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2018/03/28

【東京・春・音楽祭】現代美術と呼応するホルンの音色、VOCA賞受賞作品から着想された新作も

 【東京・春・音楽祭】が今年も東京・上野周辺の会場にてスタート、コンサートホールはもちろん数ある美術館・美術館でのコンサートも特徴の一つだ。3月23日には上野の森美術館の展示室にて【ミュージアムコンサート木川博史(ホルン)~現代美術と音楽が出会うとき】が開催された。

 真っ白い四方の壁に全て現代美術作品が展示された、天井の高い一室に入ると、奥にグランドピアノと譜面台が据えられている。普段は美術作品を見る為でしか入ることの無い空間に、楽器があることの不思議とワクワク感、そして美術と音楽を同時に体験できるのがこの【東京・春・音楽祭】の面白さの一つ。特に本ミュージアムコンサートは、ミュージアムのロビーや講堂などではなく、展示室の中で、美術作品と『共に』味わえるのが特筆すべきところだろう。

 木川博史による無伴奏ホルン曲「サイが見る夢」で始まったコンサートは、展示室とは思えない音響の良さでゆったりと夢の中へ誘われるよう始まった。B.クロル「3つの小品」のオシャレでジャジーな曲想を聞きながらふと展示室に飾られている風景画に目を向けると、楽曲と絵が相互に影響し新しい物語をうったえかけてくるようだ。J.ヴィニェリ「ホルン・ソナタop.7」の遠くから近くから陰影をもって迫る音は華やかなファンファーレを思わせる。

 後半にはこの日の為に書き下ろされた近江典彦「寄せ絵巻」が世界初演された。今開催されている【VOCA展】は、全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに40才以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方式により、全国各地から未知の優れた才能を紹介していく展覧会で、1994年から続くもの。このVOCA賞の受賞作が集められた展示室で演奏されること、複数の素材がならぶこと、そして特に今年VOCA賞を受賞した碓井ゆいの作品は、「日の丸」への問題意識を起点に多様な赤のドットと不定形の布地をつなぎ合わせるクレイジーキルトの技法を用いて作られていることに着想を受けて作られるなど、まさにこのミュージアムコンサートが「ここ」で「いま」行われることに意味を見いだす作品となっていた。

 上野の森美術館での【VOCA展】は3月30日まで展示を行っており、【東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2018-】は4月15日のファイナルコンサートまで、連日のようにコンサートを開催している。


◎公演情報
東京・春・音楽祭-東京のオペラの森2018-
【ミュージアムコンサート 木川博史(ホルン)~現代美術と音楽が出会うとき】
2018年3月23日(金)
上野の森美術館 展示室
OPEN 18:30 START 19:00

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