2018/03/14
トラックメイカー/ラッパー、ILLA J(イラ・J)の来日公演が3月9日、東京・表参道WALL&WALLにて開催された。
ヒップホップ史上最も偉大なプロデューサーの一人である故J Dillaの実弟としても知られるILLA J。J Dillaの未発表ビートを全面的に使ったアルバム『Yancey Boys』にてラッパーとしてデビューを飾ったIlla Jは、2017年7月にリリースした最新アルバム『HOME』でシンガーとしての才能も開花させている。今回その『HOME』を携えた待望の来日公演は、ヒップホップの枠を超えクロスオーバーした躍進を見せる彼のスキルが余すことなく発揮されたライブだった。
この日は、ILLA Jを迎えるべく日本の現行音楽シーンを率いるアーティストたちがイベントを彩った。デイタイムでの開催にもかかわらずオープンから会場前には行列ができており、Harada KosukeのDJタイムではトークボックスのMatzuda HiromuとShunské Gが登場し、序盤からフロアが心地良い熱気に包まれた。
ライブアクトのトップバッターは紅一点のシンガー・MALIYA。「Hard liquor」の1バース目をTENDREのベースのみで歌い上げるという攻めの1曲目からスタートすると、一瞬でオーディエンスの耳を奪いバラード曲を繋いでいく。後半にかけてバンドの黒さ溢れる演奏で徐々にビート感をアップさせると、「Dance to my song」では日本人離れのフェイクで会場を魅了。彼女のステージで耳だけでなく心を奪われてしまった観客も多かったことだろう。
キラーチューンの連発でフロアを踊らせるCHILY-TのDJに続いてステージに登場したのはRyohu。アーバンなビートにメロウなラップを乗せ、自身が音そのものを楽しむライブ感を体現しつつ、「All in One」のコール&レスポンスで会場の空気を掴みラストは「誰?」を披露。ラフに見せながらもしっかりとオーディエンスを巻き込む安定感のあるステージングを見せてくれた。
そして、後半に登場したのはBudamunk×ISSUGI。重いビートと骨太なグルーヴが入り混じるBudamunkのビートにISSUGIがタイトにラップを入れ込み、卓越したスキルで貫禄を見せつけていく。「Navy Nubak」から「Heat Haze」に繋ぎ、ISSUGIに呼び込まれたMr.PUGが登場したところで会場のボルテージは一気にヒートアップ。ドープ、という言葉が似合う彼らのステージは、淡々としていながらもその熱さを確かに感じ取れるものだった。
そして、いよいよステージにILLA Jが登場すると、いきなりのコール&レスポンスで観客のテンションを上げる。最新アルバム『HOME』の楽曲では、ソウルフルなファルセットヴォイスを聴かせ“J Dillaの弟”というこれまでのイメージをいい意味で払拭していく新たな一面が垣間見え、さらにはカヴァー曲も披露しネオソウルシンガーとしての魅力を感じさせる。そうして十分に自身の現在地を提示した後は、これまでのルーツともいえる楽曲群へなだれ込む。それは、Slum Village、あるいはアルバム『Yancey Boys』の楽曲でもあるわけだが、しきりに「ILLA J!」「J Dilla!」とコールする彼から伝わってくる兄への大きな愛情にオーディエンスもめいっぱい応えていく。フェイバリットアーティストの名を挙げ、さらにはJ Dillaの名曲も演奏しながら自分の辿ってきたヒップホップの音楽へ最大級の敬意を表し、その上で『HOME』を作り上げたILLA Jというスタイルがある―。ラップも歌もきっちり聴かせて「これが自分だ」と音楽で表現する最高にクールなステージを体感させてくれた。
なお、アルバム『HOME』のリリースツアーとして開催中の【HOME ASIA TOUR 2018】は東京、仙台、大阪でのライブを終え、残すところ日本国内では京都、名古屋、福岡、長崎、浜松の5公演となっており、明日3月15日には京都・CLUB METROにて公演が行われる。是非とも、ライブへ足を運んでほしい。
photo:Yuki Aizawa
text:神人未稀
◎イベント情報
【CARHARTT WIP presents ILLA J “Home” ASIA TOUR 2018 IN TOKYO】
<出演>
ILLA J
ISSUGI
Budamunk
Ryohu
MALIYA
Matzuda Hiromu
MOSSGREEN
Harada Kosuke
CHILY-T
A-KILLER
Photography-Aizawa Yuki
Supported by TEN’S TOKYO
◎ツアー情報
【CARHARTT WIP presents ILLA J “Home” ASIA TOUR 2018】
3/09・TOKYO @WALL & WALL
3/10・SENDAI @SHAFT
3/11・OSAKA @PINE BROOKLYN
3/15・KYOTO @METRO
3/16・NAGOYA @LOUNGE VIO
3/17・FUKUOKA @GRAF
3/18・NAGASAKI @BETA
3/20・HAMAMATSU @PLANET CAFE
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