2018/05/05
ピアニストであり文筆家の青柳いづみことカウンターテナーの村松稔之による、フランスで活躍する日本人作曲家の楽曲を集めたプログラムが、5月3日から始まったクラシック音楽祭【ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018】にて披露された。
今年の【ラ・フォル・ジュルネ】のテーマは“モンド・ヌヴォー 新しい世界へ”となっており、作曲家の亡命や流浪、故郷や祖国をテーマに楽曲が設定されている。プログラムの多くが欧米の作曲家ならびに作品を扱っている中、本公演ではドビュッシーの専門家として名高い青柳いづみこがフランスと日本の架け橋となり、フランスで活躍した日本人作曲家の作品を多く取り上げたプログラムを編み上げた。
冒頭に取り上げられたのは、日本人なら誰でも耳にしている「さくらさくら」をモチーフにした楽曲「さくらの夢」。ソ連生まれでヨーロッパに学び、アメリカ在住の作曲家・アウエルバッハについて、青柳から“最後のソ連からの亡命者”との紹介や、インタビュー時のエピソードなどが語られ、“亡命”が決して遠い過去のものでは無いことを改めて思い起こさせられた。
フランスで活躍した日本人作曲家として取り上げられたのは平義久、倉知緑郎、吉田進の3人。平義久と吉田進は共に東京では池内友次郎、フランスではメシアンに師事している。平の「鐘楼」は、鐘の訥々と打たれる音、割れんばかりの音が、強く弱く心に引いては寄せてくるピアノ曲。倉知の歌曲「おお、海を」でカウンターテナー村松稔之が登場し、そのふくよかなアルトの美声を披露してくれた。また吉田進の「色は匂へど」では、歌詞の世界観を意識して楽譜を巻物状にしたものを手に登場。ピアノと歌のトリッキーな掛け合いや、歌い上げる旋律、そしてピアノの弦が残響で震えるほどの強い声まで、色彩を駆使した演奏が繰り広げられた。
ショパンの故郷を想うポーランド民謡をベースにした楽曲や、カステルヌオーヴォ=テデスコの少し変わったマドリガーレも紹介。最後はベネズエラ生まれでパリにてマスネに学んだアーンの「クロリスに」。バッハ風のピアノに、限りなく優しい旋律が、村松の声にのってあたたかく観客の心に染みこんでいく。生まれた国から離れて学び、生きる作曲家たちの紡ぎ出す“愛”が伝わるプログラムとなった。Text:yokano
◎公演概要
【ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2018 UN MONDE NOUVEAU― モンド・ヌーヴォー 新しい世界へ】
2018年5月3日(木・祝)、4日(金・祝)、5日(土・祝)
丸の内エリア(東京国際フォーラム、大手町・丸の内・有楽町)
池袋エリア(東京芸術劇場・池袋西口公園、南池袋公園)
約400公演(うち有料公演 丸の内エリア125公演、池袋エリア53公演)
チケット:一般発売中
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