2018/03/13 18:00
ジャパニーズ・ミュージック・シーンのレジェンド、小坂忠のステージを2018年3月5日Billboard Live TOKYOで堪能した。感動、大拍手、ソウルフル&ハートフル。昨年の大病はとても心配していたけど、小坂は元気になって僕らファンの前に帰って来た。魂を込めて見事に歌い上げるソウル・シンガー、小坂忠。満員の観客席を魅了した素晴らしいLive!ライド・オン!!
小坂忠の名前を知ったのは1969年。コロムビアレコードの高久光雄(この日のライヴにも駆けつけていた)から「たまには日本のロックも聴け!」とあるバンドのサンプル盤を渡された。これがエイプリル・フールの『APRYIL FOOL』、洋楽狂だった僕はその出来栄えに驚かされた。後年メンバーの柳田ヒロとは朋友となり、昨年MCした某イベントで一緒になったばかり。気がつくと小坂はご近所さんだ。Akitsu Gospel Churchから数分のところがマイ・ハウス。そんなこともあり2月28日お昼頃、コンビニ前で今年2度目となる偶然のヤアヤアヤア(笑)
Mike:「来週のLive行きますヨ!」
Chu:「ぜひぜひ…。昨日リハしたんだ、とっても良い感じだったヨ。アルバム『ほうろう』、順に全曲演るんだ」
Mike:「それは凄い!1975年の名作!!楽しみだなぁ」
勿論それから『ほうろう』はLive前までヘヴィー・ローテーション。何度も何度も繰り返し楽しんだ。
75年リリースのこの作品集『ほうろう』は小坂のソウルフルなテイストが全面に噴出しているR&B名作だ。これを一気にLive で紹介してくれる、泣けてくる。ブライアン・ウィルソンが『ペット・サウンズ』をフィーチャーしていたコンサートを思い出す…。『ほうろう』は(勿論BLT Liveに姿を見せた)細野晴臣が小坂とともにプロデュース。バック陣は細野ほか鈴木茂、松任谷正隆、矢野顕子(鈴木晶子)、林立夫によるティン・パン・アレー。70年代当時のシーンについては本作CDのライナーノーツに詳しく記されている(by 北中正和)。その他に山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子がジョインしストリングス&ホーン・アレンジが矢野誠だ。日本音楽史に燦然と輝く作品集。そしてLiveのMCで小坂が語っていたように彼にとっても最も大切にしているのがこのアルバムなのだ。
そしてこの日の『ほうろう』Liveで小坂をしっかりとサポートするのが40数年前のレコーディング・メンバーだった鈴木茂(GTR)をはじめ凄腕ミュージシャンが勢揃いした。小原礼(BS)、Dr.kyOn(KBD)、屋敷豪太(DS)、斎藤有太(KBD)。そしてバッキング・ヴォーカルがAisa。
場内が暗転、スライ&ファミリー・ストーンの「エヴリデイ・ピープル」にのってまず鈴木茂はじめサポート・メンバーたちがステージに上がり、最後に小坂が颯爽とステージに登場。さぁ『ほうろう』がスタート。茂のファンキーなギターに導かれミディアム・アップなアルバム・タイトル・ソング。♪ほうろう♪のフレーズが逆空耳アワーじゃないけど、当時♪Hold On♪と聴こえたのを思い出す。いつ聴いてもこのナンバーはR&Bなのだ。♪好きなリズム・アンド・ブルース♪!
“歌えるのが一番の歓び”と語る小坂がしっとりと歌い上げるのが続いての「機関車」。71年のアルバム『ありがとう』にまず収録されたナンバー。作詞作曲は小坂。ダウン・トゥ・アースでブルージーなソウル・バラード。茂はじめ礼ら敏腕ミュージシャンが小坂を引き立てていく。
3曲目は「ボン・ボヤージ波止場」。しっとり感溢れる小坂のヴォーカルをじっくり味わう。ミディアム・テンポのリズミックな展開、豪太のシェーカーがこの場の雰囲気を盛り上げていく。
4曲目は「氷雨月のスケッチ」。小坂と作者の茂が曲紹介してくれる。「はっぴいえんどでアメリカにレコーディングに行った時に作った」(茂)。その時小坂に「最近よく喋るようになったね!」と突っ込まれて場内は爆笑…。余談になるけど数年前に映画『黄金のメロディ マッスル・ショールズ』公開時のトーク・イベントに茂&PANTAに共演してもらったけど、茂はいろいろ語ってくれた、この時MCとして大助かりだった。その茂のタイトなギターで始まる「氷雨月の~」、松本隆をふつふつと感じさせると歌詞だ。小坂がドラマティックに歌い、茂のファンキーなギターがフィーチャーされていく。はっぴいえんど『HAPPY END』収録。
LP『ほうろう』A面最後のナンバーが「夕方ラブ」(You Gotta Love?!)。作曲が小坂で作詞が夫人の高叡華。アップビートなファンキー・チューンだ。オーディアンスも手拍子で盛り上がる。そこでメンバー紹介、ソウル・レビュー・フィーリング。ブレッド&バター岩沢幸矢の娘、Aisaのヴォーカルに思わず注目させられた。
6曲目は「しらけちまうぜ」。MCで小坂も紹介していたようにアルバムからのシングル・カット・ナンバー(B面は「ボン・ボヤージ波止場」)。ヴァニラ・ファッジ調で入るミディアム・アップのキャッチーなサウンド展開。小坂のヴォーカルがダンサブル&ファンキーなムードをエクスプロージョンさせていく。
そんな小坂のヴォーカルにより聴き惚れてしまうラヴ・ソングが「流星都市」。ミラーボールもジョインしての煌びやかな雰囲気。♪ハモンドの調べ♪で勿論キーボードがフィーチャーされる。
「つるべ糸」は矢野顕子の作品で、アレンジには矢野誠もクレジットされている。矢野顕子らしさのしっとり感が前面に出ている作品だ。
そしてラスト・チューンが「ふうらい坊」。細野の作詞作曲。『HAPPY END』に収録(風来坊)。ミディアム調のファンクなテイストに酔いしれる。実にパワフルなナンバーでもあるのだ。茂のギターも全開。そして全曲に言えることだけど、礼のベース、豪太のドラム、そして還暦Dr.kyOn & 斎藤のキーボードが小坂のヴォーカルをサポートし最高の演奏で僕らを酔わせてくれた。75年、40数年も前にこんなにも素晴らしいアルバム『ほうろう』が発表されていたことに改めて驚かされた。これぞジャパニーズ・ソウルの逸品である。
勿論この日のLiveはここで終わらない、スタンディング・オヴェーションでアンコール!まずは「ユーアー・ソー・ビューティフル」。ビリー・プレストン(僕が最後に会ったのは渋谷だった…)の作品、ジョー・コッカーのヒットで知られる。ビーチ・ボーイズのデニス・ウィルソンが原作者で彼のヴァージョンも機会があったらチェックして欲しい。そんなスタンダードを小坂は最初KBDオンリーでソウルフルに、そしてドラマティックに歌い上げていく。そして中盤からはGTR、BS、DSも加わりスケールアップした展開の中で僕らを魅了していく。小坂の熱唱に思わず叫ぶ、ビューティフル!
アンコール2曲目は「上を向いて歩こう」。77年アルバム『モーニング』に細野アレンジ・ヴァージョンで収録された。オリジナルは坂本九。そしてファイナルは小坂がアコギを手にしての「いつまでも若く」(Forever Young)。ボブ・ディラン74年アルバム『プラネット・ウェイヴズ』(ザ・バンドとの競演作だ)に収録された名作。小坂自身ナビゲーターを務めたラジオ番組の主題歌用にレコーディングしたことがある。Liveのファイナルに相応しいドラマティックな作品だった。ディランといえば『APRYL FOOL』収録の「プレイジング・マイ・タイム」を思い出したり…。
元気になってシーンに帰還したレジェンド、小坂忠の素晴らしいステージ。感動の連続だった。古希を迎え、これからもますます元気にソウルフル&ハートフルな歌声を聴かせてほしい。
改めてアルバム『ほうろう』を楽しみながら『まだ夢の続き/小坂 忠・著』(河出書房新社)を再読している今日この頃だ…。
(文中敬称略)
Text: Mike Koshitani
Photo: 三浦麻旅子
◎公演情報
【小坂忠 「HORO 2018」Special Live
featuring 鈴木茂, 小原礼, Dr.kyOn, 屋敷豪太&Aisa】
2018年3月5日(月)ビルボードライブ東京 ※終了
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