2018/03/23 18:00
米フロリダ州プランテーション出身、1月で20歳のバースデーを迎えたばかりの新星ラッパー=エクスエクスエクステンタシオン(XXXTentacion)。その経歴は凄まじく、幼少期に傷害事件で更正プログラムを受け、母親の経済難で祖母の家に預けられて育ち、学生時代は校内で暴れまわるなど、典型的な“荒れた思春期”を送ってきたらしい。デビュー以降、2016年にも強盗及び暴行容疑で逮捕、同年10月には不法監禁と証人の買収、さらに女性への暴行容疑で再逮捕されている。
音楽のキャリアについては、教会合唱団に参加したり、ヒップホップ以外にも、ハードロックやメタル等の音楽にも親しみ、ピアノやギターも独学で練習していたという。その独特のスタイルから、“パンク・ラッパー”と皮肉を込めた(?)ネーミングをつけられたりもしたが、それについては「様々なジャンルのアーティストにインスパイアされている」と自負している。影響を受けたアーティストには、カート・コバーンやザ・フレイ、ゴリラズ、それからコールドプレイの名前も挙げている。
強烈なキャラクターとその才能を買われ、 多額の契約金でキャピトル ミュージックの傘下であるキャロライン・レコードと契約。「ドレイクにパクられた!」とディスったことが話題となり、2016年末にリリースしたデビュー曲「Look At Me!」が、全米ソング・チャート(HOT100)で34位、ラップ・チャート12位のヒットを記録し、表舞台に出現した。
本作 『?』は、 全米アルバム・チャート(Billboard 200)で最高2位を獲得したデビュー作『17』に続く、通算2作目のスタジオ・アルバム。本作からは、最新の全米ソング・チャート(2018年3月24日付 HOT100)で17位まで上昇している先行シングル「Sad!」がヒット。あれだけ大騒ぎしたにもかかわらず、同曲ではドレイクそっくりに歌っているという、何とも皮肉な話……。 気だるく歌う「Moonlight」や、 マイナー調のメロウ 「Alone, Part 3」も、意識した感否めず。本作リリース前にも、ドレイクに噛みついた エクスエクスエクステンタシオンだが、おそらくアルバムのプロモーションも兼ねての戦略だろう。
本作の目玉は、その「Sad!」 や 「Smash!」のような、いわゆるオルタナティブR&B的な曲だけではない。特にインパクトが強いのは「Floor 555」や、全盛期のキッド・ロックをコピーしたような「Schizophrenia」といった、 愛聴していたというハードロックの影響をモロに受けたナンバー。 オルタナティブ・ロックに近い 「Numb」や、 雄たけびを上げる 「Pain = Bestfriend」も、とてもヒップホップ・アーティストが歌っているとは思えない面白さがある。
また、 シングル・ヒットが期待できそうな ダンスホール調の 「I Don't Even Speak Spanish LOL」や、 レゲエをベースにした 「Going Down!」、 90年代ヒップホップを再現した 「Infinity (888)」などのアップから、 アコースティック・ギターの演奏をバックに、言葉を並べるようにラップする 「The Remedy for a Broken Heart (Why Am I So in Love)」~ もはや癒し系(?)の弾き語り「Changes」や 「Before I Close My Eyes」などのメロウも充実。銃乱射事件の被害者へ捧げた 「Hope」や 「$$$」 のような 今っぽいトラップもあるが、 エクスエクスエクステンタシオン“らしさ”は出ていない。
ロックやR&B、フォーク、バラード曲など様々なジャンルが入り混じり、 孤独、不安、憂鬱……等の感傷的なフレーズが飛び交う本作 『?』 は、音楽評論家やコアなラップ・ファンが絶賛するのも納得できる、2018年を代表する傑作といえるだろう。ブリング182の トラヴィス・バーカーや、 PnB・ロック、ジョーイ・バッドアス等ゲストのチョイスもさすが。
本作の発売日には強豪のリリースも無いため、前作の最高位を上回る、自身初のNo.1獲得も期待できる…かもしれない。
Text: 本家 一成
◎リリース情報
『?』
XXXTentacion
2018/3/16 RELEASE
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