2018/04/19
映画「ジャスティス・リーグ」のフラッシュ役で一気に脚光を浴びた俳優エズラ・ミラー率いるバンド、サンズ・オブ・アン・イラストリアス・ファザーが3月に米ロサンゼルスのナイトクラブ、バルドーにて行った公演のレポートが到着した。
エズラがボーカル&ドラム&キーボードを担当し、ギターのリラ・ラーソン、キーボードのジョシュ・オービンの3人からなるニューヨークのオルタナティブ・ロックバンド、サンズ・オブ・アン・イラストリアス・ファザー。エズラとリラが中学時代に知り合い結成し、結成時にいた元メンバーのソフィアが脱退した後にメンバーを探していた2人は、オーディションに現れたジョシュの一声を聞いて一瞬でメンバーに迎えたという。
2016年にアルバム『レヴォル』をリリース。エズラは、俳優路線ではインディー映画からメジャー級の作品に近年出演しているが、音楽活動に至っては一貫してインディー路線を貫いている様子で、派手な宣伝は一切皆無。地道に小さなヴェニューでショウを行っている。
そんな彼らが行ったロサンゼルス公演は、ハリウッドにあるバルドーというクラブ。“スクール・ナイト”という名で定期的に行われているアップカマーのバンドをお披露目するショウケース的なものであったのだが、エズラのネームバリューで会場外には長蛇の列が出来ており100人規模の小さい会場はすぐに満員の観客で埋め尽くされていた。
黒い衣装で揃えて登場したエズラ、リラ、ジョシュ。ドラムセットに座ったエズラは、すかさずアンプの上に置いてあるぬいぐるみに手をやりおまじないのようなポーズをして見せた。「エクストラオーディナリー・レンディション」のドラムを叩き始めると鋭い表情に変わった。彼の畳み掛けるような激しいドラミングとリラのギターとは対象的なジョシュのピアノの音色、エズラのボーカルは悲しみや喪失を全て曝け出すような歌い方で、しょっぱなから心に棘を刺されたような感情にとらわれた。
エズラの歌は、この歌詞にある恐れ、恐怖、後悔などを死の世界を身体の奥に共鳴しながら深く響き渡ってくる。オペラの舞台に立った経験のある彼の歌唱法が会場のスケール感を大きなものにしてしまうのだ。エズラはその後ドラムセットから降り、一人でアカペラで歌う。歌いながら感情をぶちまけるような表情で、まるで一人芝居のようなシアトリカルなパフォーマンスを見せつける。楽器を置いてアカペラで3人が歌うと、まるで3人芝居を観ているかのようだ。
そして曲ごとに見事に歌唱法や発声を変えるエズラ。俳優ならではと言うよりも彼の天性の才能なのだろう。ショウは終始一貫してバンド3人の意思疎通が完全に直結していて見事なケミストリーを生み出している。
オリジナルで唯一無二の世界観の3人。一矢乱れぬアンサンブルを演奏する彼らの絆も感じられた。もはや誰にも追いつけない圧倒的個性は文句なしにかっこいい。直接観ている者の胸に訴えかけてくるのだ。こんなにも心を激しく揺さぶられ、ナイフで切りつけられたような苦しい気持ちになるライブは未だ嘗て経験しただろうか?「日本は大好きな国だから、今度はバンドでプレイしに行けたらいいな」というエズラ。製作中だという自作を引っさげての来日公演に期待したい。
photo & text : ERINA UEMURA
◎セットリスト:
1.U.S. Gay
2.Extraordinary Rendition
3.Desolation
4.Conquest
5.I Would Die 4 U
6.E.G.
7.Crystal Tomes
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