川」の雄大なイントロが、やがて宮本浩次のシャウトに変わり大地が震える。エレファントカシマシ、圧倒的な存在感とともに今年もGRASS STAGEに登場だ。
「悲しみの果て」「俺たちの明日」とヒット作を立て続けに披露しオーディエンスの心をいとも簡単にかっさらってゆく。そして「自慢の弾き語りの曲をやります。人生は素晴らしい、よく分からないけど、きっと素晴らしいはずだ。」という繊細な言葉を添えてパフォーマンスされたのは今年5月にリリースされた最新アルバム『MASTERPIECE』から「七色の虹の橋」。誰もがその場に打ち付けられたかのように宮本の弾き語りを見守る。灼熱の太陽も、風さえも宮本の声にじっと耳を澄ましているかのような特別な空気がそこには流れていた。弾き語りを終えると一転、バンドが再び重々しいサウンドを奏で始め『MASTERPIECE』のオープニングを飾る「我が祈り」に突入。アルバムの冒頭で異様なまでの緊張感を与え訴えかけてくるこの曲が、ライブではその何十倍ものインパクトを放つ瞬間を見せつけられた。そして名曲「今宵の月のように」をしっかり聴かせてメンバー紹介、疾走感溢れる「so many people」をはさみ、再び『MASTERPIECE』から攻撃力抜群の「世界伝統のマスター馬鹿」へと続く。「馬鹿」という2文字をここまで真正面から正々堂々と世に吐き出す男が他に居るだろうか。そんなことをふと思いながら、宮本の挑発的なパフォーマンスに揺さぶられ会場の温度がどんどん上がってゆくのを肌で感じる。「エレカシ、すげえ。」フェスならではともいえるつぶやきがあちこちで聞こえる。もちろん、その声が聞こえたわけではないだろうが、さらに宮本は観客を眼光鋭く睨み付け、ライブの定番「ガストロンジャー」で遂にそのキレっぷりは頂点に。ステージを縦横無尽に駆け回りフラストレーションを爆発させる。「お前も!お前も!みんな大好きなんだろう?」と煽り、連呼したのは「おとしどころ」=妥協、馴れ合い、駆け引き…世の曖昧さの象徴ともいえるこの言葉に照準を定め、「みんな大好き、おとしどころ」と皮肉たっぷりにブッタ斬り、「化けの皮を剥がしにいこうぜ」とキメる。さらにドラムの冨永に向かって「うるさい!」と叫び、マイクを投げ捨て、高緑のベースを取り上げソロを披露…永遠にこの曲は終わらないのでは、とすら思えた「ガストロンジャー」の凄まじい勢いそのままに、沸点に達したオーディエンスをさらに鼓舞する「ファイティングマン」で締めくくった。
自然と体が揺れるような心地よい音楽に浸るのも悪くない。だが、心の奥底にある魂の胸座をぐっと掴み奮い立たたせてくれる音楽がこの世の中には絶対に必要なんだ。客席から湧き上がる無数の拳と雄叫びにも似た歓声がそれを物語り、破れた白いシャツを翻しステージを去る宮本の姿は、「どうだ、これがロックだ!」と言っているかのようだった。宮本浩次が、今年もやってくれた。
8月4日(土)
@ ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2012
1.優しい川
2.悲しみの果て
3.俺たちの明日
4.七色の虹の橋
5.我が祈り
6.今宵の月のように
7.so many people
8.世界伝統のマスター馬鹿
9.ガストロンジャー
10.ファイティングマン
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