2018/04/29
“K-POP”のメインストリームとは一歩離れた地点から音楽シーンを更新する、韓国音楽の新たな才能を紹介する連載企画【K STORM】。第四回となる今回は、5月に初来日公演を開催するなど、各所から熱い視線が注がれている3ピース・バンド、SE SO NEON(セソニョン)を取り上げる。
【K STORM】バンド音楽で異例の躍進を遂げたHYUKOH(ヒョゴ)とは?
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/59251
【K STORM】韓国と世界をコネクトするR&B界の若き異才、DEAN(ディーン)の視線
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/60300
【K STORM】“飾らないリアル”をラップするシンガーソングライター、Heize(ヘイズ)躍進の理由
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/61552
今回も取材と文章は、日韓音楽コミュニケーターの筧真帆氏。取材は今年4月初旬に韓国にて行われた。ファン・ソユン(ギター/ヴォーカル)、カント(ドラムス)、ムン・ペンシ(ベース)の3人からなり、“次なるHYUKOH”とも囁かれる才能溢れる新星バンドに、ぜひ注目して欲しい。(以下、文:筧 真帆)
〈破格のスケールを感じさせる3ピースバンド、SE SO NEON(セソニョン)の飛躍〉
先日、ソウルのバーへ足を運んだときのこと。女性のバーテンダーが「SE SO NEONって知ってる?」と言いながらBGMを切りかえた。筆者が5日間ほどのソウル滞在中、芸能事務所からクラブ関係者、フェスの主催者、街のカフェからも、SE SO NEONの名前と音楽を頻繁に耳にした。
デビュー前から雑誌『ヴォーグ』が注目の新人としてピックアップ、昨年6月にデビューの後、BTSのリーダーRMはSNSや動画サイトでSE SO NEONの「The Wave」が好きだと言い、DEANは自身の最新曲「Instagram」でアコースティックギターの演奏を依頼。この4月からはiKONが進行する動画アプリ番組にも出演。他にも複数の有名アーティストらがSE SO NEONの話題に触れている。
ソユン「自分の話じゃない感覚。テレビスターたちがSE SO NEONの話をするなんて。周りに“SE SO NEONが今話題だよね”と言われても、“そうなんだ、へぇ…”という他人ごとみたい」
3年前にこれと同じ現象を見たことがある。そう、HYUKOHのブレイク直前と同じだ。
「波(The Wave)」https://youtu.be/VJfGfB4-vP0
SE SO NEONのバンド名は、ソユンが書店でふと手に取ったタイポグラフィーの本から見つけたものだ。
ソユン「“SE SO NEON”の“セ”は、“New”とも“Bird”ともとれるし、“ソニョン(少年)”という単語にも、幼くキラキラしたイメージがいいなと思ってバンド名にした。後で知ったんだけど、80年代まであった『新少年』という子供雑誌のタイトルだったらしい。私たちのバンド名は新と鳥と両方の意味を持ってる」
ボーカル/ギターのソユンとドラムのカントは、同じ中高一貫のオルタナティブ・スクールに通う4つ違いの先輩後輩だ。山あいにある有名な自由教育の学校で、学園祭のときに偶然同じステージに上がる機会があった。
カント「ちゃんと会話したのが、僕が卒業してからのあるライブの打ち上げ。そのうち一緒にバンドでもできるといいね、と話しているうちに組むことになった。初代のベースも同じ学校出身だったけど少ししてから抜けたので、友人の紹介で、大学でベースを専攻しているペンシに合流してもらった」
ロック、サイケ、ブルース、フォーク等々、様々なジャンルをヴィンテージに鳴らす楽曲と詩的な歌詞、加えてソユンの中性的でスモーキーな歌声が人々を魅了する。詞曲のすべてを手掛けるソユンは、好奇心旺盛だったという幼少時代、小学4年でエレキギターに惚れこんだ。
ソユン「自分のお小づかいで買った。欲しかったギターが25万ウォン(約2万5千円)で、私が20万ウォン出して、母が5万ウォン出してくれた」
中学のころには、ビルボードチャートのトップ10に入る曲はすべて聴いていた。また車の中で親がよく掛けていたキム・グァンジン、ユ・ジェハ、イ・ムンセ、ドランクンタイガー、Windy Cityなど、90年代の韓国歌謡から2000年代の韓国ポップもよく耳にし、多彩な音楽を好むようになる。
ソユン「初めて作詞作曲をしたのは中学3年のとき。高校進学のための研究課題としてやってみたら面白くて。当時から作り溜めていた曲のほとんどが、今SE SO NEONの曲になっている」
ソユンの歌唱力とギターテクニック、ステージでの大胆な歌いっぷりは、新人とは思えない存在感を醸し出しているが、本格的に歌い始めたのはバンドを組んでからだと言う。
ソユン「声にコンプレックスがあった。学生のときも“音を出す”程度に歌っていて、SE SO NEON結成当初も、ボーカルを別に入れようか?と話をしていたほど。それがデビューしてみたら、私の歌声が良いという反応が多くて驚いた。ステージでのパフォーマンスについても特別意識していないが、学生のころは親に連れられて、演劇、ミュージカル、ライブとか、ひと月の半分はいろんな舞台を見に行っていたから、あの頃の経験が知らずと役立っているのかもしれない」
「夏羽」(Live Ver.) https://youtu.be/CosFZpLpPfc
彼らのデビューは昨年の6月と、まだ1年にも満たない。インディーズ・バンドがここまで注目を浴びるには、楽曲制作だけでない側面への努力もあった。
ソユン「同世代はストリーミングで音楽を聴くから、音楽だけ出しても成り立たない時代。私もジャケットやMVのアートワークの完成度で音楽を探すほうなので、音楽の外側のディレクションもこだわっている」
デビュー曲「長い夢」のMVは、曲に合うクリエイターをソユンがネット上で探してオファーした、ベルリンに住む日本人アニメーターの土屋萌児(つちや ひょじ)氏が手掛けている。
それではと、日本の音楽シーンへの興味を訪ねてみる。
ソユン「最近は、YouTubeで昔のシティポップをよく聴いている」
ペンシ「山下達郎さんとか。本当に音楽がすばらしい」
韓国にもこの数年でシティポップ・ブームが来ているが、彼らが好んで聴くのは70~80年代のシティポップと言う。そんな彼らが、5月下旬には日本で初来日ライブを控えている。新たな世界を求めて鳥のように羽ばたくSE SO NEONから目が離せない。
「長い夢」https://youtu.be/tzL4A8hyXc8
(文:日韓音楽コミュニケーター 筧 真帆)
◎SE SO NEON(セソニョン)バイオグラフィー
ギター・ボーカルのファン・ソユン(20)、小4からドラムを始めたカント(24)、大学でベースを専攻するムン・ペンシ(22)による3ピース・バンド。2016年に結成、同年秋にブンガブンガレコードと契約。2017年6月に1stシングル「長い夢」でデビュー、9月に2ndシングル「波」を発表、10月に初EP『夏羽』をリリース。昨年11月の初ワンマンは即完、2017年の楽曲に贈られる【第15回韓国大衆音楽賞】では「今年の新人」「最優秀ロック部門」の2冠を達成。2018年1月には日本バンドCHAIのソウル公演でオープニングを担当、5月22日に東京・青山月見ル君思フで日本初ライブ、5月26日の【Shimokitazawa SOUND CRUISING 2018】にも出演予定。
◎公演情報
【SUPER MOON】
2018年5月22日(火)東京・青山月見ル君想フ
open19:00 / start19:30
出演:SE SO NEON(from韓国)、PAELLAS、集団行動
【Shimokitazawa SOUND CRUISING 2018】
2018年5月26日(土)
DAY 開場12:00(予定)/開演13:00(予定)
NIGHT 開場23:00(予定)/開演23:00(予定)
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