2018/02/21
韓国音楽の新鋭を紹介する連載企画【K STORM】。前段となる認識はHYUKOH(ヒョゴ)を取り上げた第一回にも書いた通り、“K-POP”のメインストリームとは一歩離れた地点から、音楽シーンを更新する新たな才能を取り上げる。
【K STORM】バンド音楽で異例の躍進を遂げたHYUKOH(ヒョゴ)とは?
http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/59251
今回取り上げるR&Bシンガー、DEAN(ディーン)は、つい最近の2017年末にリリースしたシングル「instagram」が、韓国の主要音楽チャートで1位を獲得。また、2016年に発表したアルバムは、ビルボードUSのワールドチャートで3位を獲得する快挙を成し遂げた。パフォーマンスが注目を浴びがちなK-POPのメインストリームで、露出を控えてもチャートを制覇し続ける逸材。韓国次世代のトップスター候補の一人だ。
そんな絶好調のDEANに今回も取材を行っているのは、日韓音楽コミュニケーターの筧真帆氏。本人への最新のインタビューと筧氏の解説で、この新星の過去と未来に迫ってみたい。(以下、文:筧 真帆。発言は全て筆者が2017年から2018年にかけて行った取材より。)
〈韓国と世界をコネクトするR&B界の若き異才、DEAN(ディーン)の視線〉
“明日は来るだろうに/スマートフォンを離せない/眠気は来ないようだ/またインスタグラムをする
イケてる人は山ほどいて/誰かはどこかへ遊びに行ったって/いいね!は押さなかった/
僕だけがこうしているようで/あのインスタグラムの中では”
2017年の年の瀬にリリースされた、DEANの「Instagram」。メロウなR&Bに乗せ、SNS中毒者たちの言葉を代弁したような歌詞は瞬く間に共感を呼び、翌日には韓国の7つの主要配信チャートの首位を独占。春を目前にした現在もチャートの上位圏に留まっている。
「この曲は“相対的はく奪感”(他者と比較することで自分から何かを奪われるような感覚)を歌詞にした。誰もが感じていながら誰も語らなかったテーマだと思う。僕たちが自覚していない間にも、思った以上のことから影響を受けている。技術発展による裏に盛り込まれた状況について、考えてみるきっかけを作りたいと思った」
現在韓国でトップクラスのシンガーにしてプロデューサーのDEAN(現在25歳)は、時にクレバーに、時にユニークな言葉で音楽の話をする。
「Instagram」https://youtu.be/wKyMIrBClYw
音楽のスタートは16歳のとき、偶然聴いたヒップホップに興味を持ったことがきっかけだ。聴いていたのはニュージャック・スウィングや、ジェイZ、カニエ・ウェスト。
「歌モノよりラップのほうが、伝えたいメッセージをたくさん語れることに惹かれた。まず自分が話したいことを書いてみて、それをラップ調で喋るように歌い、ひとり宅録を重ねていた」
こうして書き溜めていた楽曲が、アメリカに拠点を持つ韓国人の音楽プロデューサーの目に留まり、18歳から作曲家としてスタート。EXOやVIXXなどK-POPのトップシーンで活躍するグループへの楽曲提供も手掛けた。
「いつかはシンガーになるという夢を持って曲を書いていたが、まずは出来ることから始めようと作曲家でスタートした。それに海外では作曲家からスタートするシンガーも多いし、僕もこの方法で夢に近づこうと思ったんだ」
2015年に入り、日系アメリカ人シンガーのミラ・Jをゲストに迎えた「Here & Now」をサウンド・クラウドで発表。夏にはエリック・ベリンジャーを迎えた「I’m Not Sorry」で、シンガーとしてアメリカデビューを果たした。
「アメリカで曲作りもしたので多くの経験値になった。普通、他人の作曲作業を見ることなんて難しいのに、多くの実力ミュージシャンたちと曲作りをできたことが、貴重な学ぶ場となった」
作曲家でスタートし、シンガーとしてはアメリカから逆輸入、なめらかな艶をもつ歌声も申し分ない。実際はソフトなルックスのイケメンなのだが、音楽家としての存在を前面に押し出すため、意図的にビジュアルは隠し気味にデビューしたものだから、話題となるのは必然だった。
「I'm Not Sorry」ft.Eric Bellinger https://youtu.be/wzvRxguTPa4
その後、韓国内でもDok2、ZICO、Crush、Heizeなど人気ヒップホッパーやR&Bアーティストたちと積極的にコラボレーションを重ねることで、彼の名前は音楽シーンに知れ渡り、名のある音楽フェスから続々とオファーが入った。引き続きソングライターとしても、少女時代のテヨン、EXO、iCON、WINNER、Block B、イ・ハイ等々に曲を提供。アイドルたちが活躍するテレビの歌番組とは別に、配信やストリーミングのチャートでDEANの名を見ない日は無いほどに活躍を見せる。
「共作やプロデュース業は、自分でも知らなかった僕の音楽的な別の面を知れることが面白い。誰かの曲を作るとき、そのアーティストのことを考えながら愛情をこめて作るから、歌が似合う人のもとへ行くという感覚だ」
また、2016年にリリースしたEP『130 Mood: TRBL』は、ビルボードUSのワールドチャートで3位を獲得。2017年には、アメリカのジ・インターネットのボーカルSydを迎えた「love」を発表した。さらにカナダ、アメリカ、ヨーロッパの9地域を廻ったライブは大成功を収め、国境をボーダレスに往来し活躍の場を広げている。
「love」ft.Syd https://youtu.be/JEIcjRj7S9g
自信の現在の状況について「こうなるようにイメージは描いていた」というDEAN。「僕の歌を聴く人と心から会話ができる音楽を作り続けて、常に“!”が浮かぶような存在でありたい」と熱い想いを語る。加えて今年のグラミー賞で、ブルーノ・マーズを始めとするブラック系ミュージシャンたちが躍進したことを振り返り、こんな夢を語った。
「根がヒップホップやR&Bの僕としては、今年のグラミーで多くのヒップホッパーたちがノミネートされたことは喜ばしい。僕もいつか僕にしかできない音楽で、グラミーにノミネートされたいという夢がある」
DEANは韓国から世界を見据えている。
(文:日韓音楽コミュニケーター 筧 真帆)
◎DEANバイオグラフィー
1992年ソウル生まれ。本名クォン・ヒョク。ステージネームの[DEAN](ディーン)は、反抗心の象徴であるジェームス・ディーンに由来し、ソングライティング名義の[Deanfluenza(ディーンフルエンザ)]は、インフルエンザのように強い感染力を持つ意味を込めた。2016年に7曲入りEP盤『130 Mood: TRBL』をリリース、その他8曲を配信で発表し、2018年中にアルバムをリリース予定。日本へは2016年秋、アメリカに拠点を置く日本人DJのstarRoのゲストとして、渋谷のVisionでステージに立った。なおDEANを筆頭に、Crush、DJ Millic、OFFONOFF、Miso等で【CLUB ESKIMO(クラブ・エスキモー)】というクルーを組んでいる。
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