2018/03/14
米ジョージア州アトランタ出身、カラフルなビジュアルに目を奪われる、インパクト抜群のラッパー=リル・ヨッティ。“リル”といっても身長は183cmもあるようで、20歳には到底見えない(?)貫禄など色んな意味でツッコミ処満載だが、昨今のヒップホップ・シーンを代表するアーティストの1人であることは間違いない。
その名を知らしめたのは、2016年夏に全米最高5位をマークした、D.R.A.M.(ドラム)の「ブロッコリー」。この曲と酷似したカイルの「アイスパイ」(最高位4位)も大ヒットし、以降カルヴィン・ハリスやポスト・マローン等、人気アーティストの楽曲にフィーチャーされ、2017年5月に発表したデビュー・アルバム『ティーンエイジ・エモーションズ』は全米5位(R&B4位、ラップ・チャート3位)のヒットを記録した。
本作『リル・ボート2』は、そのデビュー作からわずか10か月でリリースされた2作目のミックステープ。同名のミックステープ『リル・ボート』が丁度1年前の2017年3月9日に発売されているので、その続編ということになる。前作にも参加したミーゴスのクエヴォやオフセットはじめ、リル・ポンプ、2チェインズ、PnBロック、アグリー・ゴッド、ティー・グリズリー等がフィーチャリング・ゲストとして参加。プロデューサーは、サウスサイドや30・Roc、デジタル・ナズ、ピエール・ボーン等おなじみの面々がクレジットされている。
評価とレビューを集積するウェブサイト「メタクリティック」では52点と低く、“ラップシーンの格下げ”など辛口で批評されているが、好き嫌いは別として、個人的には言うほど駄作か?という印象をもつ。例えば、“ブーッ!”と叫び続ける「Boom」、バックサウンドを使わず、ラップというか語り調で展開する「Oops」、コード進行やリズムを無視した「Count Me In」、こもった声でボソボソと不気味にラップする「Whole Lotta Guap」、半音ずつズレていくミステリアスな「Mickey」などなど……超個性的なナンバーは、リル・ヨッティにしかできない業。緊張感のある「Pop Out」や、爆発音鳴り響く「NBA YoungBoat」といった危なっかしさも、彼らしい在り方。
一方、不気味な不協和音が鳴り響く「Das Cap」や、独特のビートに乗せてラップする「Get Money Bros」、ミーゴスまんまの「Flex」や「Talk to Me Nice」などお得意のトラップから、ラップと歌を混合させた「Self-Made」や「She Ready」、ファルセットでで歌う「Love Me Forever」、ラストを飾るに相応しい「66」など、ドレイク~ポスト・マローン直結のメロウは若干退屈。リル・ポンプ、オフセットの3が入れ替わる「Baby Daddy」も悪くないんだけど……「最近、こんな曲売れてたよね」と言いたくなる、二番煎じ感は否めない。
総合的にみれば悪い作品ではないが、どうせならもっと個性を活かして、ヤラかしちゃっても良かったのにな、というのが残念なところ。まだ20歳なんだしね。多様性の受け入れを意味した、様々な人種に囲まれて写る前作のアートとは対照的に、 赤味がかった夕日の海で黄昏る、面白味に欠けるジャケットも、「もう落ち着いちゃったの?」と突っ込みたくなる。
◎リリース情報
『リル・ボート2』
リル・ヨッティ
2018/3/9 RELEASE
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